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第七幕.王都

 あれから一週間が経った。どうやら第三騎士団の皆さんが王都まで送ってくれるらしい。本当にありがたいね、もう食料も尽きそうだったし良かった。

 今俺は馬車に乗り、王都に向かっていた。

「カエデ。」

 イザベラ・グランツ団長が話しかけてきた。

「どうしましたか?イザベラ団長。」

「聞き忘れていたから聞くが、どうして王都に向かっていたんだ?」

 あーやっぱり気になりますよね。正直に答えますか。

「騎士団振り分け試験を受けるためです。俺の村で決闘をして誰が行くかを決めるらしかったんですけど、俺が優勝したので行くことになりました。」

「なるほどな。…まぁそら勝つか。」

「何か言いました?」

「いや、なんでもない。」

 なにか言いたげだったが、気にしないでおこう。

「団長ー!そろそろ着きますよー!」

「あぁ分かった。ではカエデ、王都を見る準備は良いか?」

「もちろんだ!楽しみで仕方ない!」

「ハッハッハッ!愉快なやつだ!」

 俺そんな変なこと言ったかな。

 それから一時間くらいイザベラ団長と雑談をした。

「団長!着きましたよ!」

 すると到着したのか団員の一人が声をかけてきた。

「着いたな、さぁ降りよう。」

「はい!」

 俺は馬車から降りた。

「うわっまぶし。」

 眩しくて目を閉じてしまったが目を開けるとそこには、

「どうだカエデ。これが我が蒼穹王国(そうきゅうおうこく)王国の首都清明京(せいめいきょう)だ!」

 ここがあの清明京!噂には聞いていたが本当に華やかな街だ!

 そこはまるで水の上に浮かぶかのような都だった。無数の 朱塗りの回廊 が、幾重にも折れ曲がりながら水上を巡り、その間に楼閣や神殿のような建物が立ち並んでいる。柱の赤は、昼の光に照らされてなお鮮やかであった。

 満潮の今、水は静かに揺らめきながら回廊の足元すれすれまで迫っている。波に映る 朱の柱の影 は、もう一つの世界が水中に広がっているような錯覚を生み、時折、風に揺られては形を変えていく。その様子はまるで、都そのものが生きているかのようだった。

 人々は水上の道を行き交い、商人たちは小舟を漕いで店先へと品を運ぶ。どこかから祭囃子のような鈴の音が聞こえ、風に乗って潮の香りが漂ってきた。そんなとき、あるものが目に入った。

「イザベラ団長、あれはなんでしょうか?なにか霊魂のようなものが」

「あれは清明京ならではの光景であろうな。実はあれは妖怪の部類なんだ。」

「妖怪?!これが噂に聞いた妖怪と共存する街ですか!」

 すごい、本当に妖怪が人間と仲良く暮らしている。今までこんな景色を見たことがなかったからびっくりした。

「カエデ、少し着いてきて欲しいところがある。」

 イザベラ団長にそう言われ、俺は特に断る理由もないので着いていくことにした。

「ええ、大丈夫ですよ。行きましょう。」

 そうしてイザベラ団長に着いていくとなぜか城に連れていかれた。お城は回廊に囲まれるように建っており、石垣を積んで…ってそんなことええわ!なんで俺は謁見の間と呼ばれる所にいるんだ?

「カエデミコトよ、表をあげよ。」

 顔をあげるとそこには20代くらいの若い男がいた。常に笑みを浮かべており、どこか余裕すら感じられた。

「余がこの蒼穹王国、第20代国王レオニス・マンドナである。汝が古龍を倒したのか?

