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Ep,2 新たな生活の始まり

Ep,2 新たな生活の始まり


眩しい光の中から意識が戻り始める。耳に届くのは、どこか懐かしく温かな声だ。


「…かわいい坊やね。元気に泣いてごらん。」


温もりに包まれた腕の中で、俺は小さな声を上げた。いや、正確には、泣かされた。自分の意思じゃなくても、赤ん坊の身体は本能で泣き叫ぶらしい。


「よしよし、元気な子だこと!」


その声の主は優しそうな女性だった。どこかほっとするような響きがある。どうやら俺は、赤ん坊として転生したらしい。神の言葉が現実になったことを、体感している。


目を開けてもぼんやりとした光景しか見えない。赤ん坊の視力は弱いと聞いたことがあるが、これほどまでにぼやけているとは。


「ルシル、大丈夫かい?頑張ったね。」


別の声が聞こえた。男の声だ。どうやらこれが俺の父親らしい。


「ええ、あなた。こんなにかわいい子が生まれてくれて…幸せよ。」


ふわっと抱かれる感触が変わり、次は男性の腕の中にいるようだ。


「この子の名前はどうしようか?」


「カイン。カインと名付けましょう。」


「いい名前だ。カイン、私たちの息子になってくれてありがとう。」


カイン。いい名前だな…


それにしても、泣くことしかできないのがもどかしい。体は小さく、力もない。この世界での最初の一歩は、完全に赤ん坊からのスタートらしい。


数週間後

日々はあっという間に過ぎていった。俺は母親であるルシルの腕に抱かれ、父親であるガレンの笑顔を見ながら成長している。赤ん坊の身体だからか、周りの言葉はほとんど理解できない。それでも、この家族が優しく、温かな愛情を注いでくれていることは感じ取れる。


「カイン、ほら、笑ってごらん!」


母さんの笑顔を見ると、自然に笑顔になれる。赤ん坊の俺にとって、それが精一杯の感謝の表現だ。


1年後

俺はようやく歩くことを覚えた。母さんと父さんは大喜びしてくれた。


「見て、ガレン!カインが一人で立ったわ!」


「すごいぞ、カイン!父さんは誇りに思うぞ!」


俺にとってはささやかな一歩だが、この世界でのスタートとしては大きな前進だ。


カインとしての人生が始まってから、3年が経った。小さな体ながらも、歩くことや話すことはすっかり板についてきた。周囲の人々は俺を温かく見守り、特に母さんと父さんの愛情は変わらず深い。


この家族は、村の郊外にある広い農地を所有しており、平和でのどかな日常が続いていた。俺はその中で、草の匂いや風の感触、太陽の暖かさといった、この世界の自然を存分に味わっている。


「カイン、ほら、この花を見てごらん。」


母さんは畑で摘んできた小さな花を俺に見せる。薄紫色の花びらが陽の光を浴びて輝いている。


「きれいだね、母さん!」


俺はまだ幼い声でそう答えた。この体での言葉遣いも、だいぶ自然にできるようになってきた。


「ええ、そうね。でも、この花には特別な力があるのよ。」


母さんは笑いながら花を軽く振り、俺の髪にそっと飾る。


「これが村に伝わる癒しの花なの。けがをしたり、病気になったときに煎じて飲むと、すぐに良くなるんですって。」


俺は花の香りを嗅ぎながら頷いた。この世界には、現実世界にはない植物や文化があるようだ。それを知るたびに、この世界への興味が膨らむ。


父さんの話

夕方、父さんが仕事を終えて帰ってくると、俺を膝の上に乗せて話をしてくれるのが日課だった。


「カイン、今日はどんな冒険をしたんだ?」


「えっとね、庭で虫を見つけたんだ。小さいけどピカピカ光るんだよ!」


俺が必死に説明すると、父さんは笑いながら頷いた。


「そいつはきっとスカラビットだな。この辺りでは珍しい虫だぞ。見つけたカインは探検家だな。」


探検家――その言葉に胸が高鳴る。この広い世界を知りたいという気持ちが、さらに強くなった。


「いつか、僕も父さんみたいに遠くまで行ける?」


俺の問いに、父さんは少しだけ考え込むような表情を見せたが、すぐに笑顔を返してくれた。


「もちろんだとも。ただし、力をつけることが大事だ。大きくなったら、もっとたくさんのことを教えてやるよ。」


父さんのその言葉に、俺は大きく頷いた。


村の暮らし

この村には、俺たちのような農家が多く住んでいる。村人たちはみな親切で、俺を見ると声をかけてくれる。


「カイン坊や、今日も元気かい?」


「おや、カインが一人で歩いてる!偉いねぇ。」


温かい声に包まれながら、俺は少しずつ村の中を歩く範囲を広げていった。


ある日、村の外れにある大きな木の下で、年配の男性と出会った。


「やあ、坊や。ここは危ない場所だよ。」


「え?でも、この木、すごく大きくてかっこいいね!」


「ふふ、そうだろう。この木は“エルダーグローブ”といって、村を守る象徴なんだ。」


そう言って、彼は俺に木の歴史を話してくれた。この村が大昔に竜から襲われたとき、この木が村人たちを守ったという伝説があるらしい。


俺はその話に夢中になり、この世界が持つ壮大な物語の一端に触れた気がした。


ここまで読んでくれてありがとうございました。

次回予告

カインの成長はさらに続きます。村の暮らしの中で、彼は初めての友人や新たな冒険を経験し、少しずつこの世界の仕組みに気付いていきます。そして、教会での「スキル判定」の日が近づきます…。

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