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超次元勇士ゾーンG(グレート)ロボ  作者: 道化師
選ばれし三人の勇士編
10/23

死闘!第二発電所防衛戦!

――深夜0時10分、櫻魅耶さくらみや第二発電所。


昨夜の襲撃を受け、現場は物々しい空気に包まれていた。敷地内を埋め尽くすのは、最新鋭の10式戦車と、低く唸りを上げる対空自衛設備の列。指揮車両のモニターを見つめる東部方面隊の指揮官、灰坂大佐は、眉間に深い皺を寄せていた。


「灰坂大佐、未確認の電磁波ノイズが急上昇しています! 座標、発電所上空200……いや、150メートル!」

「何だと……? 航空機か?」


灰坂が叫ぶよりも速く、夜空が「裂けた」。


物理法則を無視し、鏡が砕けるような音と共に紫色の亀裂が走る。そこから、重力に逆らうようにして、あの異形――“次元獣”が這い出してきたのだ。


「……バカな。空中に穴が空いただと!?」


灰坂の驚愕を余所に、次元獣はその図太い四肢で大地を踏みしめた。


ドォォォォォンッ!


衝撃波で付近の車両が数メートル吹き飛ぶ。


「各員、報告にあった例の“未確認巨大生物”だ! 目標、上空より現れた未確認巨大生物! 第二発電所をこれ以上蹂躙させるな! 全門、撃てッ!!」


灰坂の号令が無線を駆け巡る。


「こちら第一戦車小隊! 徹甲弾、装填完了! 放てッ!」


10式戦車の主砲が一斉に火を噴いた。夜の闇をオレンジ色の閃光が切り裂き、“次元獣”の胴体へと吸い込まれる。

だが、着弾の直前。次元獣の首元にある6枚の赤いヒレが瞬時に展開し、頭部と胸部を包み込むように閉じた。


ガキィィィィィィィンッ!!


鋼鉄をも貫くはずの砲弾が、まるでゴムボールのように弾き返される。


「嘘だろ!? 直撃だぞ! ビクともしねえ!」

「落ち着け! 履帯を狙え! 足を止めろ!」


地上では戦車隊が必死の射撃を繰り返し、上空からはAH-64D戦闘ヘリが機関砲とヘルファイア・ミサイルを浴びせる。夜空を埋め尽くす曳光弾の筋が、次元獣の姿を不気味に浮かび上がらせた。


「ギガァ"ア"ア"ァ"ア"ア"ァ"ッ!!」


“次元獣”が鬱陶しそうに吼える。それは反撃の合図だった。

閉じられていた赤いヒレがわずかに開き、その隙間から青白い放電現象が漏れ出す。


「来るぞ! 回避――」


無線が途切れる。次元獣が背中から伸ばした帯電するつるが、まるで鞭のようにしなり、低空飛行していた戦闘ヘリを叩き落とした。爆炎が夜空を染める。


「第三小隊、応答しろ! ……クソッ、化け物め!」

「灰坂大佐! 戦車二両が踏みつぶされました! 攻撃が通りません! 奴は止まらずに発電所の主トランスへ向かっています!」


戦場は修羅場と化した。自衛隊の誇る近代兵器も、電気エネルギーを糧とする怪物には致命傷を与えられない。“次元獣”は無数の弾丸を浴びながらも、まるで散歩でもしているかのように、着実に発電所の中心部へと歩を進めていた。


