第七部 第十五話 ~迎え~
25過ぎてもノアは大型犬ですね
ヒースロー空港。
灰色だった。
天気も空気も、ロンドンはロンドンだ。
西海岸の光はもう遠い。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
悠馬はゲートを抜けた。
スーツケース。
資料。
通常運転。
戻った。
戻ったはずだった。
その瞬間。
視界の端で何かが動いた。
いや。
走っている。
全力で。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「兄さぁぁぁぁぁん!!!」
声。
悠馬が顔を上げるより早い。
ノアだった。
ーーーーーーーーーーーーー
ボロボロだった。
目の下に影。
髪は乱れ。
スーツも皺だらけ。
人間としての限界が歩いている。
いや、走っている。
ノアは止まらなかった。
そして。
勢いのまま。
悠馬に飛びついた。
「うわっ」
悠馬の体が揺れる。
「兄さん!!!」
ノアの腕がしがみつく。
本気で。
命綱みたいに。
周囲の視線が刺さる。
空港で成人男性が抱きついている。
完全に事件である。
悠馬は一拍遅れて言った。
「……ノア」
ノアは震える声で叫ぶ。
「帰ってきた!!!」
「帰ってきたぁぁぁ!!!」
悠馬は固まった。
帰ってきた。
その言葉が、胸に落ちる。
ノアは顔を上げた。
目が赤い。
「兄さん……」
「俺……」
言葉が詰まる。
そして次の瞬間。
「俺、死ぬかと思いました!!!」
悠馬は小さく息を吐いた。
「……すまない」
ノアが即答する。
「謝るな!!!」
「帰ってこい!!!」
矛盾が爆発している。
悠馬は周囲を見た。
人が避けている。
カップルが二度見している。
警備員が迷っている。
悠馬は低い声で言った。
「ノア、離れなさい」
ノアは離れない。
「無理です」
即答。
悠馬は一拍遅れて理解した。
(これは業務ではない)
(役割でもない)
(立場でもない)
これは、呼ばれた場所。
ーーーーーーーーーーーーー
悠馬は小さく手を置いた。
ノアの背中に。
不器用に。
「……戻った」
ノアの肩が震えた。
「戻りましたね!!!」
悠馬は思った。
帰るとは。
灰色の空へ戻ることではない。
書類へ戻ることではない。
噂へ戻ることではない。
こうして飛びついてくる人間がいる場所。
それが、帰る、なのかもしれない。
ノアは顔をぐしゃぐしゃにして笑った。
「兄さん」
「もう二度と一か月とかやめてください」
悠馬は一拍遅れて答える。
「……検討します」
ノアが叫んだ。
「検討じゃない!!!」
空港の灰色の中で。
悠馬は初めて、少しだけ息をした。
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




