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第八幕.国王との決闘

 そうして当日の早朝、俺は城の闘技場にやってきた。

「なぁ、イズナ。」

『なんじゃ主よ。」

「俺はこの戦いに勝てると思うか?相手は龍の能力を持っている。そんなやつに勝てるのか?」

『九尾の親方の力を侮るでないぞ。龍なんぞ妾の後に生まれた若輩者よ。』

「そうか。…よし!頑張ろう!」

『そのいきじゃ主よ。』

 イズナと話していると国王レオニス・マンドナがきた。ガチガチに防具を着ていた。

「ふん、ビビらずに来たその勇気だけは褒めてやる。だがしかし!余の龍の力には勝てないということを証明してやろう!」

「マンドナ様くれぐれも油断はなさらずにお願いしますよ。」

 自信たっぷりにそう言ったマンドナに対し、執事が釘を刺したかのように言った。

「これで負けてしまわれたら国王としての威厳に関わって参りますからな。」

「大丈夫だと言っているだろ。余が負けることなどあり得ない!」

 すんごい自信あるなぁ。びっくりしちゃうよ。

「では両者準備はよろしいですか?」

 どうやら執事さんが審判をするらしい。この人なら不正はしないであろう。

「勝負は公平に行きましょう。ルールは、どちらかが降参を申し出る、もしくはこちらが戦闘不能と判断した場合のみとします。よろしいですかな?」

「ええ、大丈夫ですよ。」

「それでよい。」

「では、決闘開始!」


「憑依~青龍翠蘭~」


 マンドナの周囲を水が囲った。…ん?水だと?

『…分が悪いとはこのことかのぉ。水はどうにも相性が悪い。」

「いや、大丈夫だ。俺に考えがある。」


「憑依~炎獸九尾~」


 俺の周囲を炎が囲った。しかしこれではダメだ。さらに一体とならなければ本来の力を発揮できない。

『やめておけ主よ。あれは妖気を大量に用い、なおかつ使用者に莫大な負担がかかる。最終奥義としてとっておけ。』

「わかった。とりあえず、この状態で戦ってみる。」

 俺は周囲に火炎の魔方陣をたくさん呼び出し、炎の妖術を放った。

 しかし、マンドナのところに届く前に全て煙となってしまった。

「はっ!なんだ九尾の能力も大したことないなぁ!こちらからも行かせてもらうぞ!」

 そう言い、マンドナは自らの周囲に水の柱を作りこちら目掛けて放ってきた。俺は必死に避けはするが攻撃ができなかった。

「ちぃ!これじゃ上手く近寄れねぇ。」

 だが、青龍の能力はなんとなく分かってきた。水をあれは無限に出せる。あれが厄介だ。なんとかして隙を作るしかない。

「おいおいどうした!古龍を倒したのだはなかったのか?」

『主よ、遠距離では危険だ。なんとかして近寄れはしないか?』

「今やっているが、隙をなんとかした作らなければ。ゆっくりに見えているとはいえ、柱の量が多すぎて近づけやしない。一度死ぬのは手だがあまり手の内は知られたくない。」

「なにをぼそぼそ話しているんだ!」

 マンドナは高速で懐まで潜り込み拳を打ち込もうとしていた。俺は間一髪で防御できはしたが後ろに押し込まれた。

「ちぃ!これならどうだ!」

 俺は地面に炎の妖術を使い空に飛び、攻撃をなんとか避けた。

「ほぉ!面白い!面白いぞカエデミコト!」

 マンドナは狂喜の笑みを浮かべておりまだまだ余裕そうだった。 

「まだまだやれますよ!かかってきな国王陛下!」

「小癪なぁ!」

 マンドナは剣を抜き、水の妖術をまとわせ始めた。

「これで決めさせてもらおうか!さぁ炎の妖術を使っているが、はたして水で切られたらどうなるかなぁ!その前に霧を張らせてもらおう。


 水術~濃霧~」


 辺り一面を霧が包みどこにマンドナがいるのか分からなかった。

「どこにいったんだ…?周りが全く見えない。」

 気配を必死に探知しようとしたが全く感じられなかった。その時、後ろに気配を感じた。

「そこか!」

「残念。上だよ!」

 上を向くとマンドナが剣を振りかざし切りかかってきた。間一髪で避けられたが、マンドナはまた気配を消し、姿を見失った。

『主よ、こうなったときどうしたら言いと思う?」

「とにかく気配を探知するしかないのか?」

 飛んでくる水の妖術を交わしながらイズナからの問いに答える。

『確かにそれも悪くはない。しかし、おそらくこの霧は使用者以外から気配探知を奪う。そうすると今のようになる。ならばじゃ、霧の性質を逆手にとろう。霧というのは高温の炎により加熱すると薄くなったり消えたりする。』

「なるほど…そういうことか!ありがとうイズナ!」

『なんの、まだまだお主は戦いの経験が浅い。このくらいはせねば主の身が滅ぶからな。カッカッカッ!』

 笑いながらエグいこと言ってるよこの狐。まぁとりあえずやってみますか。


「炎術~爆熱放射~」


 俺は高温の炎の柱を作り出した。そうするとみるみる内に霧が薄くなりマンドナの姿が見えるようになった。

「なっ!貴様一体どうやって!」

「そんな呑気に敵の手の内を聞いている暇があるんですか?!こちらから仕掛けますよ!」

 俺は炎の妖術をマンドナ相手に浴びせるが全て消失する。

「なるほどな。陛下の周りには水の結界が張ってある。これでは炎の妖術は通らないってことですか。」

「バレたなら隠す必要はないな。そうだ、俺の周りには水の結界を張ってある。そうそうのことでは壊れはしない!」

 霧が高温で消えたってことは、その集合体であるはずの水も同じなはず。

「では今からその結界を壊し、貴方に勝ってしんぜますよ!」

「やれるものならやってみろ!


