2月2日
ハナは今日は夢を見なかった。
そしてオモイカネ神からの呼び出しがあり、賢人と共に施設へ。
俺はショナ君と瑞安共に、買い出しへ行き、料理をし。
戦闘訓練へ。
「お願いします」
ショナ君をボコボコにしたら俺が怒られるんだが、まぁ、ココはこう、男はこうなるんだよな。
目を覚ました時、自分は既に魔王とは違う存在なんだ、セバスともルシアとも違う生き物なんだなと自覚してた。
それから呼び方も、俺は俺で呼ぶべきだと思ったから、サクラと呼ぶ様にした。
名前が好きじゃないって言ってたから、ただそれだけ。
好意は有るけど、独占したいとかそこまでじゃなくて、役に立ちたい。
「だけ、別に普通じゃない?」
《まぁ、妥当かなとは思います》
「なにその含みの有る言い方」
《魔王とはお話はしてませんが、私は大罪の、特に怠惰と憤怒の受け持ちなので、念の為です》
「あぁ、怠惰をぶっ殺そうとしたのアンタか」
《殆どは治療の一環なんですけど、まぁ、そうですね》
「なんで?」
《折角ですし、少し他の方にも事情を説明しておきましょうかね》
そんで、今更正しかったのか不安がってるサクラも、今日から一旦休みのケントとかも加えて、話を聞く事になった。
「ほいで?」
《怠惰と憤怒のカウンセリング担当でした、端的に言うと、同情と興味から怠惰に散々な実験をして、国連から外されたんです。人道的にマズい、と》
「ほう」
《両方、元はただの人間だったんです。もう片方は召喚者、もう片方は》
「あぁ、魔王が自分で生み出した子供かどうか迷ってだんだよな、んで殺そうかどうか迷ってた」
《だそうですね、そうして暫くは人間として過ごし、怠惰は怠惰へ、憤怒は憤怒へ》
「じゃあ憤怒さんには元の名前が有るの?」
《はい、ですがそれは本人達から聞くべきかと》
「エミール?大丈夫か?」
僕は。
『僕は、最初は何で僕なんかって思って。次に大人は自分勝手だなと思って、昨日は大人だったら良かったのにと、思ったんです。けど、大人って何だろうって思うと、どれだけ客観的に考えられるか、で。それには情報が必要で、だから僕は聞きたいです、会って話してみたい。僕には、それ位しか今は出来無いから』
《皆さん、知恵で呼ばれた可能性、感性や勇気を求められて呼ばれた可能性、様々な可能性を今は否定しないで下さい。それが分かるのは、厄災後だと、そう思っておいて下さい》
『はい』
『おう』
《それで、気になりませんか賢人君、人が大罪になった理由》
「そんな、パンクさせる気?」
《いえ、ただ従者や世界について迷ってらっしゃるでしょうし、彼もご自分で見聞きしないと信じない方かなと思ったので、選択肢を与えているだけですよ》
「従者失格っすかね」
《いえ、正しさについて考える事は、寧ろ従者としては当たり前、鵜吞みにしないからこそ悩む。及第点ですし、向いてるとも思いますよ》
なら僕はどうなんだろうか。
召喚者なら、どうすべきなんだろうか。
そこもきっと、先ず求められるのは客観性。
「あの、付いてっても良いっすかね」
「おうよ」
良い方向へ向かっていると信じたいんだが、どうにも微細な変化が大きく変わっていっている様にも見える。
それこそ、今、正にだ。
全員で大罪と会う事になるとはな。
『で、何でココなんだよ』
「あら良いじゃないの、この子が大食いなの知ってるでしょう」
『私の料理で満足させられるか分からないけれど、楽しんでいってね』
《あら、あの子が厨房に、気合が入ってるわねぇ》
『君、何か絵画や歴史に興味は無いかい?』
「すまんな桜木君、集まると、どうしてもこうなってしまってな」
「いや、いえ、お集り頂き、どうも」
「でもさー、俺とセバスはまだ何にも食えないんだぜ?拷問じゃんかー」
『そうですね、そう思いながら耐えましょう』
「あら大丈夫よ、それも言って有るし、アンタ何とかしなさいよ」
「何とかって」
