勇者の力の不適切な使用法
結婚式まで、あと二か月。
アカタイトとの貿易が始まった。
チハラサの援護がすごすぎて、こちらは出された書類を見てチェックしたり、話したりするだけだ。
学園計画のことも相談に乗ってもらったり、以前話した特許のことも、うちの国でも使うことだからと具体案をまとめてもらったりした。
魔王より親身! しかも内情が分かってるのに隅々まで気が利く! ということで、最近はよく相談に行っている。
「なんか寄り添い方が凄いし、もしかして、チハラサさんってミューのこと好きなのかな」
「既婚者だし、それはないよ。でもありがたいよね」
「ドロテアもすごく手伝ってくれてるし、自分から見て既婚者かは関係ないから分かんないんだよな」
「まぁミユが大変なのは可哀想だし、僕としては邪まな感じじゃなければ問題ないかな」
昼休みの食事をしながら、四人で話す。
最近は寂しいのか、お昼にアンリがやってくるようになった。
「ゾーイもミユのことをやましい目で見てないって言ったけど、最初から邪まだったから安心はできない」
「別に、邪まだったわけじゃ……いや、邪まだったな。結婚前には寝てるユキにキスしたし」
「は、いつ?」
アンリが驚きながらゾーイを見る。
リツキは止まっていて、私もなに言ってるんだとゾーイを見た。
「貴族裁判の前。ユキは知ってるよ。意識させようと思って教えたからね」
「ミユ! なんでこっちに秘密にした?」
「だって……怒るし。家とかも入れられなくなるし、そうなったら仕事も困るなとか……」
「それはそうだろ。そんなヤツ家には入れらんねーよ。ミューって、なんだかんだ言ってるけど、ゾーイのことマジで最初から受け入れるつもりだったんじゃん。俺には女と話すの怒るのにさぁ! なんなんだ」
「違うよ。でもゾーイはいなくなったら悲しいし……リツキが男と話したからって怒らないよ……」
「俺にはミューみたいに同性を受け入れる度量はないの! 女だって浮気する気がないっていうのにさぁ!」
「ミユは最近、僕がコイツに黒い虫を貰って食べてるのを邪まな目で見てるから、おかしくなったんだ」
「そ、そんなことないよ」
けど、勇者の力を食べている時のアンリはちょっとセンシティブで見ていて楽しい。
あの小説を読んでから、ちょっと自分の中でそういうアンリもアリになってしまった。怖いことだ。
恥ずかしいことに、そういう欲が顔に出ているんだと思う。
「えっ、俺の力でこいつをひぃひぃ言わせるところが見たいんだ? 俺はミューがそうなった方が見たいよ。怒られるからやらないけど」
「僕もミユなら見たいけど、僕がそういう目にあうのは嫌だからミユにもしない」
「したら二人共ちょんぎるから」
本当にやるぞという顔をして見せると、三人は笑う。
「でも、リツキンのその力を買ってる奴が変な使い方してるって聞いたことあるな」
「えっ、そうなの?」
勇者の力はプチっと手で分けられるけど、瓶からとりだしたまま食べようとしたら、動くスライムみたいな感じで確かにやましいことにも使えそうだ。
でも、かなり高額だから、治療以外じゃもったいないと思う。
「僕もそれは把握してるから注意書きとかにも書いてあるよ」
「まぁ他人に使うなら問題だけど、高いから本人が使うんだろうし、どっから入れても吸収されるからいるだろうな。変態はどこにでもいる」
「ウィリアムソンなら絵になるけど、どっかのおっさんじゃ見たって事故だなぁ」
ゾーイがぼんやりと言うと、アンリは嫌そうな顔をしながら目を閉じた。
「僕を巻きこむな。神官は内臓を治すのが上手くないし、不調に効くから食べてるだけ」
「そうだよコイツは小さくないと怒る。だから鳥みたいに小さいのを毎日あげてる。でもミューは俺が食べてても欲情しない。なんでだ」
「リツキは普通の顔して喰いちぎって食べてるから可哀想になる」
「心なんてないのに」
リツキはフランスパンのような大きさの勇者の力を出して、ガブッとかみつく。
ぜんぜん色気がない。アンリを見習ってほしい。
「まぁ、チハラサさんがユキを好きでも嫌いでも、どっちも国王だからどうにもならないから安心だ」
話題を切り替えるようにゾーイが言った。
そういえばアカタイトの話をしていたんだった。
「そういえばね、アカタイトはそのうち電気を作れるようになるらしいよ」
「へぇ~。まぁ、原油と鉛とゴムがあるんだろ? 電気が作れるなら、そのうち大国になるだろうな」
「電気ってそんなに凄い?」
リツキの言葉に、アンリが質問をする。
「電気を使うことで、民間人でも神聖力みたいなことができるようになる。便利になるよ」
「そうなんだ。じゃあミユがいることで貿易というか、ほぼ自分の国みたいに使えてる契約だし、すごく有利だね」
「私もそう思ってドロテアに話したら、神聖国に有利すぎない?って言ってた。魔族領の契約は普通で神聖国だけ有利なんだって」
「そりゃミューが国を助けたからね。魔族領は関係ない。あとミューが可愛いから助けたくなるのはしょうがない」
「両翼って言ってたし、実はチハラサさんって国同士の結婚くらいで考えてたりしてね」
ゾーイの言葉に、他の二人はまさかという顔をする。
たぶん三人は私を絡めて考えているんだろうけど、チハラサさんは王族が腐ってても一人でこの国を守ってきた人なんだから、私は関係ないと思う。
「今まで死にそうになってまで神聖国を守ろうとしていたんだから、私じゃなくて、国自体を大切に想っているんだと思うよ」
「確かに。初めて会った時は、過労死しそうだったもんな」
ゾーイが細く笑い、つられて思い出したのかリツキも笑う。
「ま、あの裏切らなそうだし仲良くしといて損はないな」
「アカタイトからの薬の注文も増えてるし、薬は電気が関係なさそうだから安心だ。近いうちに支店も作ろう」
アンリが楽しそうに笑う。
なんだかんだ、チハラサと連絡がとれるのは、私にとって楽だし間違いがない。
人助けって自分のためにもなるんだなぁと思う今日この頃だった。
なんか投稿し忘れてたらしいのでアップします。本編が終わった後にこれってどうなんだ……と思っている。




