2月1日
今日は猫の街だった。
「もふもふでしたね!」
「ね、猫触りてぇ」
《もー!》
『クーロン達が居るでしょ!』
「ぅう、抉れるぅ」
寝起きに嫉妬ドリルを食らい、ネイハム先生に報告へ。
《最後にはパレード、大団円ですね》
「だね、実際にはパレード見た事無いのにね、不思議」
《では厄災後の予定に入れておきましょう》
「ならサーカス宜しく、テントのヤツが良い」
もっと言うと海辺の遊園地とか、ガチでお城とかも見たい。
おタケ、完全に油断して出遅れてんの。
目覚めるのに時間掛って、目の前にはショナ君の死体。
ハナちゃんはちょっと放心状態になりかけてたけど、おタケの声でショナ君をストレージに入れて、戦闘態勢に入った。
おタケ今回は全然鍛えて無いのにさ、経験って凄いよね、何とかハナちゃんに向かわせない様にしてんだけど。
全然ダメ。
んで本来と同じくマーリンが助力して、ショナ君も助かった。
けど、相当のダメージだよね、コレ。
『あぁ、どうなるんだろうなぁ』
コレでラブコメるか、バッドエンドか、俺的にはメリバなら満足。
孤独死エンドだけは許さないよハナちゃん。
ココは。
「紫苑さん」
「ココ病院、君は1度、死んだ」
「え」
「後で映像を見せるけど、先ずは検査とかだから。ごめんね」
良い終えるなり、紫苑さんは病室を出てしまった。
そして状況が整理出来ないまま、問診を受け、検査をされ、ネイハム先生との面談に。
《最後に覚えている事は?》
「公園です、公園の風景です。その前は警報が鳴って、武光さんはまだ寝てるから、と、僕が先に公園へ行った所で、記憶が途切れてます」
《そこで君は完全に死にました》
「映像は有りますか?」
《後衛の賢人君の映像ですが、その前に質問です。従者を辞める気は有りませんか?》
「え?」
《これから先も同じような事が起きるかも知れません、それを念頭に置いて、映像を見て下さい》
どうして、何故そんな事を言われたのか。
映像の最後に答えが有った。
完全に紫苑さんが取り乱して、過呼吸を起こしかけて。
「信じてたんです、けどどこかで、夢は夢だと思ってたんです」
《昼間のは予知夢だとは》
「思ってたのに、信じてたのに、賢人君だったからと、僕が出て」
《結果的に倒せたにも関わらず、桜木花子は未だに罪悪感を背負っています。武光君と共に行けば良かったのでは、と》
「それでもきっと、誰かが」
《はい、アレは狙撃に近いのではと。警報から時間は経っていたのに、一見して敵は見えなかった、そして的確に君の心臓に落ちました。だからこそ誰が被害に遭ってもおかしくは無かったんですが、君がまた死ぬのには耐えられないからと、桜木花子からの要望です、自分の従者を降りるようにと》
「僕は」
《君はもう既にアンカーなんです、軸で基準点。それを失えば完全にバランスを失いかねない、だから私は君にそもそも従者を辞めてはどうか、と勧めようと思ったんです》
「今直ぐには」
《ではご自宅か、入院か、ご実家でも宜しいかと》
「その、ハンで、賢人君や武光さんと相談したいのですが」
《暫くは距離を置くべきかと》
「現実味を失いそうなので、会わない様にするので、お願いします」
《分かりました》
ショナさん、心ここにあらずって感じ。
「何でココなんすか?」
「仕事の状態に切り替えられたらなと、思ったんですけど、ダメみたいですね」
「1つ1つで、何がショックっすか?」
「辞めて欲しいと思われてる事に、整理がつかなくて」
「あぁ、大事だからしょうがないっすよね。けどそれって逆に、桜木様の傍に居るべきだと思うんすよ。だって今、1番強いのって、桜木様じゃないっすか?」
「居て、良いんですかね?」
「嫌いだ何だってより、大事だから遠くに置きたいだけで。けど、ショナさんも覚悟しなきゃなんすよね、弱点になっちゃうから、どうしたって今まで通りは無理。下手したらココに軟禁っすよ」
「それは、ちょっと。困る様な、困らない気もする様な」
「まぁ、辞めても辞めなくても、コレは俺はもう、何も言えないっす。またってなったら、本当に守って貰っちゃう側になるかもなんで」
「それが、嫌かも知れないとかは」