【私が手伝おうか?】
「あ、すみません、お願いします」
「やったー」
『すみません、ありがとうございます』
このタイミングで大罪が、1人を除いて全員が揃うとはな。
「それで、このイケメンさんがアンタの元拷問者ね」
『おう、元気だったか』
《はい、お集り頂いてありがとうございます》
《良いのよ、折角だし、顔合わせをと思ってたの》
『だが僕なんかは、ただ不老不死なだけの美術収集家だよ?君達の役には立てないと思うけどねぇ』
「いや、年数を生きているなら図書館に匹敵する知識を持って居る筈だ。例の、魔女狩りについて聞きたい」
『あぁ、生き残りを探してるんだったね、僕は色欲の情報からもルーマニアだと思うよ』
《私も、そう言う人が多くて大変だったもの、ね?アレよ、スイスで何人も連れてっちゃいそうだった人達》
「あぁ、アレね、私は裏方だったから良く知らないんだけど、何人も抜けるかもって大騒ぎだったのは覚えてるわ」
『しかも半ば鎖国体制で国連にも加盟してない。そう守りが固いと言う事は、それだけ何かを守ろうとしている事にも繋がる』
《あら、でもそれって吸血鬼が居るからじゃないの?》
「吸血鬼とは違うのよね?ドリアードちゃん」
《じゃの。アイオロスや、もう良いじゃろ》
『良いでしょう、ルサリィ、出て来なさい』
また、新キャラが。
配膳に来た美食さんと共に、トンボ羽根を背負った幼女が現れた。
ルーマニアにしか居ない風の精霊だそうで、似た性質の人達を匿ってると教えてくれたけど、ドリアードとキャラ被りしてる幼女だなと言う事が頭の半分を占めてしまっていた。
もう半分は、メシが美味そうだなと、だってお腹空いてるんだもの。
「それで、更に詳しく聞くにはどうしたら良いんだ」
現地に行くしか無いらしいが。
「雷電とか得てからで良いかな、ひ弱なんで」
「それにもう遅いしな、またコチラから頼んでも構わんか?」
ドリアードと同じノリで返事をして、アイオロスさんと共に消えていった。
スープ美味い、アレクも専用のスープを食ってご機嫌。
「はぁ、久し振りのファンタジーだったわ」
「でだ、少し話を良いか?」
『ザっとで良いか、何遍も話してるんで飽きてるんだ』
「俺もだ、手短に話そう」
怠惰は人間だった筈なのに、怠惰になるべきだと思ってしまい、怠惰に。
そして憤怒さんは、大事な人をテロで亡くして、憤怒として暴走した、と。
《アナタもテロで亡くしましたよね、そこで不死と分かった》
『おう、最低最悪の思い出だ』
「人間のせいやん。あ、当時のね」
責める気は無かったんだけど。
「そうっすよね、マジでマッチポンプじゃないっすか、ダッサ。恥ずかしいっす、ココの人間だって事言うの」
「あらでもアンタの国は凄い頑張ってたのよ、凄い鴨にされてたけど、私達側だったもの」
《今もよ、魔女狩りも参加して無かったのだし》
『だな、どの国においても支援金や助力に関してはお前らの国がトップだが。その分、国連への発言力も何もかもが弱い』
国連に関しての権力は、強い国程発言権が弱い。
そして総合的に最も弱いとされる国が、権限や発言権を持っている。
いや、いたって言う方が正しいのかな、もう発言権しか無いんだもの。
「全く、力有る者の支配を何より恐れていたのに、それで汚染されてたんじゃ意味無いわよねぇ」
「すまん」
『つか俺らの立場も弱いんだ、無理だろ、俺らは入れもしなかったんだ』
『だからこそだよ、灯台下暗し、だったかい、敢えて狙ったんだろう』
「あぁ、だそうだ」
「責める気は無かったんだけど、ごめんね?」
「あ、いや、違うんすよ。何か、まだ纏まらないだけなんで、大丈夫」
「って言うか、何が有ってこうなってるのよ」
「あ、じゃあ俺からザックリで良いっすかね、今ちょっと食欲無いんで」
「じゃあそれもワシ食うわ」
「うっす」
「じゃあ、お願いするわね」
まぁまぁ、何て事は無いわよ。
