3 いざ、ギルドへ。
あのドラゴンを倒したことによってやることが無くなってしまった。もう力試しも必要ないしな。
「この辺に町ってあるか?」
俺はミニアレンたちに聞いてみたがすぐに自分に突っ込んだ。こいつらに聞いてもいいことがない。
『わかんない!』
『僕もーー』
「ああわかった。その無限ループに入らないでくれ……」
少し休んだことでMPが少しずつ回復している。
「ちょっと町を探したいから手伝ってくれないか?」
『街を探すってどうするのー?』
「全員で肩車をしてくれ」
そうして半ば強制的にミニアレンたちに肩車をさせた。
『わー!こわいー!』
『ぐらぐらしてきたー!』
ミニアレンたちが騒いでいる。
「もう少し我慢してなー」
俺は感覚共有で視界を共有して町を探した。
「お!見えたぞ!」
『そろそろ降りていい!?落ちそうなんだけどー!』
そう言った時には遅かった。10メートルくらいの高さになった列が一気に倒れた。
『こうなるからさー』
「ごめんごめん」
『あ、向こうに魔物がいるよー』
「わかった」
MPが回復してきたと言っても少しなので魔物と戦う程ではない。よって魔物を避ける選択肢をとった。
そうしておよそ1時間後。俺たちは魔物を避けながら町に着いた。一応ミニアレンたちは合体してもらって新しく手に入れた『同化』スキルで隠した。
途中ミニアレンが排泄物をそこら辺に放棄するという事件が起きたのだが……これ以上は語れない。
「なるほど……前世よりも栄えているな」
そんなことを言いながら町を見渡す。周りに広がっているのは俺がいた時よりも栄えている、レンガ造りなどの建物だった。
町の門には『クラーレン』と書かれている看板が掲げられているのでこれが町の名前だとすぐにわかった。
「おう、にいちゃん。クラーレンは初めてかい?」
俺は1人門を潜ったところでいかにもやり手の冒険者感が出ている筋肉がすごい日焼けした銀髪の男が話しかけてきた。
「初めてだよ。今到着してこの町の魅力に浸っているところだよ」
「おうそうかい。だが……よくこんな軽装で来れたな。あ、自己紹介が遅れた。俺はカインだ。この町では剣とかを主に作っている職人をしている」
「俺はアレンだ。職業は……捕食者ってやつなんだ」
捕食者って答えてみたがこの町に俺以外の捕食者はいるのか……?
「捕食者?聞いたことない職業だな。もしかして冒険者か?」
「いや、違うよ」
ここにはいないのか。まぁこの世界にいることすら怪しいんだがな。
しかし、冒険者というものがあるんだな。俺の時代にはなかったものだ。傭兵みたいなものなのか?
「そうか。じゃあ当分はこの街から出ない方がいいぜ」
「なんでだ?」
「この前だが、突然向こうの森にブリザードが起きて下級魔物から強い魔物までこっちに押し寄せたりしているんだ。しかもそのブリザードの原因は不明だからいつ起きるかわかんねぇ」
「な、なるほど……」
言えない。俺がやりました!なんて口が裂けても言えない。しかし、そんな大ごとになっているのか……。
それは置いといて、ここまできて気になるのはひとつだけ。
「忠告ありがとう。ところで、冒険者ってのは俺でもなれるのか?」
「ああ、もちろんだ。だが、アレンの……その、なんだ?捕食者ってのはわからねぇけどある程度強くなきゃ大ごとに巻き込まれることがあるぜ。それこそ今回のブリザードとかにな」
「それって死者とかも出るのか?」
「当たり前だ。だが、試験の合格者だけだからそんなに多くはないがな」
そう言って男は難しい顔をした。……もちろん俺が『捕食者』というわけのわからない職業のせいだ。
「試験の内容ってわかるか?」
「ああ。試験は筆記と実技に分かれてる。冒険者ってのはまず戦闘ができないと話にならない。また、盗賊退治や詐欺とかにも派遣されたりするから頭がそこそこいるんだ。どから筆記と実技が行われているってわけだ」
「なるほどな……」
俺は昔兵士Aをやっていた時に勉強をしこたまさせられた。『兵士たるもの力だけではダメだ!』それが教官の言葉だった。
「アドバイスありがとうな。試験、受けてみるよ」
「ああ、合格を祈ってるぜ」
そう言うとカインは俺に笑顔を見せて歩いて行った。
冒険者の試験か……。
兵士生活よりは楽しめそうだな。
「えっと、ギルドはっと……」
さっき門を潜ってみてわかったが、前世と文字は一切変わっていないのだ。それはとても助かる。
『冒険者ギルド』という看板を頼りにそちらの方向へ歩いて行く。
「この町は看板の配置が絶妙だな……」
そう言いながら進んでいくと、難なくギルドに着くことができた。
ギルドは大きな扉が威圧感を出していた。レンガ造りの建物だったので余計大きく感じてしまった。
扉を開けて中へ入ってみる。
