第八部 第四話 ~普通のショッピング~
楽しそうでいいじゃんと思ったけどおやじとおっさんに片足突っ込んでるのと青年なんだよな。。。
問題は、店に入った瞬間から起きていた。
「……で」
悠馬はラックを前に立ち尽くしていた。
Tシャツ。
シャツ。
ジャケット。
色。
形。
用途不明。
「何を選べば“普通”なんですか」
真顔で言うな、とノアは思った。
「兄さん、“普通”って言葉をそんな難易度の高い概念にしないでください」
拓海は隣で腕を組み、ふんふんと頷く。
「まずだな、悠馬。その服は……」
拓海が悠馬の今の私服を見る。
正確には、”ノアの服”である。
サイズは合っている。
質もいい。
しかし。
「それは“弟のお下がり”だ」
「問題ありますか」
「問題しかねぇ」
ノアが即座に言った。
「兄さん、それ俺が二年前に“もう着ない”って判断したやつです」
「着心地は良いですが」
「そういう問題じゃない!」
そこへ、店員さんがにこやかに近づいてくる。
「いらっしゃいませ〜」
そして一瞬、視線が止まった。
悠馬。
ノア。
距離、近い。
服、共有。
雰囲気、静と動。
店員さんは一拍考え、笑顔の質を変えた。
「……ペアルック、ですか?」
ノアが噎せた。
「違います!!」
悠馬は真顔のまま頷いた。
「いいえ。彼の服を借りています」
誤解が深まった。
拓海が腹を抱える。
「おいノア、お前アクセサリーみたいになってんな」
確かに。
ノアは何もしていないのに、
立っているだけで女の子の視線を集めている。
レジ前。
鏡の前。
通路。
視線、ちら。
ちら。
ちら。
悠馬はそれを観察し、静かに言った。
「……行かなくても、来ますね」
「来ないでください!!!」
ノアが悲鳴を上げる。
「兄さん、見学モードやめてください!
俺は今“教材”じゃありません!」
店員さんがさらに誤解する。
「あ、もしかして……
こちらのお客様がコーディネート担当で?」
悠馬は一瞬考え、
「いえ。
彼が勝手に寄ってこられています」
ノアの胃が鳴った。
「兄さん!!!言い方!!!」
拓海は楽しそうに手を叩く。
「いいぞいいぞ、悠馬。
その調子で“無自覚モテ”を吸収しろ」
「理解できません」
「だろうな!」
最終的に、試着室前。
悠馬は鏡の前で固まっていた。
「……これは」
「どうですか?」と店員さん。
「落ち着きません」
「似合ってますよ」
「仕事では問題ありませんが、
これで“町を歩く”のは業務外です」
ノアは力尽きて壁にもたれた。
「兄さん……
“普通の買い物”って、こんなにHP削られるものじゃないんですよ……」
拓海が笑いながら肩を叩く。
「大丈夫だ。
今日は服だけで終わる」
ノアが即座に言った。
「“今日は”って言いましたね???」
悠馬は鏡の中の自分を見つめ、小さく呟いた。
「……服一つで、
世界の見え方が変わるのは事実かもしれません」
ノアが顔を上げる。
「兄さん?」
「ただし」
悠馬は静かに続けた。
「次は、休憩を挟みたいです」
ノアは泣いた。
「賛成です!!!胃薬!!!」
拓海は満足そうに笑った。
「よし。
じゃあ次は“普通のカフェ”だ」
ノアの悲鳴が、ロンドンの街に溶けていった。
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




