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超次元勇士ゾーンG(グレート)ロボ  作者: 道化師
ティル・ナ・ノーグ編
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13/45

ゴールデンウィークの予定と愛先輩からのお誘い

次元獣ガボラスとの死闘から、数日が経過した――。


櫻魅耶さくらみや市の朝は、かつての平穏を取り戻したかのように見えた。しかし、街の至る所にはあの日、巨大な鋼鉄の拳が次元獣を粉砕したという消えない興奮が燻っている。

テレビを付ければ、自衛隊の公式発表として「"次元獣"」および「"ゾーンGグレートロボ"」という名称が連日報道され、SNSでは市民が撮影した不鮮明な戦闘動画が数百万回再生されていた。


「……あれから、ぱったりだな」


五時間目の休み時間。タケルは窓の外を眺めながら、ボソッと呟いた。


「何がだい?」


ケンが眼鏡を拭きながら聞き返す。


「次元獣だよ。ガボラスを倒してから、ブレスも静かなもんだろ? 」


タケルがそう言うと、ケンは溜め息をついて眼鏡をかけ直した。


「……油断は禁物だよ、タケル。確かにあれから"次元獣"が現れなくなったのは確かだけど、けど場合によっちゃ、突然、出現する可能性だって、あるかもしれないんだから」

「そんなことより、タケル君、ケン君! 聞いた? みんな()()()()()()()()()の予定で持ちきりだよ!」


タケルとケンの会話にモンタが興奮気味に割って入った。ふと、タケルは教室を見渡すと、クラスの皆、ゴールデンウィークの休みの事で何を過ごすのか、話を弾みながら浮足立っていた。


「けっ、良いよなー皆、予定があってよ。俺は特にこれと言った、予定もねぇし…」


タケルが愚痴を苦笑いした、その時だった――。


「ふふ、三人とも、相変わらず仲良しね」


突然、廊下側の窓から涼やかな声が響いた。

三人が一斉に振り向くと、そこには6年生のフロアからわざわざ降りてきたらしい、灰坂愛が立っていた。春風に揺れるピンク色の髪と、5年生の女子にはない大人びた微笑みに、教室内の一部の男子たちがザワりと色めき立つ。


「あ、愛先輩! どうしたんですか、わざわざ下の階まで」


タケルが少し照れくさそうに立ち上がる。


「ええ。ちょっと三人に聞きたいことがあって」


愛は窓枠に肘をつき、少し身を乗り出した。その仕草で、体操服とはまた違う、ブラウス越しの柔らかな曲線が強調される。


「みんな、ゴールデンウィークの予定は決まった? もし良かったらなんだけど……私と一緒に『“リゾートアイランド・ティル・ナ・ノーグ”』に行かない?」

「えっ、愛先輩と旅行!?///」


モンタが真っ赤になり、椅子から転げ落ちそうになる。


「そうなの。久しぶりに海外出張から帰ってきたお母さんが、招待券を沢山、貰ったらしくて。お父さんは仕事でどうしても外せないみたいだから、一人で行くのも寂しいし……三人さえ良ければ、招待するわよ」


愛の母親。それは灰坂大佐の妻であり、世界的な研究機関に属する科学者であるという噂がある。


「ティル・ナ……何だって?」


タケルが首を傾げる。


「『“ティル・ナ・ノーグ”』だよ、タケル」


ケンが眼鏡をクイと押し上げ、即座にフォローに入った。


「先輩、ありがとうございます。少し相談させてください」

「ええ、いい返事を待ってるわね」


愛はウインクを一つ残し、軽やかな足取りで廊下を去って行った。


愛先輩の姿が見えなくなった後も、タケルはまだ、口をポカンとしていた。


「……『“ティル・ナ・ノーグ”』って、要するに海があるところだよな? 」

「……タケル、君というやつは」


ケンが深い溜め息をつく。


「いいかい、今回、愛先輩に誘われたのは、櫻魅耶湾のはるか南方に位置する、本来、僕らみたいな民間の人は自由に参加するが厳しく制限されているんだ。チケットを持っている人のみが許されているリゾートアイランド――それが特区『“ティル・ナ・ノーグ”』だ。最新の海洋エネルギー研究施設と、超高級ホテルが一体化した、世界中のセレブが憧れる場所なんだよ」


