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佐伯悠馬の恋愛事情  作者: 雪森蓮


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第八部 第一話 ~父親という他人~

拓海パパは悠馬の父親ですが、ノアのほうが息子みたいな育ち方をしています。

戻った。


悠馬は戻った。

ロンドンに。

オフィスに。

机に。

通常運転に。



業務は滞りなく流れる。

決裁。

確認。

返信。

会議調整。

噂対応。


胃薬補給。

→ノアが。



ノアはまだ時々机に突っ伏している。

悠馬は一度も突っ伏さない。

それが一番怖い。


「兄さん」


ノアが疲れた声で言う。


「……戻ったんですよね」


「戻っています」


「姿もありますよね」


「あります」


「じゃあ何で僕の胃がまだ痛いんですか」


悠馬は少し考えて答えた。


「副作用でしょうか」


ノアが机に額を打ち付けた。


ゴン。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


戻った。

確かに戻った。


でも。


問いも戻った。

いや。

問いだけが置き去りにならなかった。



帰るとは何だろう。

居場所とは何だろう。


一緒にいたい相手とは。

親しい友人とは。


悠馬は気づけば、

そういうものを作らないまま走ってきた。

走らされてきた。


気がつけば頂点に立っていた。

立たされていた。


ーーーーーーーーーーー


休憩時間。


窓の外は曇っている。

ロンドンはいつも通り灰色だ。


悠馬はふと、

自分が“日本人”であることを思い出す。


だが日本は母国ではない。

“帰る場所”と呼ばれるほど知らない。


ーーーーーーーーーーー


(では)


(どこが)


(自分の帰る場所なのか)



そんなことを考えている時だった。




「悠馬」


声がきこえた。

妙に軽い。


そして。

聞き慣れている。


顔を上げると、

拓海(父)が立っていた。


何事もなかったように。

でも。


目だけが少し違う。


---


悠馬は一拍遅れて言った。


「……父さん」


ノアが反射で立ち上がる。


「拓海父さん!?」


拓海が片手を上げた。


「おう」


ノアが震えた。


(来た)


(ろくでもない大人その一)


悠馬は拓海を見る。


父親、のはずだ。


だけど。


“父親”としての距離感が分からない。


拓海は首を傾げた。


「なんだその顔」


「いえ」


「久しぶりに会った父親を見る顔じゃねえな」


悠馬は少し考える。


「……父親に久しぶりに会う経験が少ないので」


拓海が固まった。

ノアが小さく頷いた。


(兄さんは正論で殴る)


拓海は咳払いをした。


「……まあいい」


そして、声を落とす。


「お前が消えた時」


悠馬の指が止まる。


拓海は続けた。


「ノアから連絡が来た」


ノアが叫ぶ。


「俺は泣きながら電話しました!!」


拓海が無視する。


「拓海父さん、兄さんがいませんってな」


悠馬は静かに目を伏せた。


ーーーーーーーーーーーーー


拓海は腕を組む。


「探したぞ」


「日本まで飛ぶかと思った」


ノアが呻く。


「飛ばないでください!!」


悠馬は小さく言った。


「……すみません」


拓海は即答した。


「謝るな」


一拍。


「……心配するくらいは、父親だ」


ノアが固まった。

悠馬も固まった。


拓海がそんなことを言うのは珍しい。


拓海は咳払いをして誤魔化す。


「で」


「戻ったなら普通にしろ」


ノアが叫ぶ。


「普通が一番難しいんです!!」


拓海は悠馬を見た。

一瞬だけ、父親の目になる。


「……お前さ」


「はい」


「走らされすぎたな」


悠馬の指が止まった。


拓海は続ける。


「俺もだ」


「エドもだ」


「ジェシカもだ」


「ノアもだ」


ノアが即答する。


「僕は巻き込まれただけです!!」


拓海が肩をすくめる。


「まあ、そうだな」


そして悠馬に言う。


「で」


「これからどうすんだ」


悠馬は答えない。

答えがない。


拓海はあっさり言った。


「じゃあ普通を教えてやる」


ノアが固まった。


「……普通?」


拓海が笑う。


「そう。普通の出会いとか」


ノアが叫んだ。


「やめてください!!」


悠馬は真顔で聞いた。


「母さんともそうだったのですか」


拓海が凍った。


ノアが死んだ。


沈黙。


拓海は視線を逸らした。


「……それはまた今度だ」


悠馬は少しだけ息を吐いた。

答えは出ない。

居場所も分からない。


だけど。


“試す時間”なら。


『今まで出来なかったことを試す時間なら』


悠馬は静かに言った。


「父さん」


「ん?」


「少し、付き合ってください」


拓海が目を瞬かせる。


そして、にやりと笑った。


「おう」


ノアが胃薬を握りしめて呟いた。


「……次の山ですね」


悠馬は一拍遅れて答えた。


「検討します」


ノアは泣いた。



AIアシスト作品です。

対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。

前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。

一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。


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