第七部 第十二話 ~ノア・ハミルトンは限界である~
やばっ抜かしてた!!(そっと差し込む)
ロンドン。
灰色。
通常運転。
そしてノアの机の上には、
通常ではない山があった。
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未処理。
未決裁。
未確認。
未返信。
未読。
未読。
未読。
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ノアは静かにチャットを打っていた。
『兄さん』
送信。
既読はつかない。
時差。
いや。
兄さん。
たぶん通常運転。
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電話が鳴る。
ノアは反射で取る。
「はい、ハミルトンです」
『ノア様、こちら財務ですが』
「はい」
『佐伯様案件が滞っておりまして』
ノアは笑った。
笑うしかなかった。
「佐伯はアメリカです」
『……一か月でしたよね』
「そうです」
『……延長の可能性は』
ノアの手が止まった。
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その瞬間。
嫌な予感がした。
嫌な予感はだいたい当たる。
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チャットが鳴る。
「佐伯さん、現地で楽しそうですね!」
楽しそう。
その単語がノアの胃を殴った。
さらに鳴る。
「凛様の件で確認を」
さらに鳴る。
「噂対応どうしますか」
さらに鳴る。
「エドワード様がお呼びです」
ノアは机に額を打ち付けた。
ゴン。
そこへ。
メールが届く。
件名。
”From:Saeki Yuma”
ノアの心臓が跳ねた。
(生きてた)
震える手で開く。
本文。
『ノア』
『業務は回っていますか』
ノアは叫んだ。
「回ってるわけねぇだろこのタコが!!!!」
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続き。
『こちらは順調です』
『西海岸は合理的です』
『呼吸ができます』
ノアの視界が揺れた。
呼吸。
兄さんが呼吸。
よかった。
よかったが。
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最後。
『ここに数年住む案も検討しています』
ノアは静かに画面を閉じた。
開いた。
閉じた。
開いた。
閉じた。
現実確認。
「……兄さん」
ノアは小さく呟いた。
「それは」
「それは居場所の話じゃない」
「逃避だ」
「いや」
「業務だ」
「どっちでもいい」
ノアは椅子からずり落ちた。
床に座った。
胃薬を取り出した。
飲んだ。
効かない。
スマホが震える。
未読。
未読。
未読。
ノアから兄さんへの未読ではない。
兄さんからノアへの未読が増えていく。
返信できない。
手が震える。
ノアは天を仰いだ。
「兄さんやっぱ人間じゃねぇ……」
そして付け足した。
「……いや、兄さんが人間になろうとするたびに僕が死ぬ」
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その頃。
アメリカの光の下で。
悠馬は資料を整えていた。
通常運転。
ノアの未読は、三桁に届こうとしていた。
合掌。
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