――だが…。


その様子を、遥か上空の雲海の中から、三つの影が見守っていた。


「……酷いな。自衛隊の最新兵器でも、あのヒレの装甲は抜けないのか」

ケンの冷静な声が、通信回線を通してタケルとモンタに届く。


「見てらんねえよ……。アイツ、もう発電所のすぐそこまで行っちまってるじゃねえか!」


タケルが操縦桿を握りしめる手に力を込める。


「タケル君、 今行かないと、今度は僕たちが住んでる街が真っ暗になっちゃうよ!」


モンタの悲痛な叫びが響く。

“次元獣”が右足を上げ、第二発電所の主制御棟を踏みつぶそうとした、その瞬間だった。


「にっひひひ♪ ここからは俺たちの出番だぜッ!」

夜空から、一筋の紅い閃光が突き刺さるように降下してきた。

フレア・ストライカーの機首から放たれた熱線が、“次元獣”の目の前の地面を爆破し、その足を一時的に止めさせる。

地上で絶望に呑まれかけていた灰坂大佐が、呆然と空を見上げた。


「……何だ? あれは…!」

「ケン、モンタ! 合体だ! 第二発電所を壊させてたまるかってんだ!」


三機の次元マシーンが、サーチライトの光を浴びながら複雑に交差する。

深夜の戦場に、黄金の輝きが満ち溢れた。


「「「合体! ゾーンG(グレート)ロボッ!!」」」


指揮車両の中で、灰坂大佐はモニターを凝視したまま言葉を失った。情報部から“謎の巨大ロボット”の存在は報告されていたが、まさか実際に自分の目の前で謎の三機のメカが巨大な人型ロボットへと姿を変える事に驚愕していた。


「ん〜〜〜よし、決まったぜ! ケン、モンタ! あいつの名前、首のヒレがガボガボしてるから、“次元獣ガボラス”って名前をつけるぜ!」


コックピットの中で、腕を組みながら、目の前の次元獣を見て考えていたタケルが勢いよくそう叫んだ。


「……タケル、ネーミングセンスが絶望的だよ。ガボガボって何だい? それに、今は命名より作戦を――」


ケンが呆れたようにツッコミを入れるが、その横からモンタの弾んだ声が割り込む。


「いいよタケル君!“次元獣 ガボラス”、なんだか強そうでカッコいいよ!」

「だろ? よし、"ガボラス"! 櫻魅耶の電気をこれ以上食わせねぇぞ!」 


しかし、“次元獣ガボラス”は彼らの会話をあざ笑うかのように、巨大な前足で発電所の中心部にある高圧電線を直接掴み取った。


バリバリバリッ!!


凄まじい放電現象が起き、ガボラスの体内へ莫大な電流が流れ込む。それと同時に、閉じられた6枚の赤いヒレから半透明の電磁シールドが展開され、ガボラスの巨躯を包み込んだ。


「させるかよ! 内部カタパルト始動! "バトルアックス"、射出ッ!!」


タケルがペダルを踏み込む。ゾーンGロボの背部装甲が展開し、巨大な斧が、電磁カタパルトによって夜空へとはじき出された。空中で激しく回転しながら斧の柄を、ゾーンG(グレート)ロボはそれをガシッ!と掴み取る。


「一気に叩き切る! 先手必勝だぁーッ!!」


加速の勢いのまま、ゾーンGロボは地面を爆砕して跳躍。大上段からバトルアックスをガボラスの脳天へと振り下ろした。


ガギィ"ィ"ィ"ィ"ィ"ィ"ィ"ン"ッ!!!


凄まじい金属音と火花が、深夜の街を真昼のように照らし出す。しかし、ガボラスの頑丈なヒレと電磁シールドは、必殺の斧を正面から受け止めた。刃はヒレの表面を滑り、火花を散らすだけで、傷一つ負わせることができない。


「くっそ、コイツのヒレ、いくらんなんでも硬すぎるだろ! 斧が弾かれちまう!」


タケルの焦りの声。ガボラスは首を振り、電磁エネルギーを帯びた頭突きでゾーンGロボを吹き飛ばそうとする。


「タケル君、正面はダメだ! あのシールド、電気を吸ってどんどん硬くなってる!」

「わかってる! ケン、モンタ、力押しでいくぞ!」


タケルはバトルアックスをいったん地面に深く突き刺し、武器を捨てて身軽になった。そのまま噴射ノズルを全開にし、ガボラスの側面を高速で掠めて背後へと回り込む。


「これ以上、発電所を壊させない……。捕まえたよ!」


モンタの操作するアイアン・グラップラーのパワーが全開になる。ゾーンG(グレート)ロボの両腕が、ガボラスの太く長い尻尾をガッチリと掴み取った。


「どけえええええッ!!」


ゾーンG(グレート)ロボの足裏のブースターが火を噴き、アスファルトを深く抉り取る。ロボットの巨躯が後ろへと仰け反り、凄まじいパワーでガボラスを第二発電所から引き離そうと引っ張る。


「グォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ン"ッ!」


ガボラスは電線を離すまいと四肢で地面を掴むが、ゾーンG(グレート)ロボの出力がわずかに上回った。ズズズ……と、数十トンの“次元獣ガボラス”が引きずられ、発電所の重要施設から数メートル、距離が空く。

その光景を、灰坂大佐は固唾を呑んで見つめていた。


「……信じられん。あの、巨大生物を力でねじ伏せようというのか。あの巨大ロボットは……!」


戦火の中、鋼鉄の巨人と異次元の獣の、文字通りの"力比べ"が始まった。櫻魅耶の夜は、まだ終わらない。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「グオ"ォ"オ"ォ"オ"ォ"オ"ン"ッ!!」


第二発電所の中心部から引きずり出された次元獣ガボラスが、怒りに狂った咆哮を上げた。

己の食卓(電線)を奪われた屈辱に、その六枚の赤いヒレが、脈動するような赤黒い光から、一転して激しい青白きスパークへと変化する。


「来るぞ! 衝撃に備えて!!」


ケンの叫びと同時に、ガボラスの全身から全方向に向けた超高圧の放電攻撃が放たれた。 


バリバリバリィィィィィンッ!!


夜空を真昼のように変える巨大な電光が、ガボラスを羽交い締めにしていたゾーンGロボを直撃する。


「うわあああああッ!!」


コックピット内に火花が散り、タケルたちの体に強烈なGと電気刺激が走る。


「くっ……! 回路が焼ける……!」

「タケル君、離しちゃダメだ……! 今離したら、また発電所が……!」

「…わかって、るって…!…くっ……!」


モンタが歯を食いしばり、必死に操縦桿を握りしめる。機体各所の絶縁装甲が悲鳴を上げ、煙が立ち上る。


「警告、過負荷電流! メインシステム、ダウンまであと15秒!」


無機質なアラートが響く中、ケンは震える指先でキーボードを叩き、全エネルギーを中和回路へと回した。


「……なんとか、システムダウンは免れたけど……。でも、このままじゃジリ貧だよ!」


ガボラスはなおも放電を続け、ゾーンG(グレート)ロボの装甲を焼き焦がしていく。至近距離での先行攻撃を許し、身動きが取れない最悪の状況。その光景を遠くから灰坂大佐率いる自衛隊も、あまりの電磁嵐に近づくことすらできず、遠巻きに戦況を見守るしかなかった。


「タケル! あのガボラスを倒す、 打つ手ならあるよ!」


ケンがコンソールを叩きながら、急速に機体のエネルギーバイパスを書き換えていく。


「打つ手って……あんなカッチカチのヒレに、何が効くってんだよ!」

「通常の攻撃じゃ無理だ。だから、内部から叩き潰す。……タケル、『バースト・グレネード・パンチ』を使うんだ!」

「ば、バースト……なんだって? もっとわかりやすく、 教えてくれ!」


タケルの問いに、ケンは思考を加速させ、最短の言葉で解説を叩き込む。


「いいかい、腕部のスラスターを瞬間的に限界まで"爆発"させて、拳の加速を物理限界まで引き上げるんだ。そして着弾の瞬間、拳の装甲内に仕込まれた衝撃波発生装置をゼロ距離で開放する。外側のヒレが硬くても、その衝撃波は内部の肉体と神経を直接粉砕できるはずだ!」

