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2月8日

 瑞安が居ないだけで、かなり静かだと感じる。


《寂しいんじゃろう》

「まぁな」


 ハナ達はまだ寝ているが、マサコ達は現地時間に合わせている。


《そろそろ起きるんじゃが、あまり無理をするで無いよ?》

「あぁ、昼寝には戻るよ」


 今は真夜中の12時過ぎ。

 一時的な事だ、問題無い。


 今日は卵とトマト炒めを作っておいてやろう、レシピは雑だが唯一嫁に自慢出来る料理だ。


《手順もレシピもザックリじゃのぅ》

「コレは親父のなんでな、頭で無く体で覚えたんだ」


《そうかそうか、くふふふ》


 そしてハナの作った小鉢を食べ、メールをし、教会へ行きドゥシャと交代。


『ずっと見張り続けるのか』

「まぁな、守るにもコレが1番だろう」


『格闘訓練はどうした』

「帰ればアホみたいに出来る、今じゃない」


『程々にしてくれよ、ストレスは大敵だ』

「あぁ、ありがとうシャオヘイ」


 ハナが肌触りの良いモノを愛でる理由が良く分かった。

 こう、何も出来ない時間に心を穏やかにさせてくれるのは、こう言うモノなんだな。




 今日は刑務所への見学へ。

 向こうよりも良い環境、人権保護がなされていて、文句を言える様な状態じゃない。


『で、関係者に会いたいんだったな』

『はい、1度お話をと』


『分かった、だが強い思想は強い洗脳力を持ってる、気を付けてくれよ』


 優しい人、勤勉な怠惰さん。

 それと寡黙な憤怒さん、こう言う人達が居るから大丈夫なのかも知れないけれど、何か有るかも知れない。




 心理学用語を使うまでも無く、何か有るかも知れないと思えば有る様に思えてしまう、何かが有る様に見えてしまう。

 既に厳戒態勢の刑務所に私以外に武光君も待機している、そして監視室には五十六先生も。


《ネタを探す記者より厄介じゃのぅ》


 今回は敢えて弱点を晒し役割を与えるべきか、そのまま弱点の無さを知らしめるかの討論が起きたけれど、安全性を最優先させる武光君の意見でココではいつも通りの状態を見て貰う事に。


