第八部 第八話 ~普通の話~
もうちょっとで終わります!(`・ω・´)
帰った。
夜の騒音が遠のいて、
悠馬のフラットは静かだった。
水の音だけがする。
ノアがキッチンで勝手に胃薬を探している。
拓海はソファに沈み、靴を脱ぎ散らかした。
いつもの大人だ。
「……普通の夜って」
ノアが低い声で言った。
「もっと静かに終わるものだと思います」
拓海が笑った。
「お前が勝手に普通を決めるな」
「拓海父さんが普通を壊すんです」
悠馬は淡々と水を飲んだ。
胃が落ち着く。
少し間が空く。
拓海がふと、悠馬を見る。
「で」
「どうだった」
悠馬は一拍置いた。
「……よく分かりませんでした」
「だろうな」
拓海は即答した。
「俺も分かってねえ」
ノアが顔を上げる。
「分かってないんですか」
「分かってたら連れて行かねえよ」
「最悪ですね」
「褒めるな」
「褒めてません」
笑いが一瞬だけ落ちる。
部屋が静かになる。
悠馬は、テーブルの上に手を置いた。
「……僕は」
言葉が遅い。
「普通を、したことがないんだと思います」
ノアが止まる。
拓海も止まる。
「仕事は普通でした」
「業務は分かります」
「必要なら出来ます」
「でも」
悠馬は少しだけ眉を寄せた。
「必要じゃない時間が、分からない」
拓海が小さく息を吐いた。
「……そうか」
ノアが小声で言う。
「兄さんはずっと必要なことだけで生きてます」
「黙れ」
「はい」
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拓海は腕を組んだまま、しばらく黙っていた。
そして、ぽつりと零す。
「……俺がさ」
悠馬が視線を向ける。
拓海は珍しく目を逸らした。
「してやれなかったんだろうな」
ノアが固まった。
悠馬も固まった。
拓海がそんなことを言うのは、異常事態だ。
「父親っぽいこと」
拓海は言い直す。
「普通のやつ」
「……教えるとか」
「連れて行くとか」
「お前がこうなる前に」
悠馬は静かに言った。
「僕はこうなる前から、こうでした」
拓海が即座に返す。
「そういうとこだぞ」
ノアが頷く。
(兄さんはそういうとこだ)
拓海は頭を掻いた。
「エドが悪いのは分かってる」
「でも」
「俺も放っといた」
「忙しいとか言って」
「勝手に強いと思って」
悠馬は少しだけ目を伏せた。
強い。
便利。
有能。
そういう言葉で固定されていくもの。
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ノアが小さく言った。
「兄さんは、強いんじゃなくて…」
「止まれなかっただけです」
悠馬は否定しなかった。
拓海が立ち上がる。
「だからまあ」
「今更だけど」
「普通をやる」
ノアが嫌な顔をする。
「またろくでもない普通ですか」
「黙れ」
拓海は悠馬を見る。
「お前が今まで出来なかったことを」
「試す時間くらい、あっていい」
一拍。
「走らされてきたんだろ」
悠馬は、少しだけ息を吐いた。
「……欲しいです」
拓海が笑った。
「素直かよ」
ノアが呻く。
「兄さんが素直だと事件です」
静かな部屋。
胃薬の匂い。
水の音。
普通ではないが、
少しだけ“生活”に近い夜。
悠馬は思った。
答えはまだ出ない。
帰る場所も、居場所も。
でも。
今まで出来なかったことを試す時間は、
きっと無駄ではない。
拓海が言う。
「次は昼だ」
ノアが即答する。
「昼にしてください!!!」
悠馬は小さく頷いた。
「昼がいいです」
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