「いやー、無いと思いますよ、それよりも守れない事の方を気にすると思うんで。守られ慣れないと、っすね」
「そこは、大丈夫だとは思いますけど」
「後は説得っすよねぇ。ショナさんには、結婚して孫を見られる様な穏やかな老後を迎えて欲しいって、だから従者は辞めて欲しい。けど、それは無理かもだから、省庁で働いてて欲しいって、そこまで言ってたんで。凄い、手強いと思うんすよ、頑固発揮しちゃってるんで」
「今は落ち着いてるんですか?」
「あの時だけっすよ、ショナさんに冷静に判断して貰いたいなら、冷静になるべきだって先生が言って。スッて落ち着いて、大丈夫っすよね?」
《紫苑のまま、落ち着く為にとおタケと料理中じゃ》
「じゃあ、武光さんと話すのは先になりそうですね」
《いや、大丈夫じゃ》
《はい、コチラへ向かってますよ》
賢人と入れ替わりに、ショナ君の部屋へ。
「大丈夫か」
「いえ、凄く混乱してます。省庁に引き籠もるべきなのも分かります、けどこの先、それこそ対地球になってしまったら、何処だって危なくなる。なら、桜木さんの近くが安全。けど一緒に行動して、僕を庇う様な事態が起きたら、それこそ僕は立ち直れない」
「なら精霊のソラに約束させたら良い、決して自分を庇わせるなと。それか、本当に離れるか。ただ、今最も大事なのは、ショナ君がどうしたいかだ。すべき、も大事だが、君がどうしたいか、だ」
今回だからと言うか、本当ならこの選択肢は、従者全員に存在していた。
本当に偶々、今まで誰も抜けなかっただけで、賢人だって少し間違えば辞めていただろう。
そして今回も、賢人は辞めるか辞めないか、俺には全く分からん。
「居ても、良いんでしょうか」
「俺は構わん。だがもし優先順位を付けるとなれば、ハナ、エミールの次に君だ」
「説得が、出来るでしょうか」
「出来るかじゃない、やるんだ」
紫苑さんに会いに行くと、魔王の後ろに隠れられてしまった。
泣いていたんだろうか、それとも顔を合わせ辛いだけなんだろうか。
「紫苑さん、そのままで良いので、先ずは僕の意見を聞いて下さい」
「ぉぅ」
「色々と検討した結果、一緒に居る事にしました」
「冷静に考えてくれ」
「考えました。先ず死ぬ危険性ですが、ココか地上、どちらが危ないと思いますか」
「地上」
「次に、僕1人と桜木さんと居る方、どっちが危ないと思いますか」
「どっこい」
「不正解です、桜木さんが居なかったら僕は死んだままなので、1人の方が危ないです」
「でも危ない目に」
「桜木さんが生きてさえいてくれたら、実質僕は不死だと思います、何せ実際に生き返ったので、僕は不死です」
「でもまた、死ぬの怖いでしょうよ」
「死んだままの方が怖いです」
「でも」
「従者じゃなくなって、僕が何処かで厄災で死んだら、どう思いますか?運命だって言って普通に過ごせますか?」
「辞めるなら、後悔しない様に、頑張ります」
「そう後悔するなら、近くに置いておいた方が良いと思いませんか」
「だけども、厄災が」
「最初に動画を見た時はただ怖いと思うだけで、何が怖いのかが分からなかったんです。けど武光さんや賢人君と話して、死ぬのよりも、死んだままの事を想像した方が怖かったんです。そして僕の知らない所で桜木に死なれても嫌なんです。だから、今まで通り、僕は従者を続けます」
桜木さんが生きてさえいてくれたら、僕はまた生き返れる。
そして桜木さんが死んだら、僕も死んだまま。
例え僕が死んだままでも、桜木さんが生きててくれれば良い。
1番怖いのは、僕が生きて、桜木さんが死ぬ事。
「コッチは、死なれるの嫌なんですが」
「生き返らせるのは嫌ですか?」
「そう嫌と言うか」
「僕は生き返れるのは嫌じゃないです。ソラさん、もし桜木さんが僕を庇おうとしたら止めて下さい」
《了解》
「何を勝手に」
「勿論、命を粗末にする気も有りません。僕はただ前のまま、従者をしたいんです」
「ぅう」
「はなちゃんの負けですね」
「だな」
「お昼にしましょー?」
けれど、紫苑さんは味見でお腹いっぱいだからと、外へ。
神獣をギュッとして。
思わず、抱き締めたいなと。
俺はハナと食べるからと、紫苑の横へ。
