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超次元勇士ゾーンG(グレート)ロボ  作者: 道化師
ティル・ナ・ノーグ編
20/23

賑やかなトランプ勝負。

愛先輩の誘いに、タケル、ケン、モンタの三人は半ば浮き足立ちながら愛先輩が居る部屋へと向かった。

扉が開いた先は、自分たちの部屋とは比較にならないほど広々とした、最高級の空間。バルコニーからはティル・ナ・ノーグの夜景が一望でき、テーブルの上にはリゾート特製の高級スイーツやスナックが所狭しと並べられていた。


「さあ、やるわよ! 負けた人には、愛先輩特製の“秘密の質問”に答えてもらうからね!」


愛先輩がトランプを鮮やかな手つきでシャッフルする。浴衣の袖をまくり上げ、やる気満々の愛先輩の姿に、三人の少年たちは生唾を飲み込んだ。

最初のゲームは"ババ抜き"。

しかし、ただのババ抜きではない。愛先輩という存在の前で、醜態は晒せないというプライドと、彼女からの“秘密の質問”への恐怖と期待が入り混じる、極限の心理戦だ。


「……タケル、お前顔に出すぎだぞ。左端のカードだろう?」

「うるせぇケン! お前こそ、さっきから指先が微かに震えてるぜ!」


ジョーカーが回るたびに一喜一憂し、部屋には笑い声と叫び声が響く。

結果、最初の敗者は――モンタだった。


「ひ、ひえぇ……。愛先輩、お手柔らかに……」

「ふふっ、じゃあ質問。モンタくん、この学校で一番()()()()()()()って思う女の子は、だーれだ?」


愛先輩の悪戯っぽい問いかけに、モンタは一瞬でゆでダコのように真っ赤になった。


「そ、そ、そりゃあ……!!」


チラリと目の前の愛先輩を見て、慌てて視線を逸らし、最後には「コーヒー牛乳が……美味しかったっす……」と意味不明な供述を繰り返し、一同の爆笑を誘った。


続くゲームは、ケンの提案による“大富豪”。

ここではケンの冷静な戦略が光るかと思いきや、運を味方につけたタケルが“革命”を起こし、下剋上の嵐が吹き荒れる。

愛先輩も負けじと応戦し、時には「ねえ、そのカード出さないでよ〜」と上目遣いで甘える一幕も。そのたびにモンタの思考回路はショート寸前まで追い込まれた。


「っしゃあ! 革命返しだ! これで俺が富豪に返り咲きだぜ!」


タケルの威勢のいい声が響き、テーブルには叩きつけられたカードが踊る。しかし、愛先輩は余裕の笑みを崩さない。


「フッフッフ、そう来ると思った。はい、ジョーカー。これで上がり!」

「げぇっ!? 持ってたのかよ!」

「ふふっ、勝負の世界は甘くないのよ。さあ、次はタケルくん。“秘密の質問”の時間よ?」


愛先輩は少し身を乗り出し、浴衣の隙間から覗く白い鎖骨を無防備に晒しながら、タケルの耳元で囁くように問いかけた。


「タケルくんって、意外と情熱的よね。……ねえ、もし好きな子と二人きりでこんな夜を過ごすなら、どんな言葉で"好き"って伝えるのか、ここで実演してみて?」


「な、なっ……ッ///!? そ、そんなの……///!!」


直球すぎる質問に、タケルの顔面が爆発した。ケンが横で「へぇー、それは興味深いね」とメガネを光らせ、モンタは「タケル、お前の勇姿を忘れないぜ……」と拝んでいる。


結局、タケルは窓に向かって「……つ、月が、綺麗だろーー///!!」と精一杯のキザな台詞を叫び、そのままバルコニーに逃げ出して頭を冷やす羽目になった。


そして最後に行われたのは、記憶力が試される"神経衰弱"。


愛先輩は「次は私が負けそうね〜…」なんて言いながら、愛先輩は伏せられたカードをめくるたび、あざとく首を傾げる。


「ええと、これは……スペードのクイーンだから? ……あ、違った。ねえ、モンタくん、さっきの場所、教えてくれない?」 

潤んだ瞳で見つめられたモンタは、一瞬思考が停止した。


「……右から三番目です。……あ」


モンタが、つい、正解を口走る。


「ありがとう! モンタくん、頼りになるね」


愛先輩は確信犯的なウィンクを飛ばし、次々とペアを揃えていく。


「あーあ、私の全勝ね! みんな、お疲れ様〜♪」


愛先輩は満足げに伸びをすると、乱れた浴衣の襟元を直し、少しだけ真面目な顔をして三人を見つめた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――数時間後、四人はゲームを一段落し、冷たいフルーツジュースでカンッと、乾杯する四人。

