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11.祝の後に

「王都とは違い何もないけど、良い場所だろ?」


 寝転んでいる足元から顔が現れたが、ダニエルさんの気配に気づいていたので今回は驚かなかった。


 ビーンズさんには事前に許可済みだが、何故見つかったのか?


手すりもない屋根の上なんだけど。


「俺もガキの頃から上がってたからな」


 薄暗く見えないが、真っ白な歯を此方に見せているに違いない。


「久しぶりだけど変わらないなぁ」


 当たり前のように隣に寝転んできた。まぁ、常識的な距離は空いているし、彼の家で私は居候の身なのであっちに行けとは言え…なくもないけど、害がないので放置だ。


「繁忙期を過ぎたら、また旅か?」

「そうですね」


 なんだかんだで、ビーンズ宅に滞在しているけど、今日で何日目だっけ?


「俺の誕生日が8日後だから、それまでいてよ」

「何故私が?」

「祝い事は、人が多い方が楽しいじゃん」

「ちなみに何歳になるんですか?」


 軽い口調といい、なんとなく気になっていた事を聞いてみる。


「俺?誕生日で18だよ。言ってなかった?やっと成人」

「はぁ?!」


 まだ17歳なの?! そのガタイの良さで?!


「え、驚くこと?」

「いや、ありまくりだよ。話し方が軽いとは思っていたけど」


未成年とは驚きだわ。


「人は、見かけでは判断してはいけない」

「ナニナニ、俺、馬鹿にされてる?」


いや、違うけど…違くないのか?


「ま、いいや。とりあえず約束したからな。明日も親父の手伝いだろ?早く寝ろよー」


 彼は、勢いよく起き上がり伸びをして爽やかに去っていった。


「結局、何しに来たのかな。誕生日会の誘いが目的って事?」


 なんだかんだで、豆達にはお世話になっているしなぁ。


「この世界にも誕生日を祝うという行事があるとは知らなかった」


 なかなか平和的で良いのかもしれない。


「あ、誕生日といえばプレゼントか。あのくらいの歳の子に何をあげたらいいの?」


 星を眺めながらネット検索が出来たら参考になるのにと呟く夏だった。





✻〜✻〜✻




「ハーピバースデートューユ〜♪」


パチパチ


「いや、歌があったほうが盛り上がるかも。意味はわからないけど」


 歌う前に説明してやったじゃないか!


「一人で歌うのが、なかなかのツラさを感じるんだと知りました」

「まぁまぁ!息子の為にありがとな!ガハハ」


バシッバシッ


「だから痛いっ!」

「そうだよ!加減てもんが出来やしないんだからヤメな!」


 娘さんの出産の手伝いで不在だった豆の奥さん、バリーさんが今朝に帰宅し、その彼女が容赦なく豆の頭をはたいた。


 スパーンと良い音がしたけど、叩きあうのが文化なのだろうか。


 異世界、まだ知らない事が沢山あるようだ。


「イテーな!加減するのはそっちだろうが!」

「アンタにはいらないよ!」


 ケンカ口調だが、とても仲が良さそうに見える不思議さよ。目があった本日の主役ダニエルが、ヤレヤレと肩をすくめるジェスチャーを私に返してきた。


「よ、ダニエル!」

「遅くなったわ!」


 近所の人達も集まりだし、大宴会の始まりである。


「今日は、料理を沢山用意したから遠慮なくお食べ!」


 野外に設置された長いテーブルには肉料理、魚料理に加えて贅沢品であろうお菓子も所狭しと並んでいる。


「遠慮なく頂きます!」


 私は、即答し目星をつけておいた料理に迷いなくフォークを伸ばした。





✻〜✻〜✻




「怒涛な一日だったなぁ」


皆が帰宅し、片付けもやっと終わったのは日付が変わる頃だった。


 屋根の上で休憩していた私の前に本日の主役がやってきた。


「片付けありがとう。煩すぎて驚いただろ?」

「確かに。でも、楽しかった」


 この世界に友達なんていないから、ワイワイするのが久しぶり過ぎて。


 なんか、変な感じがした。でも、こんな日も悪くない。


「これ、ありがとな。皆に羨ましがられた」

「そう?なら良かった」


 年齢でいうと高校生男子に渡すものなんて、この世界なら剣とか?でも、当たり前だけどお高いし。


「力、凄いこもってる」

「特技、それくらいだからね」


 悩んだ末に、飾り紐にした。紐は上手く編めなかったけど、石は私のコレクションの中でもお気に入りのヤツ。それに、私の風の力を込めた。体に強いダメージがくる攻撃に対して防御と攻撃のダブルで発動するモノである。


「で、私がここを離れるのを先延ばしにしなければいけなかった理由をそろそろ教えてもらえない?」


 誕生日は、確かにめでたいだろう。だけど、口実に過ぎないのは最初から気づいていた。


 意図的だと分かっていたけれど、彼の必死さや、このビーンズ家の居心地の良さは好きで。まぁ、あてもないし、いっかと流されてみたのだ。


「あ、バレてた?」


 アハッと直ぐに開き直る姿も嫌味がない。


「コレ、今日着いたんだ。渡したくてさ」


 それは、見覚えのあるスイッチと流暢な文字が書かれた封筒。


グレードさんの字だった。




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