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白金の魔導士  作者: 渡空
始まりのヤンバルク

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幸運のダンス

幸運のダンス


 次の日。トロイは宿屋の一階から聞こえる少女の声で目を覚ました。

 何を言っているのか聞き取れはしないが、おそらくアウラもいるだろう。

 一杯のシチューと一晩の休息では体の痛みを取り切れなかったが、起き上がって用を足しに行ける程度には回復していた。

 眠気と痛みに耐えながら、壁に手をついて階段を下りる。


「どうしてですかぁ!アウラさまぁぁ!」


「何度も言ってるだろ?国からの依頼は私がやらなきゃいけないんだよ。」


「いーじゃないですかちょっとぐらい!すこーし手伝うだけですよぉ。」


「ダメだ。私にも立場ってもんがある。トロイの件もあるし、暫く滞在する。掃除が終わってからな。」


「ホントですか!?絶対ですよ!?」


 受付の前で、アウラと少女が何やら言い合いをしている。


「朝からうるさいな。何してんだ?」


「ん。やっと起きたなぁ、小僧。もう昼前だぞ。」


「えっ。そうなの?」


 どうやらアウラは、トロイが起きるのを待っていたみたいだ。


「ふんっ。アウラ様はどうしてこんなやつを弟子になんか…。」


 白のブラウスに赤いワンピース風ドレスを着た少女は小声で呟き、そっぽを向いた。


「あー!お前!昨日の飛び蹴り女!」


「何よ失礼ね!あんたがアウラ様に襲いかかろうとしてたんでしょ!」


「あれはアウラが先に手ェ出してきたんだ!この穴もアウラがやったんだからな!」


 昨日まで扉のあった大穴を指差し、自分に非がないことをアピールするトロイ。


「ふんっ。どうせあなたが無礼な事でもしたんでしょ。アウラ様が理由もなしにそんな事するはずないもの。」


「うっ。」


 腕組みする少女に言葉に詰まるトロイ。

 だが「クソババア」と言われただけで、宿屋の入口を洞窟の入口のような大穴に変えてしまうのは、いくら何でもやり過ぎである。


「よく分かってるじゃないか。リズ。」


「当たり前ですアウラ様っ!私がどれだけお慕いしているかご存知ないとは言わせませんわ!」


 少女の輝く瞳に、アウラは満更でもなさそうに言う。


「もう少し控えめだと有難いんだがな。」


「アウラ、誰なんだその子。」


 何となく嫌そうなトロイ。


「紹介しよう。こいつはリズ。たまたま立ち寄った国で出会った私の追っかけだ。」


「追っかけ?ファンってこと?」


 それって追われる側が言うもんなの?


