第七部 第二十話 ~連絡網からの捕獲~
ノア君殺気立つ
住宅街の角を曲がった時だった。
悠馬はただ歩いていた。
映像だった場所を、現実として見ていただけだ。
「……あれ?」
声がした。
買い物袋を持った女性が立っていた。
目が丸くなっている。
「菜摘ちゃんの……?」
悠馬の指が止まった。
「菜摘ちゃんの息子さん?」
一拍。
「なんだっけ……悠馬くん?」
名前を呼ばれて、悠馬は固まった。
(なぜ)
(ここで)
女性は両手を叩いた。
「やっぱり!!」
「似てるわぁ!」
「菜摘ちゃんにそっくり!」
弾丸トークが始まった。
「あらぁ!大きくなって!」
「いつ日本に来たの?」
「仕事?観光?」
「一人なの?」
「ほら!双子の旦那さんの…ノアくんは?」
「拓海くんは元気?」
悠馬は頷く。
「……はい」
(どれに)
(はいなのか)
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速度が違う。
距離が近い。
そして。
情報量が多い。
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女性はスマホを取り出した。
「菜摘ちゃんに言わなきゃ!」
悠馬の胃が鳴った。
(終わった)
「もしもし菜摘ちゃん?」
電話口から声が返る。
『え?悠馬!?』
『なに?今、日本にいるの!?』
悠馬は何も言えない。
返事をする前に連絡網が走る。
その日の夜。
拓海から着信が入った。
『お前何してんだよ!?』
悠馬は淡々と答える。
「……少し、見に来ただけです」
『少しじゃねぇ!!』
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翌日。
悠馬は海に行った。
誰も知らない場所。
波の音。
酒の匂いもない。
噂もない。
業務もない。
(ここでもない)
そう思った。
ただそれだけだった。
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二日目の夕方。
スマホが震えた。
ノア。
『兄さん』
『現在地を送ってください』
『今すぐです』
悠馬の眉が動く。
(来たのか)
『父上が許可しました』
追伸。
最悪である。
三日目。
駅前。
悠馬がぼんやり立っていると。
「兄さぁぁぁぁん!!!」
全力の声。
現実。
ノアだった。
スーツ。
目の下に影。
胃薬装備。
悠馬は一拍遅れて呟いた。
「……本当に来たのですか」
ノアが叫ぶ。
「捕獲です!!!」
そして腕を掴む。
逃げられない。
悠馬は小さく息を吐いた。
自分探し(笑)は終了した。
ノアは低い声で言った。
「兄さん」
「帰ります」
悠馬は一拍遅れて問う。
「……どこに」
ノアは即答した。
「ロンドンです」
悠馬は思った。
結局僕は帰る。
連れ戻される、という事か。
ノアが胃薬を飲みながら呟いた。
「二度と消えないでください」
悠馬は静かに頷いた。
「……検討します」
ノアが即答した。
「殺すぞ」
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