要は負債を押し付けられただけよね、強い島国だからって、可愛そうに。
「って感じっす」
「要は負の歴史と証拠と記録を押し付けられただけでしょう、それが残ってるからって、主導したとは限らないもの」
「やっぱそうっすよね。つか、いや、それで俺の親父は結果的に助かったのかなって思って、まぁ、良い面と悪い面が有るのかなって。だから、なのに、整理出来ないんすよね、何か」
「普通の人間ならそんなモノじゃないの、特に今みたいに凄く平和だと、道徳の概念って凄く命を大事にするから。けど、追い詰められたら何だってするのも人間。けど、それも忘れちゃうのよね、今が平和だから、どれだけの人間が犠牲になったのか、どれだけの人間の思いが踏みにじられたのか、どうしてそうなったのか。今は結果だけが残ってるでしょ、過程を御座なりにしがちなのよね」
《ですが、君はそうは思わないのでしょうね》
「ワシ?まぁ、動物実験のお陰で生きてる命だから、全く何も犠牲にせずに生きるのが不可能だったし、肉好きだし。仕方無いって片付けられる範囲は違うと思う。けど、やっぱり人を犠牲にするのはね、人じゃないと言われてもね、ココに人になったのが居るから。だから辛い?」
「なんすかね、良く分かんないっす。けど、情報は揃ってるんで、整理次第っすかね」
「辞めても怒らんし、続けても褒めないからな?良いな?」
「うっす、あざっす」
「俺が送ろう、ゆっくりしてこい」
後は、この子かしらね。
折角だし、吐き出して貰おうかしら。
「アンタはどうなの」
「僕は、伝聞だけですし、結果として脅威が無力化された事を先に評価してしまっているのと、過去の事なので、悩まない事を優先させてるんだと思います。魂も感情も何も無かったと思いたいので、苦しんでいる様に見えたとしても、それは生理学的、解剖学的にそう感じただけ。そして死体が動いている様に見える錯覚も有る事を踏まえて、ただの動く内臓だと、処理してるんだと思います」
「冷静やね」
「冷たいですよね」
「いや、ワシも言語化したらそんな感じだと思う。願望を多分に含んで、過去の事だ、と処理しないとね。じゃあどうするって言っても、供養はもうしてるだろうから、後はもう有効活用だけしか出来なくね、って感じ。目の前でペンギンが捌かれるのは嫌だけど、既に食える状態のペンギンは食うもの、それと同じ」
『そうなんだね、なら今度はペンギン料理を出そうか。勿論、現地民からのお裾分けだよ』
「この流れで言うのアレだけど、現地民のお裾分けは食う、それが文化で伝統なら。けど人間は難しいな、アレクのなら食うわ」
「そこで俺のはもっとマズいんじゃない?」
「いや、だって、どんな味か気にならなかった?あの白い状態の」
「おま、そんな事考えてたの?」
良いタイミングで戻って来たわね、おタケ。
「だって命は命じゃない、生き残るのに食ったって人も居るなら、自分だって例外では無いじゃない。食わないで死んでも良い様な立場なら食わないで死ねば良いけど、3億人を救うのに死体を食べるしか無いならワシは食うよ。けど、子供とかはダメだね、成人限定。あぁ、うん、道連れにする理由が分かったかも、そんな状況なら道連れに一緒に死ぬわ」
ハナさんが、どれだけ死を考えて、生きる事について考えたのか。
どうして、何故考えたのか。
《その死生観は一般的では無いのでは》
「おう、と思うよ、どうだろタケちゃん」
「俺は、そこまでは考えた事は無い。だが、ハナの言う事は良く分かる。が、ハナの肉は食いたくは無いな」
「いやそれこそ食えよ、それこそワシの分まで生きろって感じなんだけど」
「そう揉めそうだな」
「ならワシの死体が有ったらだよ、それしか無いなら食って欲しい。赤の他人や悪人に食われるより、ずっと良いもの」
僕なら、どう思うか。
《ずっと良い、ですか。カニバリズムにも理解が有りそうですね》