「もー!アウラ様はどうしてそんなに意地悪なのですか!?弟子です!で!し!一番弟子ですぅ!」


「アウラの…弟子…?」


 トロイは固まってしまった。


「勝手に言ってるだけだ。」


「どうしてですかアウラ様!あのとき私にいっ!んー!んーー!」


 アウラはリズの口を塞いだ。

 ポケットから取り出された白いハンカチで、口元を覆われたリズは最初こそ抵抗したものの、途中からニヤニヤしだした。

 鼻で息を吸い込んでいたことを考えると、アウラの服の匂いが染み付いていたのだろう。とんでもない少女だ。


「ところでトロイ。お前に聞きたいことがあったんだ。」


「聞きたいこと?」


 アウラが自分に聞きたいこととはなんだろうかと、首を傾げるトロイだったが、起きたばかりで少女と多少の言い合いをしたからか、空腹の音が鳴った。


「ちょうど私も腹ごしらえがしたかったとこだ。食べながら話そう。」


 気を利かせてくれたのか、アウラは食事の提案をすると、抑えていたリズの口元を解放した。


「ふはー!もう良いんですか?もう少しぐらい抑えてても…。」


「リズ。頼みがある。リウメイを呼んで来てくれ。隣の家に居るはずだ。」


 名残惜しそうなリズの言葉を食い気味に遮るアウラ。


「ハッ。アウラ様の頼み…!分かりました!行ってきます!おばさまー!アウラ様が呼んでおりますわー!」


「あの子……元気すぎない?」


 走り去っていくリズが少しばかり、色々心配になるトロイだった。


 マイナーの宿屋は一階に受付と、その後ろに食堂がある。

 三人が泊まった部屋は二階にあり、現在は空き部屋が一つの計四部屋という小さな宿屋だ。

 切り盛りしているのはリウメイ一人だが、旦那のウコモ・マイナーの仕送りによって生活は安定している。

 客入りも悪くはなく、満室になるのもそう珍しいことではない。


 トロイとアウラは食堂でリウメイが来るのを待ち、リズと三人で机に座った。

 もちろん、アウラの隣はリズである。


「それで?聞きたいことってなんだ。」


 二人の対面に座るトロイが、改めて話を切り出した。


「お前、私の魔力が見えていたな。」


「魔力?ああ、昨日のことか。魔力なのかは分からないけど、アウラの周りにカーテンみたいなのは見えたよ。」


「カーテンか。それもいいだろう。」


「?」


 まるで他にもっと良い表現があるかのような口振りに、トロイはまたひとつ、疑問を積もらせた。


「あのとき、お前の瞳に白い輪っかが見えた。お前の眼は魔眼(まがん)と呼ばれる、魔力を視覚的に確認出来る特殊な眼だ。」


「へぇ…。今もあるのか?その輪っか。」


「いや。今は見えない。魔眼にもいくつか段階があってな。お前のそれは最上位に位置する眼だ。おそらく今は魔力操作がおぼつかないせいで、自由に発動出来ないだけ。操作のその字もないからな。」


「まったく。そんなに良い魔眼を持っていながら魔力操作もまともに出来ないなんて。宝の持ち腐れですわ。」


「うるさいな。こちとら最近目覚めたばかりの初心者なんだよ。」


 リズに小言を挟まれ、口を尖らせるトロイ。


「ていうかアウラ、目良いんだな。闘技場でも八瞳栗鼠(やどうりす)副眼(ふくがん)がーとか言ってたし。俺には見ようとしても無理だった。」


「まぁな。昔から視力は良いんだ。お前ら程じゃないが、私にも魔力が見える。」


「お前ら?」


 トロイが聞き返すと、ここぞとばかりに胸を張るリズ。


「ふっふーん。私も魔眼持ちなのよっ。あなたと違ってちゃぁんと魔力操作も出来るんだからっ!」


「別に張り合ってねぇよ。」


 どうやらリズは一番弟子の座を譲る気はないらしい。


「トロイ。お前の魔眼は、私の親友と同じものだ。」


「アウラの親友と同じ…。ペンダントをくれた人か。」


「そうだ。だが、あいつのは特殊な魔眼だった。どんな能力なのか聞かなかったが、お前も何かしらの特殊能力があるはずだ。珍しい魔眼持ちは何かと狙われやすくてな。お前の身を案じて、多少鍛えてやろうと思ったんだ。」


「えっ…。あ、ありがとう。」


 それで「魔法を教える」になったのか。このババア、意外と優しいのかもな。


 魔力を見ることの出来る瞳。それを広義に魔眼(まがん)と呼ぶ。

 見え方は人によって変わるが、多くはただ魔力が見えるだけに留まる。大抵はぼんやりと、魔力の量が確認出来る程度だ。

 だがトロイの持つ、白い輪が瞳を囲う魔眼はその中でも性能が良く、魔力の質や色、時には象徴(トレンドマーク)まで()()ことが出来る。

 これだけでは特段性能の良い魔眼であるが、他に特殊な能力を持っていた場合。国や闇組織の人間に利用価値があると判断され、捕縛又は命の危険に晒されるだろう。

 アウラはそれを危惧し、トロイを鍛えることにしたのだ。


「アウラ様!?私にも教えてくれる約束ですよね!」


「分かった分かった。リズも一緒にみてやるよ。」


 アウラが魔法を教えてくれると言質を取ったリズは、感激のあまりに固まってしまった。


「やっと…やっと…!アウラ様!私、頑張りますわ!」


 リズの表情を見るに、きっと長い間。アウラを追ってきたのだろう。そしてその度に逃げられてきた。だからこそ、リズの眼には涙が溜まっているのだろう。


「なんで泣いてんだ?」


「う、うるさいわね!泣いてないわよ!」


「いや、泣いてるだろ。」


「泣いてないって!」


 トロイとリズの喧嘩を見ながら、アウラは頬杖を付いた。


 監視のついで程度に思っていたが、まさか魔眼持ちとはな。それにこの魔力量。おそらくマーリンの涙の前任者も何か知っていて細工したはずだ。このままに放っておくにはいかないよな。


