2月9日
桜木花子の状態を確認し、彼女が熟睡後、夢の世界へ行く事に。
《ご協力頂けますか》
《勿論だよ》
『シバッカル、鍵を』
『ふむ、コレに触れるが良い』
そうして見たのは、空に浮かぶもう1つの地球。
確かに砂漠が多い様にも見受けられる。
「ぉお、先生、いつの間に」
《お邪魔します、素敵な家ですね》
「でしょう」
《ココでは、本当に小さいのですね》
「便利よ、歩かないで済むし」
『殆ど俺が抱っこしてるもんねー』
誰もが、私自身も、その星に対して恐怖心を抱いてはいない。
だからこそ有害なのか何なのか、何も読み取る事が出来ない。
「帰るならコレに触れたら帰れるよ、いつ帰る?」
帰そうと言うより、純粋な心遣い。
私が以前に警戒していた事を、覚えていたんでしょうね。
《そうですね、今日はこの位にしておきますね》
眠った時と同様に、中空に浮く銀の鍵に触れると。
映画館へと移動していた。
そこでは桜木花子の夢の続きが観れたり、武光君の姿が観れたり。
『あれ、迷子?』
《アナタは?》
『俺はねぇ……』
ハナの転移が早まってしまった。
起きた直後にミーシャが駆け付け、大騒ぎとなったのだが、ネイハムは眠ったまま。
「ドリアード」
《ドリームランドには居らぬらしい》
映画館では確かに銀の鍵に触れ、消えるまでを確認したんだが。
あぁ、白雨に鍵を任せろと言っておけば。
「シバッカル」
『どちらもコチラには居らぬが、ハナは生きておる確信は有るぞぃ』
《何とあやふやな情報じゃ》
『お主同様、万能では無いんじゃよ』
《ぐぬぬ》
「ネイハムはどうした」
『ハナのドリームランドには居らぬでな、分からん』
「なら、他の誰かのドリームランドなのか?」
『それを知っていたとしても、お主には教えられんのじゃよ』
《協力するのでは無かったのか》
『ルールが有るでな、対価無しにミーミルの泉は使えぬじゃろ?』
《ぐぬぬ》
「どちらも見付かったら教えてくれ」
『勿論じゃよ』
武光さんによると、更に他の世界へ転移させられたのでは、と。
そしてネイハム先生はそれに巻き込まれたか、また別の何かが起きているかは不明だ、と。
「すまんが、居なくなった事は暫く伏せたい、なので探しに行く事は諦めて欲しい」
『仕方無い、それが妥当。蜜仍、ハナに変身出来る』
「はい、ですけど」
『非常時用、今まで通り引き籠もり、神々や大罪にだけ知らせる。良いね』
「おう」
「あの、賢人君には」
『あぁ、うん、言おう。今日復帰予定だったね』
「その、戻って来るんでしょうか」
『どうだろう、向こうで大事な人が出来てしまったら、残る事を選ぶかも知れない』
「無い、ハナに限っては無い筈だ」
『もしそうなったら、今度は私達が覚悟しないといけない。そう大事な人を振り切ってまで帰って来るなら、それにも報いなければいけない』
「武光君、帰って来ない事も視野に入れて、小野坂君の処遇を再検討させて欲しい」
「だが、ネイハムが」
《すみません、寝過ごした様で、事情は把握させて頂きました。再検討をしましょう》
桜木さんと最後に会った方。
疑う余地は無いのだけれど、何か、手掛かりが。
「あの、手掛かりか何かは」
《すみません》
ハナが居なくなるだなんて。
しかも、不確実だけれど意外と前例も有るのね。
「その前例を、詳しく知りたいのだけれど」
《精神鑑定なんぞ無い時代じゃて、ほぼ妄言と処断されとる情報なんじゃが。失踪し、妊娠して戻って来おったり、同じく失踪し、子供を置いてきてしまった、だとかじゃね。正直、そんなのばかりじゃよ》
「そう、その人達のその後はどうなの?」
《処刑じゃったり、放蕩したり、帰還を果たしたり、バラバラじゃと。じゃが実際に召喚者なのは確からしいぞぃ、ふと気が付くとそこに居ったんじゃと》
「その中でも、少し変わった証言をしてたのは無いのかしら。それこそハナの居た世界とは別の場所から来た様な」
《ふむ、判別が付かんのは有るが、そう確定出来るモノは無さそうじゃと》
『古ければ殆ど似た様な世界線なんだろう、しかも本人にその知識が有るか、無いならそうだったとしても証明が出来無い』
「すまんが、そう議論してどうなると言うんだ」
「戻って来た時のケア、そして戻って来なかった時の周りへのケア。そしてもし、コチラから何かアプローチ出来るなら、するかどうか」
『あぁ、向こうで幸せに過ごしてんなら、俺らが呼び戻すのは悪手になるかも知れないが。そんな奴なのか?』
「いいえ、けどもしコチラからのアプローチが無ければ帰って来れないなら、何とかしたいじゃない」
《その可能性は無いじゃろう、一貫性が全く無いそうじゃ》
「そう、何も出来無いのね」
『祈るか?』
「そうね、片っ端から祈ろうかしら」
祈ってから。
帰って来たらどう迎え入れるか、よね。
桜木君の何かに巻き込まれたのかと思ったけれど、随分と落ち着いている、けれども彼に限って寝過ごす何て事は無い筈、なのだけれど。
「そう何も言ってもらえないと、何かを疑いたくなるねぇ」
《小野坂さんの事は良いんですか》
「悲恋集推しかなぁ」
《まぁ、失敗したら記憶を消せば良いですしね》
「どうしてそう気が変わったんだろうか」
《桜木花子が居なくなったからですよ、もしかしたら4番目は予備のカードかも知れない、なら次はどう動かすべきか。対地球なら非情な選択を迫られるかも知れません、余裕が無い状態なのかも知れないと仮定し考える事にしただけですよ》
言って無い事は嘘にならないのが、この魔導具のネックなのだけど。
まぁ、もう少し様子を見ようかな、武光君にも忠告して。
ネイハムに変化が有ったらしい。
マサコに悲恋集を見せ、もし失敗したなら記憶消去にも賛成している、と。
「そうか、どう思う」
【誰か他のドリームランドに行って、何かを知ったのかなぁ、と言った所かな】
全く前例にに無い。
ただ、思い当たる節が、だが映画館には居なかった筈。
あの神も。
いや、俺の後から来たのか?
