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佐伯悠馬の恋愛事情  作者: 雪森蓮


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第八部 第九話 ~普通の公園~

エドワードは拓海には勝てません。

次の休日。

拓海は言った。


「今日は普通だ」


ノアが疑いの目を向ける。


「本当に?」


「本当にだ」


「夜じゃない?」


「昼だ」


「酒は?」


「ない」


「クラブは?」


「ない」


「ナンパは?」


「……多分ない」


「多分って何ですか」


ーーーーーーーーーーー


悠馬は静かに頷いた。


「公園なら安全ですね」


ノアが即答する。


「兄さん、それが一番危ないフラグです」


ーーーーーーーーーーー


ロンドンの公園は広かった。


芝生。

犬。

子どもの笑い声。


日差し。


昨日の夜とは別世界だ。


拓海はベンチに座り、腕を伸ばした。


「ほら」


「普通だろ」


ノアが小声で言う。


「普通って…こんなに静かなんですね…」


悠馬は淡々と水を飲む。


胃が平和だ。


少しだけ、風が吹いた。


何も起きない。


そう思った瞬間。




「拓海」


声。

低い。

灰色より重い。


ノアが硬直した。


(来た)


(なぜ)


(公園に)


悠馬が顔を上げる。


そこに立っていたのは、エドワードだった。


コート。

手袋。

存在が業務。


ノアが反射で立ち上がる。


「……父上」


拓海が座ったまま言う。


「なんだお前」


ノアの胃が鳴った。


(拓海父さん、それはやめて)


ーーーーーーーーーーー


悠馬は静かに口を開く。


「……叔父上」


エドワードは悠馬には頷かず、

拓海を見る。


「偶然だ」


拓海が鼻で笑う。


「嘘つけ」


「嘘ではない」


「嘘だろ」


エドワードは淡々と返す。


「嘘ではない」

 拓海が即答する。


「じゃあ帰れ」


「帰らない」


ノアが胃薬を探した。


ーーーーーーーーーーーー


エドワードはベンチの前で止まる。


拓海が顎で示す。


「座れよ」


一拍。


エドワードが座った。


ノアが固まった。


(父上が座った)


(言われて座った)


(怖い)


悠馬も少しだけ目を瞬いた。


叔父上は基本、命令する側だ。

命令される側ではない。


拓海が言う。


「で?」


「何の用だ」


エドワードは淡々と返す。


「用はない」


「嘘つけ」


「嘘ではない」


「じゃあ帰れ」


「帰らない」


同じ問答。

普通ではない。



エドワードは悠馬に視線を移す。


「……落ち着いたようだな」


ノアが即答する。


「落ち着いてません!!!」


拓海が笑う。


「ノアは落ち着け」


「無理です!!」


悠馬は淡々と答える。


「普通の昼です」


エドワードの眉がわずかに動く。


「ほう」


拓海が即座に返す。


「ほうじゃねえ」


エドワードは拓海を見る。


「お前が連れ出したのか」


「俺が連れ出した」


「珍しい」


「うるせえ」


悠馬はふと気づく。

叔父上の声はいつも通りだ。

冷静で、鋭くて、支配的で。


だけど。


拓海の前では少しだけ違う。

言葉が短い。


反論されても切らない。

受け流している。


(……叔父上は拓海父さんに弱い)


悠馬は思った。

昔から。


多分。


拓海が言う。


「悠馬に普通を教えてる」


エドワードが静かに返す。


「遅い」


拓海が笑った。


「今更だ」


ノアが呻く。


「今更を積み重ねないでください…」


エドワードは淡々と言った。


「だが」


「今更でも」


「試す時間は必要だ」


拓海が一瞬だけ黙る。

悠馬も黙る。


ノアだけが震える。


(父上が肯定した)


(怖い)


拓海が小さく言う。


「……お前が言うな」


エドワードは即答しない。


その沈黙が答えだった。


公園の風は穏やかだった。


犬が走る。

子どもが笑う。


普通の昼。


しかし。


普通の昼に、

普通ではない大人が二人いる。


そして胃薬が一人いる。


悠馬は思った。


帰る場所はまだ分からない。


でも。


こうして“止まる時間”の中で、

少しずつ問いが形になる気がした。


ノアが小さく呟く。


「……お願いだから今日は公園で終わってください」


拓海が笑う。


「終わるわけねえだろ」


ノアが叫んだ。


「終われ!!!!」





感想をいただけると嬉しいです。

※一応完結分までは完了してますので都度載せる予定です。

よろしければ見てください。


AIアシスト作品です。


僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。

気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。

これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。

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