第八部 第二話 ~”普通”は服から~
八部は最終章になります。
この時点で
悠馬32歳
ノア27歳
凛・蘭30歳 くらいかな。
悠馬のフラットは静かだった。
静かすぎて、
生活音が生活音として目立つ。
冷蔵庫の唸り。
時計の針。
ノアの胃の鳴る音。
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「……兄さん」
ノアは部屋を見回した。
「ここ、住んでるんですよね」
「住んでいます」
「生活感が薄い」
悠馬は少し考えた。
「僕が薄いので」
ノアが黙った。
(兄さんはたまに哲学で殴る)
拓海はソファに座るなり言った。
「で」
「お前、普通をやるんだろ」
悠馬は一拍置いた。
「……試す時間が欲しいです」
拓海が頷く。
「よし」
ノアが嫌な予感を覚える。
(よし、が一番危ない)
拓海は悠馬を見た。
そして。
眉を寄せた。
「……まず」
悠馬が首を傾げる。
「はい」
拓海が指をさした。
「その服」
ノアが固まった。
悠馬は淡々と答える。
「問題がありますか」
拓海が即答する。
「ある」
ノアが小さく呟く。
「兄さん、それ僕のです」
悠馬は一拍遅れて言った。
「借りました」
拓海が叫んだ。
「借りるな!!」
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悠馬は真顔だった。
「着られたので」
拓海が頭を抱えた。
「着られるかどうかの問題じゃねえ!」
ノアが叫ぶ。
「そういう問題じゃない!!」
拓海は腕を組む。
「いいか悠馬」
「普通にするならな」
「見た目も大事だ」
悠馬は少し考える。
「業務上の身だしなみは整えています」
拓海が頷く。
「仕事はな」
一拍。
「生活だよ」
ノアが胃薬を握りしめた。
(来た)
拓海は立ち上がった。
「行くぞ」
悠馬が瞬いた。
「どこへ」
「買い物だ」
悠馬は固まる。
「……買い物」
拓海が笑う。
「”普通”のやつ」
ノアが震える声で言う。
「拓海父さん」
「兄さんは買い物に慣れてません」
拓海が即答する。
「だから行くんだろ」
ノアが呻いた。
(論破された)
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外。
ロンドンの街は人で溢れていた。
店の光。
笑い声。
紙袋。
香水の匂い。
悠馬は少しだけ目を細める。
「……眩しいですね」
拓海が笑った。
「凛の結婚式じゃねえんだから」
ノアが胃薬を飲んだ。
(比較対象がそれなのがもう終わってる)
拓海は歩きながら言う。
「女の子誘うならな」
ノアが即座に言う。
「やめてください」
拓海が無視する。
「服もそうだし」
「町も知れ」
「普通にぶらつけ」
悠馬は真顔で聞いた。
「ぶらつくとは」
拓海が立ち止まった。
「……お前、ぶらついたことねえのか」
悠馬は少し考える。
「移動はしています」
ノアが叫ぶ。
「移動とぶらつきは違う!!」
拓海は肩を叩いた。
「まあいい」
「今日は第一歩だ」
悠馬は小さく息を吐く。
第一歩。
走らされてきた人生で、
初めての寄り道。
ノアが胃薬を握りしめて呟いた。
「……兄さん」
「山の予感しかしません」
悠馬は一拍遅れて答えた。
「検討します」
ノアは泣いた。
『普通は、服から始まる。』
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




