紅茶とクッキー
あるところに一人の少年が居ました。
その少年は、特別運動ができたり勉強ができるわけではありませんでしたが一つの特技がありました。
それは、どんな茶葉でも美味しい紅茶を淹れることができるというものです。
しかし、そんな彼だからこその重大な悩みがありました。
その悩みというのは美味しいクッキーを作ることができないというものです。
紅茶を淹れるなら紅茶に合うお菓子も自分で作りたい!
そう思い、少年は紅茶を飲むときに一緒に食べるものの定番とも言えるクッキーに挑戦しました。結果は残念なことに、美味しいものを作ることはできませんでした。
他のお菓子も作れないので、そもそもお菓子作りの才能がないと考え早々に諦めがついたかもしれませんが、カップケーキやマドレーヌ、フィナンシェやカヌレなど他のお菓子は少年が満足するレベルの美味しいものを作ることができました。
なので、量や時間をきちんと測ったり、沢山のレシピを真似て何度もクッキー作りに挑戦しました。しかし、少年の満足するようなものを作ることはできず、クッキーくらい買えばいいやと諦めました。
そうして、しばらくたったある日。紅茶を淹れ買っておいたクッキーを取り出そうとすると、玄関のチャイムがなりました。
出てみると隣に住む少年と同じくらいの歳の少女が居ました。
彼女は最近引っ越してきて、仲を深めるためにお茶をしたのですが、彼の淹れた紅茶が気に入った彼女は決まった時間に少年の家を訪れ、二人はお茶会を開いていました。
「私クッキー作ってきたの」
そう言って彼女は自分のバックから可愛く包装されたクッキーが入った袋を取り出しました。
少年は少女が作ってくれたクッキーを食べて衝撃を受けました。
今まで食べた中で一番美味しかったのです。そして、少年はクッキーを夢中になって食べました。
少女は少年が食べるまで不安でしたが、その様子を見て安心し微笑みを浮かべながら見ていました。
それから少女はお茶会のときに毎日クッキーを焼いて持ってくるようになりました。
そうしてしばらくたったある日。
「クッキーの焼き方を教えてほしい」
と少年が少女に言いました。その言葉を聞いて少女は少し考えたものの笑顔で
「いいよ」
と答え一緒にクッキーを焼くことにしました。
そうしてできたクッキーを食べてみましたが、やはり少女のように美味しくは作れませんでした。アドバイスを貰うために少女にも食べてもらいました
少女は「美味しいよ」と言ってくれていましたが少年は納得せず、思ったことを言ってほしいと頼むと
「普通に美味しいけど私の作ったのとは少し違う気がする。どこがどう違うのって言われたらはっきり言えないけどなんか違う。でも私と同じ作り方を教えたし、その通りにやってこれだから、貴方はクッキーを作るのは向いてないのかも」
と少女は、はっきりと思ったことを言ってくれた。
正直に言ってもらえたことはありがたいし諦めがついたが、やっぱり才能なかったのかと残念に思い肩を落とし俯いていると
「私が毎日貴方にクッキーを作ってあげる。だから、貴方は私に紅茶を淹れてよ」
そう笑顔で少女は言いました。その言葉を聞き顔を上げ
「わかった。毎日最高の紅茶を淹れるよ」
少年も笑顔でそう返しました。
それから少年が紅茶を淹れ、少女がクッキーを焼く。そして準備が整ったらお茶会を開く。そうして、二人は毎日お茶会を開き末永く幸せに暮らすのでした。