魔王が倒された話【掌編】
「おお、勇者よ! 死んでしまうとは情けない」
棺桶から起きたばかりで聞こえた第一声が、神官の男の嘲りの言葉で勇者はブチ切れた。
確かに、自分たちは魔王討伐の旅を始め、道半ばで野良魔物に負けて全滅してしまった。
だからと言って、城壁に守られた安全な町でぬくぬく暮らしている奴に言われたかない。
「情けないだと? なら、お前がやってみろよ」
不機嫌さを隠そうともせずに言い捨てる。
侮蔑の応酬に神殿内がしんと静まり返った。
同じように半裸で起き上がった女武闘家と女神官が焦っている。
「ほ、ほら、勇者様、そう言う事を言わないの!」
「そ、そうですよ! 神殿長様が蘇生してくれたのに」
勇者を窘める言葉ではあるが、その視線はチラチラとエルフの神殿長を向いている。
「……そうですね。失礼しました」
神殿長は勇者に頭を下げ、聖職の証である法衣を脱ぎ始める。
「勇者も倒れる事態ですから、もう、私が動いても良いのかも知れませんね。安心してください、功績はあなた方に譲りますよ。歴代の勇者と同じようにね……本当は、弱い者いじめは好きではないんですけどね」
鍛え抜かれた肉体を曝け出したエルフの神殿長は、唖然とする勇者を置いて神殿から出て行った。
――かくして、魔王は殴り倒され、世界は平和となった。