――「なぁ。先生。」


「ん?どした。」


 まだ修行中だったアウラは、男性と薪を運んでいた。


「どうして私なんかに魔法を教えてくれるんだ?」


「どうしてってお前…。そんな年端もいかねぇ女の子をほっとく訳にいかんだろう。」


「ふーん。」


「せんせー!アウラー!こっちだよー!」


「おーう!タニアー!今行くぞー!アウラ、お前もいつか大人になったら、同じようにしてやるんだぞ?」


「えー。めんどい。」


「ハッハッハ。そうか。」――


 結局。私も大人になってしまったということか…。まぁ、あの頃の私に比べればこいつらは子供じゃ無いがな。


「この妖怪追っかけ少女め!」


「なによ!変態ミイラ男!」


「誰が変態だコラ!」


 …そうでもないか。


「ほーら。出来たよー!持っていきな。」


 リウメイの料理が出来たらしい。

 リズは元気よく返事をし、配膳に向かった。


「トロイ。リズ。修行は明日からだ。覚悟しとけよ?」


「はい!よろしくお願い致しますわ!」


「えっ。早い…まだ体痛てぇよ…。」


「心配するな。どこが痛かろうが、魔力操作は修得可能だ。」


「ほらほら、喋ってないで早く食べな。」


 リウメイに促され、三人は談笑しながら昼食を共にした。

 


 翌日。三人はヤンバルクの外壁を出て、近くにある森に向かっていた。


「なぁ。なんかすげぇ見られてないか?」


 壁の上から、大勢の人々が歩いていく三人を眺めている。


「アウラ様がお掃除に行かれるわよ!」「おい!早く来い!見逃しちまうぞ。」「俺、見るの初めてなんだよなぁ。」「楽しみだわぁ。アウラ様の幸運のダンス!」


 幸運のダンス???


