第四幕.出立
「そんで村長。話ってのはなんだ?」
村長について行き、家から少し離れたところで俺と村長は向かい合った。
「なに、そんなに変なことではない。警戒せんでも良い。」
そう言った村長は衝撃的なことを言った。
「実はお主を王都に生かそうかと思ってな。いや、正式には行かせなくてはならないのだがな。」
「…は?」
「騎士団の団長直々の命令なのじゃ。逆らえないぞ。」
「えーと、どうして俺なんだ?」
俺じゃなくともゼファーとか実力者はいるだろうに。
「簡単なことよ。お主が決闘を制したからじゃ。明後日には出発してもらうから荷物の準備をしておきなさい。」
いきなりすぎるだろこの爺さん。にしても王都か。一度行ってみたいとは思っていたが、こんな形で行くことになるとは。
「わかったよ村長さん。王都に行くよ。それで俺は何をしに呼ばれたんだ?」
「実はな、王都の近衛騎士団に加わってほしいとのことなんじゃ。ほれお主闘いの才能があるじゃろ?それを十二分に発揮してほしいんじゃ。」
「なるほどなぁ。」
確かに俺は実際に闘うだけにしても色んな戦術を持っている。実力もイズナがいる限りは補填できる。しかし…
「俺には体力があまり無いが、それでも良いのか?」
「構わんじゃろ。妖気さえあればどうとでもなるのが今の世の中。そしてこの世界じゃ。」
「まぁそういうことにしといてやる。出発は明後日だろ?準備はしとくよ。」
「何百年ぶりのこの村からの推薦枠じゃ。楽しみにしておるぞ。」
そう言われ静かに頷いたあと、俺は家に帰った。
そうして、それから2日の時が過ぎた。
「いよいよ、今日出発か」
俺は薬など最低限の荷物と金銭の入った麻袋を手に取り、家をたった。
道中、村長とゼファーが見送りに来た。
「カエデよ、気をつけて行くのじゃぞ。」
「あぁ、今までありがとう村長さん。俺の親代わりになってくれて本当にありがとう。」
「なんの、息子が一人増えたくらいどうってこと無い。胸を張って王都で暴れてこい。」
「そうだよ。僕に勝ったのに王都でボコボコにされるのは勘弁してね。」
「ゼファー。この村のことを頼んだぞ。」
「任せて欲しい。絶対この村は守るよ。」
ゼファーはにこりと笑いそう言った。
「んじゃ、ちょっくら行ってくるわ。またいずれ帰ってくるから首を長くして待ってな。」
「達者でな、カエデ」
「カエデ、あっさり帰ってこないでね!」
「また会おう。」
そう言い残し、俺は村を去った。
これから俺の身に何が起こるのか分からないが楽しみながら生きよう。
『主よ。道中気をつけるんじゃぞ。賊だったり魔物はうじゃうじゃいるからな。』
「イズナがいればとりあえずは大丈夫だろ。」
『それは嬉しい言葉じゃが、少しは主の力も試さないとな。』
「は?」
『主よ、妾は1ヶ月くらい眠ることにする。力を蓄えさせていただこう。それまでお主自身の力で頑張るんじゃぞ。』
「え、俺妖力なしでどう戦えと?」
『バカを申せ。その身体はなんのためにあるんじゃ。肉弾戦で勝ってみせよ。それに村長から小刀をもらったであろう。』
「これ小刀って名前なんだな。また古い名前だこと。よくこんなん村長も持ってるもんだ。」
『まぁそういうことじゃ。しばし頑張るんじゃぞー。』
イズナはそう言って眠り始めた。こりゃ起きそうにない。
「はぁ…一人で頑張るか。」
「なに一人でぺちゃくちゃ喋ってんだ?」
うわー最悪だー。賊来たよ。よりにもよってこんなタイミングでかよ。
「悪いことは言わねぇ荷物置いてどっかいきな」
「断る、てか急いでるからどいてくれ。」
「あぁ?なめた小僧だ!」
賊が俺に飛びかかってきたが、あまりにも遅すぎた。
「遅い!」
俺は賊に思いっきしケリを入れた。すると賊が泡吹いて倒れてしまった。
「やべぇやりすぎた。」
てか、賊って案外弱いんだな。あっさり倒せた。
「お、こいつ地図持ってんじゃん。貰っちゃお。…えーとここから王都までは…遠くね?てか、ドラゴンの巣通らないと行けないの?めんどくせぇ。」
仕方がないので俺は王都まで歩いて向かうことにした。