第七部 第十三話 ~お願い~
ノア君はもうちょっと頑張ってもいいと思うんだ(´・ω・`)
ノアは画面を見ていた。
兄さんのメール。
西海岸。
合理的。
呼吸。
数年住む案。
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ノアは笑った。
笑ったというより、息が漏れた。
「……呼吸?」
「兄さんが?」
よかった。
本当に、よかった。
でも。
机の上には山。
決裁。
会議。
噂。
父上。
……そして
胃薬。
兄さんがいないという現実が、全部そこに積まれている。
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ノアはスマホを握った。
返信しなければ。
業務として。
通常運転で。
兄さんが安心できるように。
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指が動く。
『承知しました』
消す。
違う。
そんな余裕はない。
『業務は回っています』
消す。
嘘だ。
回っているのは僕の胃だけだ。
ノアは息を吸った。
胸が痛い。
こんな文章を打ったことがない。
でも。
打たないと死ぬ。
『兄さん』
送信。
既読はつかない。
時差。
いや。
兄さんはたぶん資料を見ている。
通常運転だ。
ノアは震える指で続けた。
『俺、無理です』
送信。
送った瞬間、心臓が跳ねた。
情けない。
でも無理だ。
『本当に無理です』
送信。
『回りません』
送信。
『兄さんがいないと』
送信。
喉が詰まる。
目が熱い。
こんなの、弟が言うことじゃない。
でも弟しか言えない。
ノアは画面に顔を近づけた。
『お願いです』
送信。
『早く帰ってきてください』
送信。
一拍。
止まらなかった。
ノアは続けて打った。
『兄さんが呼吸できるのはよかった』
送信。
『でも俺が呼吸できません』
送信。
『俺ここで死にます』
送信。
送ってから、ノアはスマホを抱えた。
机に額をつける。
震える。
馬鹿みたいだ。
泣きついてる。
完全に。
「……兄さん」
声が漏れる。
「お願い」
「帰ってきて」
しばらくして。
既読がついた。
ノアは息を止めた。
返信だ。
短い。
『ノア』
その二文字で、もう駄目だった。
涙が出た。
兄さんの文字はいつも冷たいのに。
今は、温度がある。
続き。
『すまない』
謝る人じゃない。
兄さんは。
ノアは笑いながら泣いた。
「謝るなよ……」
「謝るくらいなら帰ってこいよぉ……」
さらに。
『帰る』
ノアは固まった。
一拍。
二拍。
三拍。
「……帰る?!」
声が裏返る。
「帰るって!」
「帰るって言った???!!!」
次の瞬間。
ノアは椅子から跳ね上がった。
拳を握りしめる。
涙のまま。
全力で。
「っしゃあああああああああああ!!!」
ガッツポーズ。
胃薬が机から落ちた。
どうでもいい。
ノアは息を吸った。
やっと呼吸ができた。
ロンドンの灰色が、少しだけ軽い。
居場所の答えはまだない。
でも。
兄さんは戻る。
弟が呼んだから。
ノアは震える声で呟いた。
「……兄さん」
「今はそれでいい」
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




