第七部 第五話 ~一拍遅れる~
悠馬君は悠馬君のペースでいいと思うんだ。
昼食のあと、
カイルとノアは妙に仲良くなっていた。
「じゃあ今度、パブ行こう!」
「いいですね!」
眩しい。
悠馬は少し後ろを歩く。
凛が歩調を落とした。
自然に、二人になる。
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「悠馬」
「はい」
「疲れてる?」
凛はそう聞いた。
心配ではない。
確認だ。
悠馬は少し考える。
「……通常です」
「通常ね」
凛は即座に頷く。
「兄さんの通常は便利よね」
悠馬は返せなかった。
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廊下の窓から、ロンドンの空が見える。
灰色。
いつも通り。
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「結婚するの」
凛が言う。
悠馬は知っている。
知っているのに、
改めて言われると言葉が遅れる。
「……はい」
「アメリカに住むわ」
「仕事も続ける」
「彼も了承してる」
淡々とした決定事項。
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悠馬は小さく息を吐く。
「……それでいいのですか」
凛は即答する。
「いいわ」
迷いがない。
選んだ場所に立つ。
凛はそういう人間だ。
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「悠馬兄さんは驚いてるね」
凛が言った。
悠馬は首を振りかけて止まる。
驚きではない。
ただ、眩しい。
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「彼のいる場所が、私の場所」
凛はもう一度言う。
悠馬の足元が、少し揺れる。
そんなふうに言える場所を
自分は持っているのか。
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「悠馬兄さん」
凛が呼ぶ。
「兄さんはどこにいるつもりなの」
直球だった。
妹の言葉は容赦がない。
昔から。
悠馬は答えを探す。
業務。
役割。
戻る場所。
全部ある。
なのに。
「……ここに」
出たのは、それだけだった。
凛は眉を動かさない。
「それは場所じゃない」
「立場よ」
一拍。
「兄さんは立場で立ってる」
悠馬は黙った。
否定できない。
凛は歩き出す。
「答えは急がないわ」
「でもね」
振り返らずに言う。
「遅れすぎると、置いていかれるわよ」
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前を歩く背中。
眩しい人たちは、もう先にいる。
悠馬だけが、
一拍遅れてそこに残った。
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