 興味深い単語が聞こえたトロイは、二人に聞いてみようとしたが、リズの返事に遮られてしまった。


「当然よ。アウラ様が()()()に行かれるのだから。」


「え?掃除?」


「あの森には発生区域(スポット)があってな。定期的に魔物退治をしてるんだ。」


 魔物(モンスター)発生区域。スポットとは、世界の至る所に存在する、魔物(モンスター)が湧きやすい一定の範囲のことである。

 広さや発生頻度は場所によって異なるが、生物(クリーチャー)や人間が住むのに適しておらず、魔物(モンスター)の領域となっている。


「そうだったんだ…。」


 にしても、魔物(モンスター)退治をお掃除とは…。そんなに強いのかこのババア。


「あなた。自分の住んでる国の発生区域(スポット)も知らないなんて、よっぽど平和ボケしてるのね。」


「い、いいだろ別に。平和なのは良いことだ。」


「何言ってるのよ。ヤンバルクが平和なのは、アウラ様が定期的に魔物(モンスター)を間引いてるからなのよ。まったく。アウラ様に感謝しなさい。」


「うっ…。」


 痛いところを突かれてしまったトロイは、不味そうな顔でたじろいだ。


「そう言ってやるな。リズ。私はそんな平和ボケしたバカに増えて欲しくて、こうして世界中を旅しているんだ。」


「さっすがアウラ様!こんなちんちくりんのバカにもお優しいのですね…!」


「おい。誰がちんちくりんだ。」


 アウラとリズは心の中で、「バカは認めるんだ…」と思った。


 大魔導十三支柱(マーリンオブラウンズ)の仕事は多岐に渡る。

 十三支柱(ラウンズ)の十二番、アウラ・オーレリアは世界中に点在する魔物発生区域(スポット)を周り、人々の安全を守っている。

 これといって人々の役に立つことをしない者もいるが、国に直接仕えている者もいる中で、アウラはそれなりに仕事をしている側である。


「それで…?どうやって掃除するんだ?」


「これを使う。」


 アウラは小瓶を取り出した。中の液体は紫色をしていて、なんとも怪しい雰囲気だった。


「こいつは誘魔薬(ゆうまぐすり)魔物(モンスター)を誘き寄せる効果のある薬だ。別名オトリ(やく)とも呼ばれる。」


「なるほど。それはつまり…。」


「森の外に魔物(モンスター)を誘き寄せるのよ。」


「だからあんなに人が見に来てるわけか。」


「そうゆうことっ。」


 なんでお前が自慢げなんだよ。


「さて。この辺でいいだろ。」


 アウラは外壁と森の中間あたりで足を止めた。

 周りには何も無く、ちょっとした野原になっている。

 森の周辺は定期的に整備されているようで、木々と野原の境目がはっきりと分かった。


「二人は離れていろ。今日は修行の手始めに、私の仕事を見せてやる。」


「はーいっ!ほら行くわよ。」


「お、おう。」


 アウラの魔法…。一体どんな魔法なんだ。


 アウラはトロイとリズが十分に距離をとったのを確認し、瓶を空へ放り投げた。

 岩に落ちた瓶が割れ、紫色の怪しい液体が辺りに散らばる。すると、木の影から(うさぎ)が一匹顔を出す。

 小さな顔に大きな耳。弾丸兎(ピストルバニー)だ。

 トロイは森の端っこから顔を出した魔物(モンスター)に、少なからずの恐怖を抱いた。


 弾丸兎(ピストルバニー)…!近くにいたのか。あの距離ならいつ攻撃されてもおかしくなかったな…。


 弾丸兎(ピストルバニー)が野原に踏み込み、アウラに向けて構えた。


「なあ、リズ。オトリ(やく)の効き目ってあんなもんなのか?もっといっぱいくるもんだ…と…!」


 トロイがリズに誘魔薬(ゆうまぐすり)について聞いていると、森から大量の魔物(モンスター)が溢れ出てきた。


「なんだあの数!?バニーだけじゃねぇ!やばいってこれ!」


「うるさいわねぇ。黙って見てなさい。」


 焦るトロイと違い、リズは堂々としていた。


綿毛のようなフサフサの尻尾と、毎日(くし)で整えているかのように細身(スマート)な胴体の狐。

 尻尾に鉄球でも着いているかのように地面を引きずる狸。

 頭の両端に、葉の無い小さなもみの木が刺さっているかのような鹿と、体に見合わぬ大きな鼻先が上を向いき、二つの角が何故か下を向いている猪。


 多様な森の魔物(モンスター)達が、警戒しながらゆっくりと迫る。


「いつもより多いな。」


 アウラは余裕の表情で両手を広げ、構えをとる。

 足元から風が巻き上がり、両手にはあの緑の球体が浮かび上がる。

 最初に顔を出した弾丸兎(ピストルバニー)が薬の誘惑を無視し、アウラに向けて発射する。


「アウラ!」


 闘技場での脅威を目の当たりにしたトロイはつい、声を上げてしまう。が、アウラは発射された猛スピードの弾丸に、左手から出る風の球体を鮮やかに着弾(ヒット)させる。

 (うさぎ)は真横に球を受け、まるでバットで打たれたように飛んでいく。


記譜する舞姫(ノータークバレット)

 

 周囲に螺旋状に立ち昇る風に合わせ、回転を始めるアウラ。

 両手から次々と攻撃を飛ばし、魔物(モンスター)達に浴びせていく。

 彼らはアウラに敵意を抱いたように、それぞれの戦闘態勢で迫る。


「すげぇ…。」


「当然よ。」


 トロイから漏れた感動の一言に、リズは何故か少し不機嫌に見えた。


「うおー!アウラさまー!」「幸運のダンスよ!」「あれがそうかぁ。」「いけー!やっちゃえー!」


 壁の上から大盛り上がりの声援が聞こえてくる。


「リズ、幸運のダンスってなんだ。」


「…。」


 あれ。なんか不機嫌?大喜びで解説されると思ったんだけどな。


「あなた、魔眼持ちなのよね。」


「あ、ああ。そうみたいだ。」


「私が魔力操作を手伝ってあげるわ。」


「え?あ、ありがとう…?」


 どうしたんだ急に。様子も変だし。


 リズはトロイの腕に軽く触れた。


四葉の女王(クローバークイーン)。アウラ様の二つ名よ。」


「四葉の女王?ペンダントのことか。」


 トロイから溢れ出る魔力が、少しずつ納まっていく。


「それもあるわ。でも、由来は他にあるの。アウラ様の魔法は魔導士特有の魔術式を使わない魔法。」


 トロイの瞳に白い輪が浮かび、段々とアウラの魔法が視界に映し出される。


「回転しながら風を飛ばしてピンポイントで直撃させるあの技術を魔術で再現するには、とても複雑な式がいる。魔術士から見れば、百発百中のアウラ様の魔法は座標と距離を指定し、タイミングと速度も計算された上で動きのある標的に命中させる、とんでもない()()が成せる技なのよ。見れただけで運気が上がる、なんて言う人もいるわ。」