『コレで少しは認知の歪みを認識出来れば良いんですが』




 彼らの言葉は本当に毒だった。


 科学も医療も何もかもを否定して、他の神様の事を考えてない、他の人間の事を全く考えていない。

 主義主張を、理想論を語るだけ、凄く怖い。


『他の方も、良いですか』

『おう』


 主張の強弱は有るけれど、誰も彼も一神教こそ至高の宗教、究極の宗教だと思っている、けど。


《隣人を愛せよ、愛とは融和、友好、拒絶する事では有りませんよ》


 天使ガブリエルの言葉に、目を見開いて驚いた様な表情を浮かべた。

 そうして自己否定されたと呟いた人に、天使は更に言葉を伝えた。

 それでも主は愛し、赦します。


 隙は無かった。

 私なんかが心配する隙も、どうにか出来る隙も無かった。


 私がどうにかすべきなのは、()()なのかも知れない。




 タケちゃんのザックリレシピキター。

 しかもお父ちゃん伝来のレシピらしい、男の料理、そしてお祖父ちゃんの料理。


「初、お祖父ちゃん料理や」


 トマトと卵炒め。


 美味しいしササっと出来るから何度も練習したけれど、どうにも上手くいかない。


「材料、買い出しに行きませんか?」

「ね、行こう」

「ついでに明石焼きの材料も、銅板も買いましょう?」


 卵祭り。

 卵ケース買いなんて、お祖母ちゃんの店が繁盛してた時以来よ。


 本当は訓練をしたいけれど、ショナ達に連日訓練させるワケにいかないし、悪夢を見たんだし、と。

 未成年も居るしね、上が率先して休むべきだって、ネイハム先生も言ってたし。




 マサコの刑務所見学が無事に終わったのだが。


「んー、ココで役目に芽生えられても困るんだよねぇ」

「どう言う事だ?」

《彼らに執着してしまったら、最悪は居着くかと》


「それは、非常に困るんだが」

「だよねぇ、帰って貰う前提の処置だし、ネタバレに耐えられる精神構造じゃ無いし」

《他に興味を引かせられれば良いんですが》


 何を、何が興味を引かせられるんだ。


「あぁ、未成年だし、悲恋集でも暫く読んで貰おうかねぇ」

《余計執着されそうですが》

「保留にさせてくれ、内容を精査したい」


 未成年者の騒動が描かれている。

 またコレで男性恐怖症が増加しても困る、だが、他に。


「まぁ、今日はもう帰り給えよ」

《そうじゃよ、様々な料理を作っておるでな、偶には一緒に食ってやると良い》

《では、我々も行きましょうかね》


「そうだねぇ、息抜きは必要だもの、さ、行くよ」




 桜木さんは5人以上人が集まるのが苦手らしい、そして注目を浴びる事も。

 話題の中心になりそうになると、外へと行ってしまった。


 そして後を追う様に、エミール君も外へ。


《真逆ですね、本当に》

「そうだねぇ、良い悪いでは無いんだけれど、こうも違うモノなんだねぇ」

「そう値踏みしてくれるな、恥ずかしがって外に行ってしまったじゃないか」


「いやぁ、対比や比較は良くないとされてはいるけれどだ、この場合はせざる得ないだろう」

《意味や価値を考えるとなると避けられませんよ、真逆に位置する事に意味が有るのかも知れませんからね》


「俺は、カードのジョーカーかも知れないと考えている」

《一部ではタロットの愚者、成程》

「手元に置いて有利な時もあるし、不利な時も有る、成程ねぇ」

『無能な働き者を有効に使えるかどうか、がんばって』


「神様に頑張れと言われてもねぇ、制限が多過ぎるんだよぉ」

『最悪は記憶を消去したら良いんだよ、トライ&エラー、最適解を探す最良のそざいだよ』

《知恵神だからこその冷酷さでしょうか》


『大罪や魔王になられるより、良いとおもう』

「だが、それこそ非人道的行為だろう」


『人道や人権を守れさえすれば争いが起きないなら良い、けど、そうじゃない。どの世界でも、他者の言葉に耳を傾けない真っ直ぐさは、害悪にしかならないんだよ』

「そのクセを直すには時間が必要だけれど、時間が無いかも知れない、けれど放置は出来ない」

《まだ悪意を持ってして悪行をされる方がマシですよね、認知の歪みと言うよりは信念の問題ですから》


『最も厄介なのは無能な働き者が力を持つ事。サイコパスと良く間違われるけれど、彼らに客観性は無いし自尊心が高い、まだサイコパスの方がコントロールが利く、利己的で何処かに普通を求めているから』


「お前から見て、俺やハナの危険性はどうなんだ」

『ハナを失った時の君が怖い。それとハナは、ハナも君や大事な人間を失った時、特に明らかに大勢が敵となった時、きっと私達の想像以上の力を発揮する』

「潜在的に怒りを抱えているからねぇ」

《そうですね、自己へと帰結し、未だに誰にも怒りを向けていない。内容量を把握出来ない大きな火薬庫ですから》


 誰も否定をしなかった、出来なかった。

 怒っている所を誰も見た事が無いから。


 理不尽な目に遭っていた事は理解している筈なのに、ココでも神獣交換と言う理不尽な目に遭っているのに、それを誰かに向けたり、発露もしない。


「あのー、問題でも?」

「いや、4番目について少しな」

「もう一旦は決着が付いたから大丈夫だよ桜木君」

「焼いておきましたよ、食べますか?」


「食べる」


 こんな風に食べる事が好きで、肌触りの良いモノが好きで、自信が無いからと料理を振る舞う事もしない人が。


 いや、憤怒さんですら優しさから大罪化したとも言えるのだし。

 だから、それを知ってしまったからこそ、桜木さんの大罪化も魔王化も否定出来ない。




 寝る間に少し面談をしたいと言われた。

 向こうからは初めてかも。


《厄災が終わったら、何をしたいですか?》

「引き籠り」


《少しの間、羅列してもらえますか》


「マンガとかアニメとか映画を見放題、明石焼き食い放題、牛丼食べ放題、もふもふし放題」

《独りになりたい時はどんな時ですか》


「トイレ、風呂はプライバシー欲しい」


《性質を無視して、結婚や恋人についてはどうですか》

「一生裏切らない自分だけに優しいイケメンなら欲しい」


《迷い無く答えましたね》

「皆そんなモノじゃない?」


《ココではそれなりに、もう少し抽象的なんですよ、優しい人だとか、支え合える様な人だとか、面白い人だとか》

「それ万遍無く欲しい、全く無いのは無理だし」


《結婚式はどうしますか》

「あー、そんなに興味無いのよマジで、ドレスを見るのは良いけど、マジで遠慮したい」


《注目は》

「されたくない、一生モブで良いです」


《残念ですけど、暫くは無理そうですね》

「ですよねー、きっと公務とか有るんだろうし、エミールに任せるには若いだろうし」


《ハーレムへの感想は?》

「大変そう。どうした?何か目的が分からんのだけど」


《気分転換、でしょうかね》

「お疲れ様です、ご苦労様で御座います」


《いえ、ありがとうございました。では》

「おう」


 気分転換に面談って、どんだけ仕事中毒なんだろうか。

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