「いいえ、古龍は私が倒しました。」

 イザベラ団長がそう答えた。どうして団長が。

『妾がそうしろと命じたのじゃよ。』

 おお、久々登場イズナさん。そうなんだ。

「貴様は誰だ?」

「はっ!近衛第三騎士団団長イザベラ・グランツでございます。国王陛下。」

「ほぉ、あの第三騎士団の団長か。あり得なくはない話だな。てことは古龍というのも大したことないんだ。」

 国王陛下と呼ばれた人物は小馬鹿にするような感じで笑った。

「なんだ、古龍の言うやつも大した強さをもっていないんだなぁ!わざわざ国指定の魔物にしなくても良かったではないか!我の龍の方が随分強いと言うことが証明されたわけだ!」

 この人すごい自信家だなぁ。にしても龍の能力か初めて聞くな。

「お言葉ですが陛下。あの古龍は私一人では倒せずこの隣にいるカエデミコトと協力して倒しました。」

 え、イザベラさん?ここで話こっちにふります?

「ほぉ、なるほどな。我とどちらが強い?」

 うわー出たー。こういう質問上司にされるとなんて答えたら言いか分からないよね。イザベラ団長なら忖度して国王陛下と答えるだろうなぁ。

「はっ、言わせていただくと、ここにいるカエデミコトの方が数段も強いと思います。」

「…へ?」

 イザベラさん?!この人ついに言ったよ!それだけは言っちゃだめでしょ!

「…ほぉ??」 

 ほらこの人怒ってるよ!冷や汗かいてきたよ!

「カエデミコトよ。そなたと一戦やらせてはくれぬか?まさか断るわけないであろうなぁ?」

 …これ断ったら何かしらの罪には問われるよね。仕方ない。受けるか。

「分かりました。謹んで受けさせていただきます。しかし条件がございます。」

「ほぉ、余に条件を突きつけるか。面白い、申してみよ。」

「では、もし俺が陛下に勝利したら今度行われる騎士団振り分け試験を突破したことにしていただきたいです。無論どこの騎士団に所属しても文句は言いません。」

「面白い!俺に勝つだと?良いだろう。その条件を飲もう。」

「へ、陛下良いのですか?」

 側で控えていた執事らしき人が話しかけた。

「何がだ?爺。」

「あの試験は近衛騎士になるならば全員が受けなくてはならない試験。それを無しで通過となれば、受験者から避難の嵐ですぞ!」

「大丈夫だ。そもそも俺は負けないからな。」

「爺はどうなっても知りませんぞ。」

 そう言い、陛下と執事さんは謁見の間から出た。

 それから俺はイザベラ団長に宿を案内してもらった。

「イザベラ団長。何から何までありがとうございます。」

「良いんだ。それよりあの国王をぜひ倒して欲しい。あのお方は自信過剰が過ぎる。お灸を据えてやって欲しい。」

「それ大丈夫なんですかね。一国の国王がこんな旅人に倒されちゃって。」

「大丈夫だ。あの執事さんがどうにか事後処理は、してくれるからな」

 あの執事さん大変そうだなぁ。今度話してみたい。

「では私は公務があるゆえ、宿舎に戻る。決闘は明後日の朝だ。遅れることのないようにな。」

「はい!分かりました!ここまでありがとうございました!」

「武運を祈る。」

 イザベラ団長を見送り、俺は宿でゆっくり休むことにした。

 部屋に入りくつろいでいると、目の前に光の柱ができ、イズナの幻影が立っていた。

『主よ…大変なことになったな(笑)』

 イズナは笑いながらそう言っていた。

「笑っている場合かよ!どうしたら良いんだよぉ」

『まぁそう嘆くでない。妾がいる。しかし、あの長男の子孫が相手か…少し今までとは違う苦戦を強いられそうじゃな。』

「なぁその大昔にいた長男はどんなやつだったんだ?」

『あやつか?名前はレオニス・アズレア。それはそれは謙虚なやつじゃった。今の国王と違い自らの力を過信せず、妖と対話をし協力していこうという感じであった。だから今この国は妖と協力して暮らしておるのじゃろうな。』

「なるほどな。」

 今の国王陛下はなぜああなったんだ…。

『しかしレオニスも昔は少し自信過剰であったな。妾がボコボコにしてからは大人しくなったけどな。』

 てことはもしかして?

『まぁ、もしかしたら今回主がタコボコにすればあやつも変わるのかもしれないな。』

「よし、タコボコにしよう。」

 俺はそう決心をして明後日の決闘に備えることにした。

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