「これが…幸運…?」


 リズはトロイの反応に目を丸くした。


「魔法なんてなんにも知らない俺にもわかるぞ。これは…。」


 魔眼を通して観るアウラの魔法は、とても綺麗だった。


 見える。視えるぞ。アウラから出る魔力の線。昨日よりはっきり視える。足元の風は周囲に散らせて、敵の位置を感じ取ってるんだ。あの頭の動き、多分視界を広げて感知の精度を上げてる。だから回ってる。それになんと言っても両手から出る弾。アウラから離れた後の線の太さが一つずつ微妙に違う。球体から出る粉状の魔力の散り方を見ても、毎回速度と回転数を調節してるがわかる。座標?計算?何言ってやがる。こいつは…。


「すげぇ技術だ…。」


「…。」


 リズはトロイの次の言葉を待った。


「あの球の軌道。精度。確かに式なんていう頭の固いやり方じゃ不可能だろうな…。」


「ふんっ。当然よ…。」


 少女は少し、俯いた。


「でも、とてもじゃないが幸運なんて軽い言葉で済ませていいもんじゃない。」


 その言葉に、少女は顔を上げた。


「俺には想像も出来ないような努力をしてきたのが分かる。身体の使い方に魔力操作。そしてなにより…。」


「?」


「とても綺麗だ…。」


「!」


 リズにはトロイの横顔が、まるで自分が初めてアウラの魔法を見た時のように、輝いて見えた。


「足から出るレールに、球の軌道が線を引いて。たまに見えるクローバーが音符で…。オルゴールを見てるみたいだ…。」


 柄にも無いことを言うトロイの言葉は、リズの頭にはあまり入ってこなかったようだ。


「な、何言ってるのよ。アウラ様はいつだって綺麗よっ!」


「あっ、ちょっと!ちゃんと操作してくれ!もっと見たいんだ!」


「うっ、うるさいわねぇ。自分でやりなさいよ!」


「手伝うって言ったのお前だろ!?ていうかなんで泣いてんだ。」


「な、泣いてないわよ!バカ!」


「あぁ!手離すなよ!ほら、手伝えって!」


「やだやめて!掴まないで!!」


「ふぅ。こんなもんか。」


 二人が言い合いをしている間に、アウラのお掃除は終わってしまった。


「ほらもー!私ももっと見たかったのに!」


「お前はずっと見えてただろうが!」


「ん?どうしたお前ら。手なんか繋いで。」


「なっ!違うぞアウラ!これはだな!」


「違いますわアウラ様!?この変態が…!」


 直後、アウラは森に異変を感じて振り向き、右足を踏み込んで爆風を放った。


「うおぁっ!」「きゃっ!」


 背を向けたはずの二人が尻もちを着くほどの威力は、アウラの警戒心を語っていた。


 …逃げられた。戦闘中には感じなかった。まるで突然現れたような…。


「いってぇ…。」


「痛いです…アウラ様…。」


 おしりを痛がる二人の声は届いておらず、アウラは森を見つめて止まっている。


「いきなりどうしたんだよ…。アウラ?」


「アウラ様?」


「…。」


「「?」」


「アウラさまー!ありがとー!」


 ヤンバルクの壁から、幼い少女の声が聞こえる。


「いつもありがとー!アウラ様ー!」「素敵なダンスでしたー!」「またお願いします!」「アウラ様ー!」


「…また今度にするか。」


 民衆に向かって手を振るアウラ。


「今度は座り込んでピクニックか?随分仲良くなったじゃないか。」


「お前のせいで転んだんだよ!」


 なんの事やらさっぱりのアウラにツッコミを入れるトロイだった。


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