「いや、理解が有るかどうかはちょっと。ただ向こうで臓器移植とかしたかったのよ、それと殆ど同じだし。死に際に好きな人に食ってくれと言われたら、喜んで食うかも知れないとは思ってる。マンガの受け売りで、脳内でだけだけど」
《では、キュートアグレッションはどうですか?》
「なんそれ」
《あまりの可愛さに噛みたくなる、強く抱き締めたくなる》
「無いわー、感じた事は無い。寧ろ噛まれた、犬に、唸らず噛むのは無しだよ」
「俺はもう人間だからね?」
《祥那君、ドン引きですか?》
「あ、いや、そう考える環境だった事について、どう処理しようかなと」
「病弱だったし、役に立たないとって思ってて、髪もそんな理由だったし、だから逆に今そこら辺はストレスでは無いのよ。問題はどう役に立つのか、どう役に立てば良いのかが手探りなのがね、ストレス」
「そうよね、いっそ何が起こるか分かれば良いのだけれど」
『だが人間はそう前例に倣ってしまうと直ぐに油断するだろ、国連しかり、だからお前らが居るんじゃないのか?』
「なるほど、たしかに」
「エミールは、どう思う」
『死にも意味が有って欲しいです、無駄にするのは罪だから、僕は仕留めたら全部食べるし、利用します。それを悪だって言うのは、ドリアードを否定する事になる、植物にも命は有るから。だからもう、順位なんだと思います。3億人を救うのに1人の犠牲が必要なら、その人が3億人分の価値が有るか無いかも、考えるべきだと思います』
「それ、凄く難しくない?」
『そうなんですよね、ハナさんでもそう思うんですね』
「しかも価値は後から変わる。そうなるともう、やっぱり桁かなって思う、3億人も見定めるのは大変だろうし」
『でも3億人が悪人だったら、僕は犠牲になりたくないし、ハナさんにもなって欲しくない』
「何処までの罪を許すかは?キリストさんしか石を投げられないのはアカンでしょう」
《罪にも造詣が深そうですね》
「と言うか、チョコバーを盗むのは悪いけど、ネグレクトなら親が悪い、けどその環境を放置してる国家の方がもっと悪いじゃない。なら責任の果ては国家、飢えと貧困と寒さは人を追い詰める、どん底は転がり落ちた先で、滑り止めは国家が用意するもの。ただ何処まで手を差し伸べるか、何処まで国家の責任にするかは、世界情勢次第。けど、その世界情勢にしたのは誰か、それは少なくとも大人。その大人を作ったのは、国、世界、そう循環してしまうのでは、と」
《どの様な問題を考えた時、それを思い付いたのでしょう》
「独裁者や独裁国家について。トップだけが悪いんだって晒し物にしてるけど、本当にそうなのかって。でもトップが殺されても終わらなかった組織も有るしなと。だからお家断絶って、ある意味では理にかなってると思う、体制を崩すなら組織を潰さないとって」
『あの、僕らの居た世界での事ですよね』
「うん、君も知ってるだろう組織や国家の話も含む。パパは何か言ってた?」
『それも、情報が足りてるかどうか判断してから、判断すべきだ、って』
「良いパパだ」
病弱だった事、家族の事、環境。
全部が全部、ハナさんが死と生を考える切っ掛けになって、それが良いか悪いかとなると、この結論自体は良い結果。
けど、そう追い詰められなくても、そう答えを導き出せないんだろうか。
『ハナさんの様な環境じゃ無いと、この答えは出せないんでしょうか』
ハナの死生観か。
「いや、それこそショナは?」
「僕は、一瞬だったので、正直そこまでは。国家を担う役割については考えましたけど、ココには悪の組織は無かったので」
「俺もだ、ココに来るまで人生は自分で切り開くとか、何とかなるとか思ってたんだが。ならないからこそ役割分担が有って、良い意味で支え合わないと緊急時には混乱をきたす。それは家族単位でも、国家単位でもだ、けど俺は協調路線を、逸脱しかけた。お前に任せていれば良いと思い込もうとした、楽をする為に」