ケンは机の横に掛けているレッスンバックからタブレットを取り出し、タケルにタブレットを操作した後、画面を見せた。


「へぇ~世界中のセレブが憧れる場所……。そんなに凄いとこなのかよ」


タケルはケンの差し出したタブレットを覗き込んだ。そこには、エメラルドグリーンの海に浮かぶ、まるで未来都市のような人工島の俯瞰図が映し出されていた。中心には巨大なタワーがそびえ立ち、周囲には白い砂浜と超近代的なヴィラが並んでいる。


「凄い!僕たちそんなリゾートに行けるんだね、タケル君!」


モンタが椅子をガタつかせて食い入るように画面を見る。


「あっ、この建物テレビで見たことあるよ。一泊するだけで、僕たちの数ヶ月分のお小遣いが飛んでいくような場所だよ。そこに行けるなんて、夢みたいだ……!」

「……ふん。単に贅沢をしに行くわけじゃないよ」


ケンは指先で画面をスワイプし、島の地下構造と思われる複雑な図面を表示させた。


「この『“ティル・ナ・ノーグ”』は、表向きはリゾートだけど、実態は海洋エネルギーの実験特区だ。愛先輩のお母さんは確か科学者だから、何かそれに関わっている仕事をしているならば、おそらくそこに最新の観測データが集まっているはずだ」

「か、観測データ?なぁ、 それって、"次元獣"の……か?」


タケルの目が鋭くなる。


「うん。もしかしたらその可能性は高いね。"次元獣"が現れる際、空間の歪みと共に莫大なエネルギーが放出される。海洋施設なら、海流や水圧の変化から予兆を掴んでいるかもしれない。僕たちがそこへ行くことは、単なる休暇じゃなく、"次元獣"の出没パターンを知る絶好のチャンスでもある」


「へへ……なるほどな。流石ケン、ただ遊ぶだけじゃねえってわけか!」


タケルはニヤリと笑い、右拳を左の手のひらに叩きつけた。


「よし! 決まりだ。愛先輩には『"行く"』って伝えようぜ!」

「だね」

「やったー!」


こうしてタケル、ケン、モンタの三人は話し合いをしたのち、次の休み時間に愛先輩に行く事を伝えた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


キーンコーンカーンコーン……。


六時間目の体育のチャイムが鳴り響く。今日の授業は体育館でのドッジボールだ。


普段なら「だりぃな」と零すタケルだったが、リゾートへの招待ですっかりエンジンがかかっていた。


「よーし! リゾートに行く前に、俺たちのコンビネーションを磨いとくぞ!」

「おーっ!!」


タケルとモンタが気合を入れる中、ケンだけは「ドッジボールにコンビネーションも何もないと思うけどね……」と呆れ顔で後に続いた。

体育館は、5年生の活気で満ちていた。


「おい、タケル! 今日は手加減しねえぞ!」


クラスの男子が叫びながらボールを投げる。


「へっ、当たるかよ!」


タケルは野生的な反射神経でボールをかわし、そのまま隣のモンタへパスを送る。


「モンタ、いけッ!」

「任せて! ……これぞ、バースト・パンチ直伝のシュートだぁッ!!」 


モンタが全力で放ったボールは、空気を切り裂くような轟音を立てて相手チームのコートに突き刺さった。当たったわけではないが、その風圧に相手は腰を抜かしている。


「……二人とも、目立ちすぎだよ」


ケンは飛んできたボールを冷静にキャッチし、わざと外野の死角へ緩やかなボールを送った。


「休息の前に、余計な怪我は禁物だ。……それにしても、モンタ君。君の筋力、また上がってるんじゃないか?」

「あ、あはは……そうかな。なんだか、腕が勝手に軽く感じちゃって」


モンタは照れ臭そうに頭を掻くが、その視線は無意識に、体育館の入り口付近を通る上級生の姿を探している。愛先輩に「すごいね」と言われる自分を妄想するだけでモンタ自身、自覚がなく無意識に湧き上がっているのだ。


「いや……モンタ君、それにしちゃ、今の球はちょっと……いや、かなり危なかったよ」


ケンが苦笑いしながら指摘すると、モンタは「あ、ごめんごめん! ちょっと気合が入りすぎちゃった!」と頭をかいて謝った。先ほどの豪速球は、あくまで「気合」の結果。実際に相手に当たっていたら、今頃保健室送りだったかもしれない。