あの場は時間の意味を成さない時も有る。
「探るには、どうしたら良い」
【言って貰える条件が揃うか、カマを掛けるか。けれど的外れな事を聞けば、ただ単に疑っているだけだとなるから、正直、言って貰えるのを待つしか無いかなと思うなぁ】
「警戒をしていないのか?」
【警戒はしているさ、けれど問題行動も無いし、内情を知れない以上は警戒される必要は無いからね】
「そうか、頼んだ」
【はい、ではまた】
どうしたらいい、どうすれば良い。
前例が全く無い。
何に備えれば良い、どう動けば良い。
武光さんが倒れた。
ストレス性胃腸炎により動けなくなってしまい、天使の治療で持ち直したけれど。
「すまん、もう大丈夫だ」
「少し休んで下さい、僕が見張りに行きますから」
「いや、マサコの責任は俺が持つと」
「瑞安連れて来たぞー」
『ダメですよ武光様、僕らが交代で見張りに付きますから。任せて信頼して下さい』
「瑞安」
『桜木様の事も聞きました、だからこそ、アナタがしっかりと体調を整え、迎える準備をすべきでは?』
「だが」
『いつ帰って来て頂けるか不明なんですよね?』
「あぁ、分かった」
『では、訓練に行って下さい、動くのが1番だと仰ってましたよね?』
「あぁ、すまん、助かる」
『では、はい、行って来て下さい』
「分かった」
『はぁ、お疲れ様です。取り敢えずは元通りの時間分担で動きましょう、僕らはただの人間ですし』
「はい、じゃあ小野坂さんには」
『僕が付きます、それとクーロンもお借りしますけど、大丈夫ですか?』
『行きます、休んでて下さい、ご主人様に怒られない様に』
「はい」
サクラちゃん、本当に何処にも居ないの。
一瞬死んだのかなって思ったけど、そしたら必ずヘルが何か言ってくれる筈だし。
『あ、ルーマニアには?』
《居らん居らん、正式に迎え入れてこそと思うておるらしいでな、邪道はせんよ》
『えー、じゃあ本当にどっかに行っちゃたのかぁ』
《じゃの、これだけ神々が探しても居らんと言う事は、確定じゃろ》
『他の世界の俺、何もしないと良いんだけど』
《それは無理じゃろう》
『だよねー』
例え俺じゃなくても、何か有った時に復讐に行けないのは不便だなぁ。
悲恋集と言う物を渡された。
読み進めると、未成年が被害者だったり、加害者だったり。
『コレ、私が疑われちゃってるんですかね』
『何をどう、疑われていると感じたのでしょうか?』
『え、いえ、何でも無いです』
『仰って頂いて大丈夫ですよ』
何も考えないで、自分が未成年だからと言う事だけを汲み取って言ってしまった。
けど、こんな、馬鹿だと思われたら、見放されるかも知れない。
そんな事は無いって言ってたけど、でも。
『すみません、未成年だから、だけで。皆さんに良くして貰ってるのに、すみません』
『そうでしたか、ご心配なさらなくても大丈夫ですよ。それに、無理にお読みになる物でも無いので、読まなくても良いんですからね』
役目を探す手伝いをして貰ってるのに、拒絶なんて出来無い。
既に食事でも手間を掛けさせてしまっているのに、我儘なんて言えるワケが無い。
『いえ、大丈夫です』
『では、感想文の提出をお願いしますね』
結婚は神聖で、離婚なんて許されない。
そう育てられた私には、どうしても離婚する人間の事が理解出来無い。
離婚するなら、結婚しなければ良いだけなのに。