 ~結界強化~」

 結界がさらに厚くなった気がした。全力で行かなければおそらく壊すことはできないであろう。

「よし、ここだ!イズナ!力を貸してくれ!」

『任せろ主よ!』


「『炎術・秘技~憑依一体~』」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 私は長年、レオニス王家を支えてきた。なんせ私は天狗であるがために長寿であるからだ。今まで数多くの王を支えてきたが、ここまで意地っ張りな王に会ったのは初代国王以来である。その初代国王を諌めたのは、なんとあの九尾の親方、イズナ殿であった。イズナ殿はその後、悪しき魔王を封印し、眠りにつくと申していたが、目覚めたという情報が届いた時は驚いた。しかも人の子に仕えたと聞いたらもう腰を抜かした。イズナ殿が人に仕えるとは思いもしなかった。その人の子が王都に来ると聞き、ならば古龍の巣に行くのではと思い、あえて第三騎士団を行かせたが成功であった。そして、城に呼び、イズナ殿を使役した子はどんな子なのか楽しみにしていたが、普通の子であった。なんの変哲もない人の子だった。なぜイズナ殿はこんな子をと考えていた時、陛下が出した霧を見事に消し去ったではないか。イズナ殿からの助言はあったであろうが、それを瞬時に行動に移せる。これはただの信頼関係ではないと感じた。

「これはもしかしたら…」

 そう言葉をこぼした時、カエデ殿が、否カエデ殿と聞こえないはずのイズナ殿の声が重なりあい、こう聞こえた。


「『炎術・秘技~憑依一体~』」


 憑依一体と言えば、イズナ殿がその昔考え抜いた秘術。その負担はでかく、並みの人間であれば耐えられないはず。そんなことを考えていると、カエデ殿が炎に包まれ中にいたのはカエデ殿らしき人…いやあれは人ではないな。人狐だ。まさか…!

「天狗の執事、天影殿。久しぶりじゃのぉ。」

「…そのしゃべり方、そなたはイズナ殿か?」

「カッカッカッ!相変わらず固いのぉ!旧友の再開だというのに。」

 旧友…か。その表現が正しいかは分からないが何千年振りだろうなぁ。

「あぁ?爺、こいつのこいつのこと知ってんのか?てかこいつ誰?」

「陛下、この方は九尾の親方であり、私の古い友人イズナ殿ですぞ。この前お話したでしょう?」

「なんだと?なぜカエデの元にいるのだ。」

「あやつが妾を目覚めさせたからな。何千年と寝た妾を起こしたのだ。面白いやつじゃと思ってなぁ。そんなことよりお主足元をよく見てみろ?」

「はぁ?」

「気付かぬ内に結界を壊しておいたで、足元に火が昇っておるなぁ。」

「なんだと?!」

 なんと?!私にも気付かぬ早さで壊れているとは…やはりイズナ殿は侮れない存在よ。もうすでにイズナ殿の周囲には炎の魔方陣がたかれている。

「さぁおとなしく降参するか、完膚なきまでに倒されるか選べ。」

 そう冷酷にイズナ殿は宣言した。マンドナ様は一体なんと言うか気になるな。

「余が負ける?そんなことあり得ない!あり得ては行けない!こやつが不正をしたんだ!こやつを罰しろ!」

「陛下。」

「あぁ?!」

「此度の勝負このまま行くと陛下の負けにございます。お諦めください。」

「しかし!」

「死にますぞ。それでもよろしいのなら私は止めません。イズナ殿なら許されるでありましょう。」

 残酷にマンドナ様にそう告げた。しばらく経ち、マンドナ様が一言告げた。

「余の、負けだ。殺すのだけは勘弁してくれ。」

「よろしい。妾も武装を解除しよう。」

 イズナ殿から光が放たれ、カエデ殿に姿が戻った。

「うっ…ここは…?」

「カエデ殿、あなたの勝ちです。憑依一体は体への負担がひどいです。部屋をご用意します。そちらで休んでください。」

 カエデ殿を部屋まで案内するように部下に伝え、私は陛下の元に歩み寄った。

「陛下。」

「なぁ、天影。なぜ余は負けたのだと思う?」

「その慢性的な余裕と油断でしょうな。」

「ハハッ…余裕と油断か…。父上はこれを見てなんと言われるかな。」 

「今は亡き、先代国王陛下がですか?」

 あのお方ならなんと言うか、厳しいお方だから負けたことに叱責するか、はたまた息子の敗けを認めないか。私は考え抜き、一つの結論を出した。

「おそらく、正々堂々戦われたことを称賛するでしょうな。しかし、怠慢は指摘されるかと。」

「ハハッ…そうか。怠慢を指摘されるか…。なぁ天影、余は強くなれるのか?」

「ええ、強くなれますな。カエデ殿は異次元の強さを持っておられる。しかし、貴方には青龍の力がある。素質はあるでしょうな。」

「そうか…。よし、決めた。余は強くなる。誰にも負けないほどな。油断も怠慢もしない立派な国王となろう!」

「その意気ですぞ陛下。」

「では公務を終えなければな。爺、手伝ってはくれるか?」

「ええ、手伝いますぞ。」

 そう私が言うと、陛下は立ち上がり、「行くぞ」と言って歩いていった。

 イズナ殿、またあなたのお陰で一人の国王が改心なされましたぞ。そう思うと、なぜかイズナ殿のドヤ顔が頭に思い浮かび、少し笑ってしまった。

「ん?なにを笑っている?」

「いえ、特には」 

「くだらないこと考えてないで行くぞ!」

 そう言われ、陛下の後ろを着いていき、今日の公務を始めるために執務室に向かっていった。



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