そらまめのそらもよう 〜episode14 銀祭〜
おだやかな秋の夕暮れ、
大きなイチョウの木の下に、
畑の仲間たちが集まっていました。
にんじん、タマネギ、じゃがいも、ネギ、
トマト、はくさい、きゃべつ、栗、えんどう豆、そして、そらまめ。
皆それぞれ、体の大きさに合ったカゴを背おっていました。
はくさいやキャベツのカゴは、とっても大きいのですが、
栗やそらまめが背おったカゴは、とても小さいです。
えんどう豆たちは、体が小さすぎるので、
3つぶで1つのカゴをかかえていました。
みんな今か今かと、そわそわしながら、
高いイチョウの木を見上げています。
すると、ゆらゆらとイチョウの葉っぱが
次々に舞い降りはじめました。
よく見ると、イチョウの葉には、それぞれ1つずつのギンナンがくっついています。
サーフィンのように乗っかったり、
パラシュートのようにぶら下がったり、
ゆりかごのようにねっころがったりしています。
ギンナンを乗せた葉っぱは、
あっちへゆらゆら、こっちへゆらゆら
あっちへぐるぐる、こっちへぐるぐる
バラバラの方向に落ちてきます。
野菜たちは、カゴの中にギンナンをいれようと、走り回りました。
イチョウの木の下は、
無数に舞い降りる葉っぱと、
それを追いかける野菜たちで、
ワサワサしています。
その様子に気づいた鳥たちが、
葉っぱの中にわりこんできました。
キャアキャア、ギャアギャアと飛び回り、
うるさくてたまりません。
そらまめとえんどう豆たちは、あわてて
カゴをかぶってかくれました。
かくれていては、ギンナン取りに遅れをとってしまいますが、仕方ありません。
しばらくして、鳥たちが邪魔をするのに飽きていってしまうと、
そらまめたちは、カゴから出て、
ギンナン取りにもどりました。
なにせギンナンは無数に落ちてくるのです。
キャベツやはくさいのカゴは、
ギンナンでいっぱいになっていました。
そらまめもがんばりますが、
カゴが小さいので、なかなかうまく入りません。
やがて走り回っているのは、
そらまめだけになりました。
最後の葉っぱが落ちてきます。
乗っていたギンナンが、口笛をふいて
そらまめに合図を送ります。
もっとこっち、もっとこっち、
そこそこ、ストップ!
みたいな感じでしょうか。
実際には、しゃべってませんけどね。
そしてそして、最後のギンナンが
スポッと、そらまめのカゴに入りました。
そらまめとギンナンは、
ハイタッチをしてよろこびました。
見ていた野菜たちも、ギンナンたちも
思わず拍手を送りました。
畑の仲間たちにとっては、
秋の一日の楽しいイベントだったんですね。