「アンタでもそんな事を思う時が有るのね」
「だった、だな。腹は満たされたか?」
「そこそこ、眠くない?」
『あ、もうこんな時間なんですね』
「あらあら」
『お前はまだ起きてられるだろネイハム』
《お先にお帰り頂いて大丈夫ですよ、》
「すまん、また、ごちそうさまでした、お邪魔しました」
『ご馳走様でした、お邪魔しました』
『またおいでね』
『そうだよ、息抜きに来てくれたまえ』
《ウチにもね、ふふふ》
『ならウチにもだな』
「おう、じゃあな桜木君」
ハナとエミール達が帰り、本場はここから。
「ふふふ、赤ちゃんみたいで可愛いでしょう」
《けど様子を見ながら食べてたから、次はじっくり食べて貰いたいわね》
『そうだね、それまでにもっと好みの味を聞いておかないとだ』
『美術品の話が出来なくて残念だよ僕は』
「妹は楽しみを後で取っておくタイプでな、気を抜くと直ぐに厄災後だ何だと先伸ばしにするんだ。良ければ誘ってやってくれないか」
『なら、コレを渡しておいておくれよ、フリーパスだ』
《じゃあウチのも》
「ちょっと、流石にアンタのは、従者に渡しておきなさいよね」
「おう、分かった」
『で、ついでに俺らにも会う理由は何だ?』
「俺は帰還予定なんでな、ハナを宜しく頼むと言いたかったんだ」
《そもそもの発端は私です、顔見せと対応の様子を見たかっただけなので、ご心配無く》
「ただ俺はもう1つ、悲嘆について聞きたい」
次にハナが気にするかも知れない事は、ココに居ない悲嘆。
「それは、どうしてかしら」
《私が推察しても?》
「おう」
《こうなると次に桜木花子が気にするのは、悲嘆》
《あぁ、成程ね》
『そうか、だが消息は掴めているのか?』
「いや、だが既に神々の協力体制が広まっている、下手をすれば敢えて誰かが教えるかも知れない」
『あぁ、だがもう施設は使えないだろう』
「残念と言うべきか、神と言うか人間と言うか、そう言う存在が生まれてしまってな。それが居場所を教える可能性が有る」
「ちょ、聞いて無いわよ?」
「知恵神が2神、統合した、ホムンクルスを使ってな」
《と言うか、我の枝葉も繋がっておるでな、3神じゃよね》
「その、それって今は何処なのよ」
「浮島だ、人の形を初めて得たんで訓練中だ」
『で、それが教えるかも知れないとしてだ』
《あぁ、あの子のフェロモンを相殺するかも知れないわね》
《じゃの、ロキとルシフェルのも影響を受けんかったでな、可能性は高いんじゃが》
『情報が無い、だろう』
《だった、じゃな、アイオロスが知っておってな、もう大丈夫そうじゃ》
「おい、今日は」
《今日は、じゃが、請われれば教えるつもりじゃよ》
「はぁ」
《そう、あの子が人間になれるのね》
『アレだけはもうな、どうしようも無かったから、良いのかも知れないな』
《ですが、万が一にも影響しては》
『私が付き添うよ』
「ルシフェル」
「なら安心ね、それより統合した子よ」
《そのお陰で桜木花子が持ち直したんです、従者との関係も》
「そう、そうよね、心配した割には冷静だったのはそこが理由なのね」
エナさんの世話は、正直楽しい。
こう、寝る前に愚図らなければ。
『ぃっしょにねるぅ』
「君は男の子、ワシ女の子、おやすみ。回収しておくれショナ」
「はい、行きましょう」
『ぅう』
「懐かれてますね桜木様」
「刷り込みじゃね」
最高機密を得た事で、ショナにエナさんを守って貰うと云う言い訳が成立してしまい、拒絶する理由が無くなってしまった。
なので、元通りになってしまった。
「私は何が有っても離れませんからね」
こうしてすっかり思考も読まれ、ミーシャに先手を打たれ。
『ねよねよ』
《もふもふをどうぞ》
「ありがとうございます」
こう、寝かし付けられて。
《これ、問題を先送りにしておるかも、等と考えるでないよ。考えるのは日が出てからじゃ》
もう、手のひらでコロコロと、ぬくぬくと。




