第七部 第六話 ~業務として可能~
凛は好きなタイプです。そしてもっと女の子キャラを出すべきだったと後悔しています。
翌日から、噂はさらに形を持った。
『凛が結婚する』
そこまでは事実。
『悠馬が焦っている』
そこからは憶測。
『相手を探しているらしい』
そしてそれは、
いつの間にか確定事項になった。
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「佐伯さん」
誰かが笑いながら言う。
「おめでたい話、続きますね」
悠馬は笑わない。
「……業務です」
逃げ道の言葉。
だが同時に、彼の世界の中心でもあった。
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昼休み。
カイルは相変わらず眩しい。
「ねえ悠馬」
「噂って面白いよね」
悠馬は返せない。
面白くはない。
ただ、止められない。
カイルは肩をすくめる。
「凛が言ってたよ」
「君、ずっとここにいるって」
そして軽い調子で続ける。
「何ならアメリカ来てみる?」
「ここと違って、もっと楽しいかもよ?」
善意だった。
悪意はゼロ。
だから余計に刺さる。
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悠馬は一拍遅れて瞬きをした。
アメリカ。
その単語は、感情より先に
別の場所に落ちる。
(……可能だ)
思考が即座に業務に変換される。
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ジェシカの会社。
グループの拠点。
凛の定住。
新しい経営体制。
視察。
調整。
名目はいくらでも立つ。
(行く理由は作れる)
悠馬はそう結論づけた。
理由があれば動ける。
理由がなければ動けない。
それが悠馬だった。
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カイルが首を傾げる。
「……今、考えてた?」
悠馬は短く答える。
「業務としては、可能です」
「業務!」
カイルは笑った。
「君、それ好きだね!」
ノアが横で小さく頷く。
「兄さんはそういう人です」
(そういう人とは)
悠馬は心の中でだけ続けた。
凛が淡々と口を挟む。
「カイル」
「ん?」
「余計なことを言わない」
「ごめんごめん」
カイルは笑う。
「でもさ、凛」
「君は決めたじゃない」
「僕のいる場所が、君の場所」
凛は即答する。
「そうよ」
迷いがない。
選んだ場所に立つ。
悠馬は足元を見る。
場所。
居場所。
立つ場所。
自分はどこにいる。
(僕がアメリカに行くのは)
(業務になる)
(視察になる)
(調整になる)
(必要なら配置も組める)
それは全て正しい。
正しいからこそ、空白が残る。
(それは)
(僕の場所ではない)
業務は場所ではない。
立場だ。
凛が言った通りだ。
凛が悠馬を見る。
「悠馬」
「あなた、また仕事に変換してる」
悠馬は喉が詰まった。
否定できない。
仕事に変換しないと、扱えない問いがある。
「……凛」
妹の名前だけが出た。
凛はそれだけで十分だという顔をした。
「悠馬兄さんは行けるわ」
「どこにでも」
一拍。
「でも、行く理由を“仕事”にしないで」
カイルが無邪気に言う。
「でも君、自由だよ?」
その言葉が、業務より危険だった。
自由。
悠馬の世界に存在しない単語。
噂は続く。
業務も続く。
問いも続く。
そして悠馬だけが、
正しさの中で居場所を見失ったまま
そこにいた。
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




