幕間 ~問いは足元に残る~
さて、次の山はいつでしょうか。
検討する、と言った自分の声が
どこか他人事に聞こえた。
帰るとは何だ。
居場所とは何だ。
答えは出ない。
問いだけが、
机の上ではなく足元に残った。
ノアはその背中を見ていた。
兄さんはいつも通りに立っている。
資料を揃え、
ペンを置き、
「通常運転」を続けている。
でも。
その通常運転の中に、
何か一つだけ混ざっている。
混ざってはいけないものが。
(兄さんが考えている)
(怖い)
(考えると消える)
ノアは胃薬を飲んだ。
夜。
邸宅の廊下は静かだった。
食事は用意されていた。
きちんと温められ、
きちんと並べられ、
きちんと“生活”の形をしている。
悠馬はそれを見て、少しだけ考えた。
これは。
自分の生活なのか。
それとも。
使用人の生活なのか。
ノアが横から言う。
「兄さん、それ食べないなら僕が――」
悠馬は即答した。
「食べます」
ノアが黙った。
(兄さんは食事を奪われると反射で生きる)
悠馬は黙々と皿を空にする。
問いは残る。
胃は働く。
生活は続く。
食後。
ノアが恐る恐る聞く。
「兄さん」
「はい」
「……帰るって何ですか」
悠馬は一拍置いて答えた。
「帰宅です」
ノアが叫んだ。
「そういう意味じゃない!!」
答えは出ない。
出ないまま、
夜だけが過ぎる。
そして数日後。
世界は何事もなかったように
次の“決定事項”を運んでくる。
凛の結婚。
祝福。
眩しさ。
迷いのない選択。
悠馬の問いを待たずに、
世界だけが先に決まっていく。
ノアは胃薬を握りしめて呟いた。
「……兄さん」
「次の山、来ないですよね」
悠馬は静かに答えた。
「検討します」
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