「怖いか」
「守らなくて良いとか言われそうだけど、そう思ってしまうと、何か有った時にお互いにダメージを食らいそうなので」
「お互いに守り合えば最強なんじゃないか?」
「足を引っ張るかもって、この前言ってた、それはショナの望みじゃ無いので」
「じゃあ遠くで死んでて欲しいか?」
「それも違うのよ、ごめんな、なよなよしてて」
「いや、コレが正常だろう。よし守るぞ、だなんて現実が見えて無さ過ぎる。そうだな、五十六先生に考えて貰うか」
「そこを他人任せにして良いものか」
「適材適所、お前は散々悩んだ、それでも答えが出ないなら、だ」
「落ち込んだまま、何もしたくない」
「それこそネイハムや五十六先生の出番じゃ無いのか?」
「確かにそうだけど」
「よし、コッチの用事も有るし、呼ぶぞ」
「ふぇい」
ついでにリズも呼び、魔王も加えて話し合いへ。
「性質の真価を発揮したんだ、僕としては大喜びなんだけどねぇ」
「目の前で死なれたんだ、そら辛いだろ」
「だけどねぇ、生き返ったんだよ?結果を重視しても良いじゃないか」
「だが、当の本人は難しいらしい」
「ふぇい」
「いや、俺も今の親に1度でも死なれたらこうなるぞ」
「だけどだよ、じゃあ親の意向を無視して親元を離れるって言うのかい?」
「それは、俺は小ささの問題で呑むかもだけどだ」
夕焼けを背景にするテラスで、どう着地すべきか其々が模索する中。
見慣れた人影が。
『ねぇねぇ、何の話?』
「ロキ神」
《蘇生について、成功させたんですが、罪悪感を感じているんです》
『凄いじゃない、なのにどうして落ち込んでるのかな?』
《先んじて出た際に従者が標的になったので》
『しっかりと役目を果たした、けど生き返った、のに何の問題が有るの?』
「でたよ、神様達の死生観」
「いや、今回に限っては僕もその死生観で良いと思うよ、ねぇ魔王」
「そうですね、人間の前提がはなちゃんの周りに限り、変わったって事で」
《まぁ、そう簡単に捉える方が楽ではありますけど》
『あ、良い神様を紹介したげるよ、おいで』
あぁ、ヘル神か。
「行ってこい、それでも悩むなら俺らが看破してやる」
「そうだねぇ、暫し作戦会議をしておくよ」
そうしてハナはヘルヘイムへ。
ショナ君はネイハムと再面談し、俺らは理想郷へ。
どうしたって比べて、苛立ってしまうな。
「片面しか見ずに批判さえしていれば良い、そんな考えが透けて見えていて、実に浅ましいな」
今は、理想郷で一神教の復興を夢見るテロリスト集団を捕縛し終えたんだけど。
武光君の苛立ち、凄いねぇ。
「伝わらないだろうねぇ」
「だが不快感の仕返しは出来た」
「そう君みたいに他人にぶつけてくれたら良いんだけどねぇ」
「俺は比べる事を知ってしまったんでな、違いはそこだろう」
『まぁ、理解させるのは俺らの仕事だしな、良くやった』
「後は、自治区だけか」
『だな』
「パンパンじゃない?自称人権保護団体に文句を言われたくないんだけども」
『あぁ、そこもついでに何とかする』
「あぁ、ココでも問題を起こしてるのか、厄介なヤツらだ」
コレ、桜木君を失ったら、武光君の方が魔王か大罪化しそうだよねぇ。
「そう、じゃあ解散かな」
「だな」
桜木さんとは元通り、普通通りとはいかず、寧ろ距離と壁が広がってしまった。
「まぁ、俺の休暇が入るんで、そこでどうなるかっすよ。長期戦を見込んどきましょ」
「君は、復帰予定なんですか?」
「勿論っすよ、死ぬかもって思うけど、それこそ生き返れるなら実質チャラじゃないっすか」
「チャラって」
「俺、桜木様がもっと辛いのって、きっと見殺しにする事だと思うんすよね。だから、俺らがすべきなのって、許したり、敵に止めを刺す事だと思うんすよ。流石にまだその覚悟は出来ないっすけど、そう念頭に置いてるんで、生き死には別に気にして無いっす」
「そこまで」
「いや、一応戦闘の場に居たんで、その差っすよ。凄い何も出来なかったから、じゃあ、何が出来るかなって」
「そうなんですね、すみません、ありがとうございました」
「いや、休暇は明日の夜からだし。気にしないで下さいよ、きっと少し違ったら、俺だったかもなんで」