「へへっ、なるほどな! つまり、外がカテェなら中身を壊せやすりゃいいんだろ? 分かりやすくていいじゃねえか!」


タケルが不敵に笑い、操縦桿を握り直した。


「チャンスは一度だけ。ガボラスが攻撃のためにヒレを大きく開く瞬間……再び閉じようとするその数秒の隙間に、拳を叩き込む!」

「いい条件は二つ。一つは、奴が電気を吸うためにヒレを開く瞬間を狙うこと。もう一つは、それまで奴を"第二発電所"に一歩も近づけないことだからね!」


ケンはタケルにもう一度念押しをかけるように説明をする。


「わかってるって! そんじゃあ、ここから“プロレスの時間”だぜ!行くぜモンタ!」

「任せて! 押し出すよ!」


ゾーンGロボが立ち上がる。タケルは地面に突き刺していた"バトルアックス"を再び手に取った。だが、今は斬るためではない。


「逃がさねえぞ、ガボラス!」


ゾーンG(グレート)ロボはガボラスの突進を真っ向から受け止めると、バトルアックスの柄をガボラスの硬い6枚のヒレを受け止め、力任せに横へと投げ飛ばした。

ズゥゥゥゥンッ! と大地が揺れる。


「よし、お次はこれだぁー!」


タケルはガボラスが起き上がる前にその背後に回り込み、巨体をがっしりと抱え込んだ。


「モンタ、出力を右足に回せ! バックドロップだッ!!」

「わかった!よーし、 パワー全開!」


全高50メートルあるゾーンG(グレート)ロボが、同じく巨体のガボラスを抱え上げ、反り投げる!

夜空にガボラスの巨体が舞い、自衛隊のキャンプ近くの荒地に叩きつけられた。


「おおぉ……し、信じられん…!?なんて、戦いなんだ!」


灰坂大佐は双眼鏡を落としそうになりながら叫ぶ。自衛隊員達も、目の前で繰り広げられる()()()()()()()()()に、もはや射撃を忘れて見入っていた。

ガボラスは何度も発電所へと這い寄ろうとするが、その度にゾーンG(グレート)ロボがタックルをかまし、首投げを食らわせ、力ずくで押し戻す。


「ハァ、ハァ……。しつけえ野郎だ……。ケン、まだか!?」

「あと、もう少し……!よし、チェック完了。タケル、奴の体内の電気が空になった。来るよ!」


ガボラスが再び電気を補給しようと、本能的に首の6枚のヒレを大きく開いた6枚ヒレの中に隠されていた、ガボラスの素顔は、目が小さく、口が大きく裂けた爬虫類や昆虫を思わせるような顔が露わに。


「グォ"オ"オ"ォ"ォ"オ"オ"…!!」

「今だよ、タケルッ!!」


ケンの叫びが合図になった。


タケルはガボラスを突き放し、拳を腰だめに引いた。


ゾーンG(グレート)ロボの右腕にあるスラスターユニットが、オレンジ色の火線を吹き出す。エネルギーゲージが限界を超え、真紅に染まる。


「これでおさらばだあああッ!!」


タケルは魂を込めて、その必殺技の名を、櫻魅耶の夜空へ向かって熱く吠えた。


「いけぇええええええッ!! バァアァアァスト・グレネェエェドォォォ・パァアァアァンチッ!!!」


ズォォォォォンッ!!


空気が爆ぜた。


超加速された右拳が、ガボラスのヒレが閉じる寸前、その「"喉元"」へと吸い込まれるように着弾した。

次の瞬間、拳から放たれた高周波衝撃波がガボラスの体内を駆け巡る。


「貫けえぇえぇええぇぇえぇえーーッ!!!!」


ドガァァァァァァァァァンッ!!!


ガボラスの背中から、どす黒いエネルギーが噴き出した。内部からの連続爆破に耐えきれず、ガボラスの巨躯が内側から膨れ上がり、ついには無数の光の破片となって爆散した。

静寂が戻った発電所に、右腕から白い煙を上げるゾーンGロボの勇姿だけが立ち尽くしていた。


「ハァ…ハァ…や、やった。やったぞ!」


タケルが大きく息を吐く。

地上では、灰坂大佐がその圧倒的な幕切れに、敬礼することさえ忘れて立ち尽くしていた。


「し、信じられん……。わが自衛隊の総戦力をもってしても傷一つ負わせられなかった、あの巨大生物を……。あの巨大ロボットが…」


灰坂大佐は、煙を吐き出す巨大ロボットをじっと見つめた。

その胸に去来するのは、自衛官としての敗北感か、あるいはこの街を救った存在への感謝か。

灰坂大佐は、煙の中に消えていこうとする紅き巨人の影を、いつまでもその目に焼き付けていた。

櫻魅耶の夜は更け、やがて来る朝がすべてを白日の下に晒す前に、巨大ロボットは夜霧の向こうへとその姿を消したのだった――。


 








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