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第一幕.出自

 これはまだ俺が幼い頃の話である。

 俺は田舎と呼ばれる所に住んでいた。決して豊かとは言えなかったがそれなりに楽しく暮らしていた。そんなある日、俺は父親から衝撃的な事を告げられた。俺は"妖"の儀式においてどの妖怪も憑いてくれなかったのだという。いや正確には恐怖で憑いてくれなかったらしい。こんな事は初めてだったので村全体で俺を庇護することになったのだとか。

 あの日、近所の子供達と遊んでいた。かくれんぼなる遊びをしようと誘われ俺は隠れる側になった。絶対に見つかりたくなかった。だからあの森に近づいた。大人たちから絶対入ってはならないと言われていたが負けたくはないためそこに隠れることにした。森に入るとなにか神秘的な雰囲気をか持ち出していた。まるでなにかの守護霊に守られているかのような感じだった。

「ここは一体どういう場所なんだろー」

 俺はその時皆目見当もつかなかった。少し進むと大きな赤いもんのようなものがあった。お貴族様のような門ではなく扉がなくただ枠があるだけの門らしき何かだった。その奥には古びた建物があった。門をくぐり抜けるとどこからともなく声が聞こえてきた。

『誰だ。我に近づく者は。まさか王ではあるまいな。』

「え…誰…?どこにいるの…?」

 俺は声の主を問いただした。

『なぬ。子どもがこのような所で何をしている。ここは魔族も多く危険な場所だぞ。一刻も早く立ち去るのだ。』

「ま…まぞく…?そんなに怖いの…?」

『あぁ、とても恐ろしい異形な者たちだ。』

 俺はそれを聞き立ちすくんでしまった。そんな時後ろからうめき声のような声が聞こえた。

『ちぃ…早く逃げろと言っただろうが小僧!』

 声の主はウルフだった。それも一匹ではなく群れだった。俺は恐怖で動くことができなかった。

『おい小僧。貴様"妖"の儀式は済ませたか?』

「やったんだけど…妖怪達がボクのことを怖がって近づいてくれなかった…」

『なんと…我のいない間にそのようなことが…安心せぇ小僧この建物にいる限りは奴らは近づけん。ただ帰るためには離れなくてはならんな。』

「ボクは一体どうしたら良いの…?」

『わしと契を結べ。そうすれば助けてやろう。……そろそろ時が来るしのぉ』

「分かった。じゃあ儀式をやろう。ボクは何をすれば良いの?」

『何もしなくても良いわしがちとそちらに行くだけだ。』

「え、それってどういう…」

 俺が言ったのと同時に周囲が光に包まれた。

「いやぁこちらの世界に来るのは久しぶりだなぁ。よう小僧会うのは初めてじゃな」

「え…どういうことなの…」

 俺の目の前にはあの伝承上の九尾に似た人が立っていた。それも男ではなく女性だった。

「おやおや、びっくりしておるのぉ。男でも出てくると思ったか?人の伝承とはトンチンカンなものよのぉ。そんじゃわしが九尾。その中でもあの悪しき王を封印したと伝わっている九尾の親方じゃ。」

 俺はこの時とんでもない契約をしたのかもしれなかった。

「えっと、ボクは何をしたら良いの?てか本当にあの親方様なの?」

「お主はわしを使役してくれれば良い。方法は自ずと分かってくるであろう。」

 その時俺の頭の中になにか不思議な感覚があった。やり方は分からないのに、膨大な知識だけが頭の中に入ってくる。そしてその知識にそってウルフ達と戦うことにした。

「憑依〜九尾〜!」

「良くぞ言ってくれた!小童!」

 俺の体から火が出た。最初は何が起きてるのか分からなかったがまるで熱くない火であった。むしろ温かい。

「これが…あの九尾の力…!」

『まだ全力とまでは行かないまでも、それなりには力は使えるな。』

「え?!九尾様どこに行ったの?」

『ワッパに憑依したで主の脳内に話しかけている。安心せぇ死んだりはしておらん。そんなことよりあの狼を打ち倒すことだけを考えよ』

「わ…わかった!」

 俺は頭に入ってきた知識を頼りに術を出すことにした。意識がもうろうとしており、術が何なのかも分からないがとにかくやってみることにした。

「火術!紅蓮の業火!」

 当たり一面が火で燃え尽くされた。ウルフのうちリーダーのような一匹が燃え尽くされた。それを見たウルフ達は一目散に逃げていった。

「す…凄い…これがあの九尾親方の力…!」

『どうじゃ?気に入ったか?』

 その瞬間憑依が解消され九尾の親方様が俺の目の前に現れた。

「まぁ、妾とてこれ以上の力を持っている。これからも精進すると良い。では妾は主の中で眠るとするかのぉ。…そう言えば主の名前をまだ聞いとらんかったのぉ。名は何というのじゃ?」

「カエデミコトだよ。」

「そうかミコトか。良き名じゃ。では世話になるぞミコトよ。」

 そう言い九尾は目の前から炎を出して消えた。その時村の村長さんの声が聞こえてきた。

「おーい!ミコトー!どこだー?!」

「あれ、おじさん?」

「おぉ!ミコトよ!無事であったか?!ケガはないか?」

「うん!九尾様が助けてくれた!」

「なんと!九尾様ありがとうございます。わが村の子を守っていただき本当にありがとうございます。」

「あ!あとね!九尾様ボクに憑いてくれたの!」

「おぉそうか憑いてくれ…憑いてくれた?!!!!どういうことじゃ!説明せぇ!」

 俺はあらかた何があったか話した。常時興奮していたが村長さんは真面目に聞いてくれた。

「そうか、九尾様がカエデに。そりゃ何という事じゃ。急いで国に報告せねば。カエデは今日は家に帰ってゆっくり休みなさい。この事はだれにも言ってはならぬぞ。」

「分かったよ、村長さん。」

 そうして俺は九尾の親方を使役し村へと帰っていった。

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