プロローグ
炎と光が交差する中、鋼の刃が激しくぶつかり合う。それは、魔族と人族が長きにわたり戦い続ける世界の日常光景だった。
しかし、ある日、世界は大きく揺らぎを感じた。大空が赤く染まると同時に、謎の竜が突如"落ちてきた"のだ。そのあまりのスピードで空気との摩擦で身体を燃やしながら、大きな翼を一度も広げることなく、炎と鋼が飛び交う戦乱の中心地へ激突する。その衝撃は周囲のあらゆる物体を吹き飛ばした。その異様な光景に驚愕し、魔族と人族は互いに戦いを止めた。
謎の竜の墜落によって生じた巨大なクレーター。そこへ向かう1人の騎士 ニア。正義感からなのか、それともただの興味本位なのか……目の前の現象を確かめずして避難する選択肢は初めから彼女にはなかった。
やっとの思いで巨大な穴のそばに辿り着いたニア。しかし、竜が落ちた先に見た光景にニアは衝撃を受けた。先ほどの竜はどこにも見えず、代わりに1人の男がそこにはいた。
その男の姿は、汚れた黒髪が灼熱の炎で真っ赤に染まり、身体を覆う銀色の鱗は陽を反射し、そして背には重く長い竜の尾が付いていた。
ニアはその姿に驚愕しながらも、この男との邂逅がどこか運命であるように感じていた。