6.今だけ、土砂降りの雨が降んないかなぁ
「始めっ!」
ガキンッ
「ツ、おい!?」
「ちゃんと合図の後に撃ち込んだからズルではないよ?」
しかし、審判が邪魔だ。
「吹け、立ち上がれ、巻け」
呟いた瞬間、私と空の周囲は風で囲まれた。
「うわっ!」
囲う範囲を限定したので勿論審判は、吹き飛ばされて視界から消えた。
「よしよし。砂埃と風でうち等の声は聞こえづらく、見えづらくなったかな」
上出来ではなかろうか。
「夏、何故こんな所にいる?」
「期待はされてないけど、終戦目的で喚ばれたらしいよ?」
ガッ
「ちょっと!見えづらいだけで見えてはいるから、ちゃんとしてよ!」
私達は敵同士なんだからさ。
「そっちの生活はどう? あ、この世界のね」
手を動かしながら話すのは忙しないものがあり、なかなか面倒くさい。
「上は悪くないが、他は頭が空っぽだな」
「理数系の科目は全滅だった空に言われるとは可哀想に」
「あんだと?」
ギイン
「いいね。ビリビリ手にくるわ」
空が加減をしていなければ、今ので握っている剣が折れていたかも。
「私は、風の力が使えるみたい。空は何だった?」
水とかかな。
「……火だ」
平和主義の空に荒ぶるイメージの火とは。
いや、寧ろ良いかも。
「そろそろ限界かな」
「っと、何をする気だよ?」
変わんないな、なんかブツクサ言いながらも話を聞いてくれる所は。
「私が刺したら、火を出してくれる?熱くなくて、まるで空の躰が炎で包まれてるように。ようはど派手によ。出来る?」
ガキン
「おい、さすって」
「ごめん、痛いかも」
速さは、私のが上、あと経験値もだ。
「グッ」
細めの剣は、難なく沈んだと感じた瞬間、今度は一気に引き抜く。その際には、大袈裟に。
「治癒」
直ぐに傷口に手を当てる、あくまでも一瞬だ。
「夏っ」
「痛いとこ悪いけどコレを握って離さないで。絶対に」
石で出来たスイッチは、カチンッと微かな音が鳴った。
「今、炎を出して!」
早く早く
「何をした?!」
「バレるから大声出すな。ね、気づいてた?私は、空が好きだったよ」
あぁ、やっと言えた。
「え?」
「幼馴染みで良き友達であり、喧嘩仲間であり、全部含めて好きだった」
目を見開いた姿に本当に驚いているのが分かって、してやったりな気分だ。
「うちの大学の図書室に飛ぶかもしれないけど、そこは学生じゃなくても入れるから、多分平気」
「夏!」
座標がずれない事を祈る。
「元気で」
私が攻撃したように見せないとだから、最後に風の塊を彼に放ったが当たる寸前で彼は消えた。
我ながらバッチリである。
試験もこれぐらい上手くいけば良いのになぁ。
あぁ、忘れていた。
「対戦相手、燃え死んで消えたけど。殺してはいけないルールはなかったから、私の勝ちよね? 皆に教えてあげてくれる?」
血がべっとりついた剣の刃を振り抜きながら震える審判にはよ判定を叫びなさいよと圧をかけた。
砂埃が止んだ空を見上げれば、変わらずの快晴だ。
「私には、眩しすぎるな」
快晴続きは良いけれど、土砂降りの雨が今すぐ降ってくれないかな。
「そしたら、泣いてもわかんないよね」
これじゃあ、泣くに泣けないわ。