「あれか……」
ギルドの中にはいくつか窓口があった。その一つに『登録者はこちら』と書かれている看板があったのでそこの窓口へ行った。
「登録試験をなさいますか?」
すると金髪ベリーショートの出るところは出て引っこむところは引っ込んでいる美女がそう言った。名前は『マリン』というらしい。
「はい。お願いします」
「承知しました。この紙に基本事項を記入してください」
そう言って俺の前にマリンさんが一枚の紙を出した。
紙には名前、年齢、職業など基本的なことが書かれている。
「職業どうしようかな……」
俺は捕食者だ。こんなの書いたらヤバいやつだと思われかねない。……まぁいっか。
俺はとりあえず職業欄に『捕食者』と書いた。
それからスキル欄に移動した。俺は今あるスキルを全て書いた。
もちろん大魔法や感覚共有、同化などもだ。
またレベルもあったので、100と書いた。
これで記入事項は全て終わりのようだ。
「終わりました」
「はい。確認しますね」
そう言ってマリンさんは俺が書いたものを一つ一つ丁寧に見ていった。
そして少し渋い顔をして紙を俺に返してきた。
「レベル100なんて聞いたことないですよ?嘘は試験を受けるとすぐにバレちゃいますからね」
そう言われた。レベル100ってそんなに弱いのか?普通と思ったんだけどな……。
「いや、本当なんですけど……」
俺はめげずに抵抗した。するとマリンさんは少し呆れた感じで……。
「……わかりました。一応これで登録しておきます。ただし、試験で合格できなくても知りませんよ?」
「は、はい……」
……なぁぜなぁぜ?
「あと、捕食者なんて職業も聞いたことないんですけど?」
今度は少し怒りっぽい口調だ。怖い……。
「これでお願いします……」
「いいならいいですけど……」
マリンさんは少し、いや、かなり呆れた感じだった。俺そんなに弱すぎたかな?
「では、まずはギルド長との面接を受けてもらいます」
「はい、わかりました」
そう言ってマリンさんはギルド長を呼びにいった。
待つこと数分。カインよりもさらに体格の良い少しヒゲを蓄えたおっさんがやってきた。
「お前が試験希望者か。面接をするからこっちへ来い。」
「わ、わかりました……」
俺はギルド長にそう言われて一つの個室に連れてこられた。
「で、レベル100というのは本当か?」
「え、はい」
「……そうか。では、今まで倒した魔物の中で1番強いものは?」
「火を吐くドラゴンですね」
俺はそう言うとギルド長は少し固まってしまった。
「ド、ドラゴン……だと?」
「ええ……」
「し、証拠はあるのかね!」
「証拠と言われましても……」
めんどくさい奴がやってきたな……。証拠と言ってもどうしようか。そう思っていると、同化しているミニアレンが耳元で囁いた。
『実はドラゴンの首を収納しているんだよ』
「本当か……!?」
『うん!だから今から出せるよ!』
「わかった。頼む」
「ん?何を独り言を言っているのだね?」
「い、いえ、なんでもないです」
ミニアレンが出してくれるのを待っていると、突然ドラゴンのクビが出てきた。
「何事だ!?」
それは部屋を破壊していた。……そりゃ収まらないよな。
「一応、これが証拠です……」
俺は苦笑いしながら言った。
「は、はぁ……」
するとギルド長の口がずっと空いている状態になってしまった。
「あの……?」
「あ、ああ。すまない。」
そう言ってギルド長は俺が書いた紙を持って何かを考えていた。
「捕食者か……」
「は、はい」
「お前はふざけていないよな?」
「も、もちろんです!」
「まぁそうだよな……ちなみにこのドラゴンをどうやって倒したんだ?」
「え、普通に魔法で」
「魔法が使えるのか!?」
「え、ええ……」
「あり得ない!魔法を使えるのは魔術師と魔剣士だけのはずだ!」
え、そうなのか……?
「ま、まぁいい……。それは試験を受けてみればわかることだ」
そう言ってごほんっとギルド長は咳払いをした。
「明日試験を行うつもりだがコンディションの方は大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
「そうか。試験は場合によっては長引く可能性もあるから覚悟を持って来い」
「面接は以上だ。お前の実力を楽しみにしている」
そう言って部屋を出ていった。
「少し楽しみだな。……さて、このドラゴン……どうすっかな……」
俺はとりあえずミニアレンに命令してしまわせた。また、二度とこんなことをしないように注意したのだった。
けど、あのギルド長あんな状況でよく冷静にいられたな……。
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