バルコニーから吹き込む夜風が、少し火照った体を心地よく冷やしてくれる。

そんな愛先輩はふと、夜の海を見つめながら、少しだけ声を落として呟いた。


「……ねえ、みんな。こうして遊べて、私、本当に嬉しいの」


彼女は浴衣の襟元を少しだけ気にしながら、自嘲気味に微笑む。 


「学校にいる時、男子の視線が……なんていうか、その。中身の私じゃなくて、どうしても()()()()()()()()()()ばかり、見てるのが分かっちゃうのよね。変に色っぽく見られたり、発育のことばかり意識されたりして……正直、疲れちゃうこともあるんだ〜」


愛は少し俯き、豊かな胸元を隠すように腕を組んだ。


「でも、あなた達、三人といると、そんなの気にしないで、笑っていられる気がするの。……まあ、モンタくんはちょっと怪しいけどね?」

「え"っ!? ぐ、ぐふっ……すんません〜…!」


図星を突かれたモンタが項垂れる中、タケルが勢いよく立ち上がった。


「愛先輩、そんなの気にするなよ! 俺たちは別に先輩がどんな格好してようが、いつも通りこうして遊んでるしさ」

「……そうですね。僕たちにとっては、中身も外見も、尊敬できる素敵な先輩に関して変わりません。それにまわりの男子から、どう見られようが気にしない方がいいと僕は思いますね。変に気にして意識してしまうよりはそっちの方が良いかと」


ケンの静かなフォローに、愛は驚いたように目を見開き、やがて今日一番の柔らかな笑顔を見せた。


「…ふふ、ありがとう。二人とも」


愛先輩はそう言い満開の笑みを三人の前で見せた――。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


それから四人で楽しく雑談している間、時計の針が夜の23時を回る頃、三人は名残惜しそうに立ち上がった。


「あーあ、楽しすぎて時間が溶けちまったな〜」

「愛先輩、本当にありがとうございました」

「こちらこそ。明日はいよいよビーチね。楽しい思い出にしましょう!」


愛先輩に見送られ、三人は静まり返った廊下を歩いて自分たちの部屋へと戻った。

部屋に入るなり、タケルはベッドにダイブし、モンタは「もう死んでもいい……」と幸せの余韻に浸っている。

ケンは一人、窓際の椅子に腰掛け、スマホを手に取った。


【ケン】:『夜遅くにすみません。さっきまで友達と遊んでいました』


送信して数秒。画面の端に『既読』の文字が灯る。少しして、花見さんからの返信が届いた。


【花見】:『ふふ、賑やかなのは良いことよ(人•͈ᴗ•͈)♪』


すると画面に追加で添えられた写真が送られてきて、そこには夜のキャンプ場でパチパチとはぜる焚き火の火花が写っていた。


【ケン】:『リーリアさんは、キャンプを楽しめていますか?そちらの夜は、こちらよりも静かなんでしょうね』


【花見】:『ええ、とても。今は少しだけみんなから離れて、星を見ています。木々のざわめきと火の粉の音が、なんだか子守唄みたい。石谷くんの方でもリゾートの夜景も、きっとその火花のように綺麗なのでしょうね』


【ケン】:『はい。でも、僕にはリーリアさんが見ている星空の方が、ずっと贅沢に思えます。……明日も、良い一日になりますように。おやすみなさい、リーリアさん』


【花見】:『ええ、おやすみなさい。良い夢を』


返信はそこで途絶えたが、最後に送られてきた「おやすみなさい」という言葉が、ケンの心に心地よい重みを残した。

彼は一度だけ深く息を吐き、静かにスマートフォンの電源を落とした。


それだけでケンの心は穏やかに満たされた。


三人はパジャマに着替え、ケンが「じゃあ、電気消すよ」と言い照明を落とす。


タケルの規則正しい寝息と、モンタの幸せそうな寝言。

三人は、楽しいリゾートでの時間を過ごしたことを来て良かったと、三人揃って内心そう思いながら、深い眠りへと落ちていった。


――だが…その時。


彼らが眠るホテルの地下、分厚いコンクリートの向こう側では、紫の双眸が闇の中で再びゆっくりと開かれた。

捕食の準備は、すでに整いつつあった。






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