「よーし! 次は俺が決める! ケン、パスだ!」


タケルが前線で手を振る。ケンは「やれやれ」と肩をすくめながらも、相手の守備の隙間を縫うような、地味だが正確なパスをタケルへと放った。


「もらったぁ!」


タケルが大きく振りかぶる。対峙するのは、クラスでも運動神経が良いことで知られるマサトだ。


「こいよ、タケル! 聞いたぜあの、灰坂先輩からリゾートに誘われたってな!そんな浮かれ野郎に負けてたまるかよ!」


「うるせぇ! 」


タケルが全力で投げたボールは、鋭い軌道を描いてマサトの足元を襲う。しかし、マサトもさるもの、間一髪でジャンプして回避した。


「甘いぜ!」

「ちっ、かわされたか!」


体育館の床をキュッキュッと鳴らし、男子たちが入り乱れる。女子たちのコートからも「キャーッ!」という歓声や「狙いなさいよ!」という気合の入った声が聞こえてくる。


「ピッー! 前半終了、入れ替えだ!」

先生の笛の音が響き、一同は一旦コートの外へ。タケルたちは備え付けの冷水機へと群がった。


「ぷはぁーっ! 生き返るぜ……。なぁ、ケン。今の俺のフェイント、結構効いてたろ?」

「そうだね。でも、後半はもっとスタミナを温存したほうがいい。さっきから無駄な動きが多いよ」

ケンはタオルで汗を拭きながら、冷静に分析する。

「マサトたちのチームは、外野にボールが渡った瞬間に一気に攻めてくる。あっちの連携のほうが、今のところ『コンビネーション』と呼ぶにふさわしいね」

「むぅ……。モンタ、後半は俺が囮になる。お前はその隙に、確実に一人ずつ仕留めていけ」

「わかったよ、タケル君! 僕、頑張るよ!」


モンタはグッと拳を握りしめる。その視線は、体育館の入り口のほうへチラリと向いた。


(もし、愛先輩が通りかかって、僕が活躍してるところを見てくれたら……!)


そんな淡い期待が、彼の平凡な運動能力を少しだけ底上げしていた。


後半戦が始まると、試合はさらに白熱した。

マサトの鋭いシュートが、タケルたちのチームの仲間を次々と外野へ送っていく。ついにコートに残ったのは、タケル、ケン、モンタの三人だけになった。


「ひひっ、追い詰めたぜ! 年貢の納め時だな!」


マサトがボールを弄びながらニヤリと笑う。


「やってみろよ! 俺たち三人は、そう簡単にやられねえぞ!」


タケルが身構える。

右からマサトのシュート。タケルはそれを横っ飛びで回避。

左から別の男子のシュート。ケンが膝をついてギリギリで避ける。

正面から高く浮いたボール。モンタがどっしりと構えて、腹で受け止めるようにしてがっちりとキャッチした。


「ナイス、モンタ!」

「今だ、投げ返せ!」


モンタはキャッチした勢いのまま、一番近くにいたマサトへ向けてボールを放った。


「うわっ、近すぎ――」


ボフッ!


マサトの胸元にボールが命中し、彼は勢いよく尻餅をついた。


「セーフ! ……あ、いや、アウトか!」


マサトは苦笑いしながら手を挙げ、外野へと向かった。


「よっしゃぁ! 逆転の兆しだぜ!」


タケルがモンタとハイタッチを交わす。


――その後、一進一退の攻防が続いたが、最後は時間切れの笛が鳴った。結果はわずかな人数差でタケルたちのチームの勝利となった。


「あー、疲れた……。でも、いい運動になったな」 

「そうだね。……リゾートに行く前に、少し体力をつけておくのは理にかなっているよ」


タケルとケンは、並んで更衣室へ向かう。モンタはまだ興奮が冷めないのか、「今のキャッチ、凄かったよね!?」とクラスメイトたちに囲まれて自慢話をしていた。

更衣室で着替えを済ませ、教室に戻ると、すでに終礼の準備が始まっていた。

担任の先生が「ゴールデンウィーク中に事故に遭わないように」と口酸っぱく注意しているが、タケルたちの耳には半分も入っていない。

三人の頭の中にあるのは、青い海、白い砂浜、そして――。


「さようなら!」


元気な挨拶とともに、放課後のチャイムが校内に鳴り響き、一日の授業がすべて終わり。


「よし! ケン、モンタ! 帰るぞ!」

「あ、待ってよタケル君! 忘れ物した!」


ドタバタと準備を済ませ、タケル、ケン、モンタ、三人は夕焼けに染まり始めた、廊下へと駆け出して行った。




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