序章2
人の治めていた世はそれはそれは荒れた乱世だった。当時治めていた王が亡くなったあと残された息子たちにより大陸が四分割されてしまった。自分が本当の王と信じてやまなかった四人の息子たちにより大陸は争いが絶えないところになってしまった。しかし、妖怪達はそれを見過ごす他なかった。人間に取り憑いていなければ自らを保てないからである。なぜか。その昔封印された魔王により呪をかけられてしまったからである。人間達は自らの力で争う力を手に入れてしまった。妖怪達は呪術を使うための駒でしかなかった。それでも妖怪達はいずれ生まれてくる正しい心を持った善人が現れるのを待つことにした。
しかし、人間にそそのかされ悪しき道へ進んでいく妖怪が次第に現れるようになった。褒美としてその妖怪は王直属の部下となった。こうして妖怪と人間の関係は構築されていったのである。呪術を使う者、家系が妖怪の力を頼り、使わない者、家系は妖怪の力を頼らず自らの力を磨いていった。妖怪がこの世を統治する時代は少なくともこの大陸からは消えていった。四人の息子たちの話に戻そう。四人の息子たちはそれぞれ国を作った。
長男は自らの力を過剰に信じず謙虚に国を作っていった。国民の意思を尊重するいわゆる民主主義の国を作っていくことになった。長男自身は妖怪の力を借りている、借りさせていただいているとして、妖怪に対し最大の敬意を払うことを義務化した。しかし、妖怪からしてみれば、これは善人なのではなく甘すぎるだけであるとのことである。しかし人間であるため、寿命が来てしまった。そうして長男は国民皆に尊ばれながらこの世の平安を祈り亡くなっていった。
次男は自らの力に自信過剰になってしまうような人間であった。妖怪の力など信じず、あくまでも自分の力を信じ突き進むのが我々の役目であるとして、剣そして武術を極める国家にしていった。いわゆる武力国家である。妖怪の力は緊急時しか借りない。そうでない時は妖怪など必要ないとして迫害はしなかったがそこまで大事に扱われなかった。そうしてこの国では妖怪を使う人間などそうそういない国家となってしまった。ただ、いい面もあり次男はとにかく明るい人物であったため街は活気づいており大陸一明るい国として有名になっていった。
三男は自分に自信がない男であった。上二人の力が圧倒的であり、自らに力はないと自負していた。そんな三男に最後まで付き従った執事がいた。その男は三男に自らの国を上二人のように作ることを助言した。そうでないと、上二人に殺されるとして国を作らせた。しかし、三男は自信があまりにもないため自らで国を運営できるのか不安であった。執事が代わりに国家を運営することになったが、そんな中でも三男はある一つのことだけは厳守することを命じた。それは何があっても国民の生活が第一であることだった。そこで執事は農業を栄えさせようと考えた。そうして今では大陸一の農業大国となった。
四男はまるで中身が見えない男であった。上三人が拒否した森に近い場所を自ら進んで選択したのである。三人は怪しんだが自分達はそこに近づきたくないため譲った。四男の作った国はとにかく妖怪を働かせ、迫害の多い国であった。妖怪は自らが生きていくために必要な駒の一つでしか無い。闇の魔法の使えない妖怪はいらない。そして四男はこの国の情報は外に流してはならないと宣言をした。そうしてこの国は大陸一情報の無い国家として知られれ行くこととなった。