表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/174

1月31日

 時差に耐えながらも、何とか日付は越えたのだが。


「あぁ、もう休んでくれて構わないよ武光君。ホルモンバランスが傾いているだろうし、無理は難しいだろう」

「らしいな、すまん」


 そして映画館ではハナの挙動を巻き戻しで確認。


『トルコ、ショナ君が居た方が良かった?』

「いや、コレに関しては早急に事を進めても良い事は無さそうなんでな」


『けど、進みそうだよ?』


 あぁ、賢人め。




 ケント君、良いね、ショナ君の顔まで確認してくれてさ。


「余計な事を」

『けど、そうなるかは分からないよ?』


 コレ、クトゥルフを得たかどうかってより、おタケが弱音を吐いたから微妙に変化してるっぽいんだよねぇ。

 後はいつ、()()()()を見るか、いつ襲ってくるかなんだけど。

 このまま暫くは穏やかに過ごさせて欲しいな。

 だって、油断した時の方がダメージってデカいし、ラブコメしてるし。


『本当に君は相変わらず悪趣味だな』

『本当よね、ふふふ』


 コイツらの姿も声も、おタケには認識出来て無いんだよな。

 だから反論も出来ないし、させて貰えないの、俺が万能を否定しちゃったから。


 あぁ、何かに嵌められたのは分かってんだけど、何なのかがサッパリなんだよなぁ。

 はぁ、面白い事なら良いんだけど。


『大丈夫、少なくとも今は楽しいだろう』


 ハナちゃん、実は君のおじさんは確かに酒には弱いけど、良い性格してるんだよぉ。






 賢人君の顔は濃いめ、だけども。


「いや、むり」

「あー、やっぱり、ショナさんみたいな薄い系が好きっすよね?」


「おう」

「ですよねー」


「そのショナは寝たままか、今日もなの?」

「いや、交代するらしいんで、そろそろかと」


 ほう。


「ほう、寝顔ゲットしに行くか」

「うっす」


 お宝フォルダをね、魔素の回復にほら、必要だから。


 この作戦は精霊にも神様にも筒抜け。

 その恩恵なのか、熟睡するショナの寝顔を無事にゲット出来た。


(コレ、起こすべき?)

(昼寝をしっかりするって言ってたんで、大丈夫じゃないっすかね)


(変身)

(ちょ、何をする気なんすか)


(BL)

(あぁ)




「おはよう」


 目の前には紫苑さん。


 確か、僕は寝てて。


「お、はようございます」


 ニコニコして、コレは完全に誂う時の顔。


 桜木さんが顔を隠したくなる気持ちが、今やっと、初めてちゃんと理解出来た。


「おう」

「あの、どいて頂けますか」


「おうよ」


 あぁ、賢人君まで。


「賢人君」

「ひゃい!」

「まぁまぁ、寝過ごした君が悪いと言う事にしてくれ」


 目覚ましを確認すると、確かに設定した筈が解除されていて、今は起床予定の1分後。

 他のは、紫苑さんのストレージに入れられていたらしい。


「ねす、賢人君」

「いやー、桜木様にご相談をと、後輩なりの配慮っすよ」

「迷ったんだけどね、起こそうって事になりまして、はい」


「無難に起こす考えは無かったんですか?」

「無いねぇ」

「らしいっす」


「止めなかったんですね」

「あっ、思い付かなかったんすよねぇ」

「らしいっす」


「分かりました、取り敢えず向こうで待ってて下さい」


「はーい」

「うっす」




 コレ、怒られるんすかねぇ。


「怒られちゃうのかなぁ」

「そうっすねぇ」


「この顔もダメかなぁ」

「あ、桜木様的にはどうなんすか?」


「可~良」

「優じゃないんすね」


「遅いなぁ」

「まだ3分も経って無いっすよ」


「カップ麺ならもう食える」

「固め好きっすね」


「カップ焼きそばならダルダルでも良」

「優は?」


「バッサバサの鉄板焼きそば、青ノリまみれ、マヨ少なめ、紅ショウガは普通で」

「あぁ、喰いてぇ」


「ビールと?」

「そっすねぇ、キンキンに冷えたビールと熱々の焼きそば」


「そうしたらビール飲めると思う?」

「寧ろ本場と同じでザワークラウトとウィンナーで」

「改めて、おはようございます」


「おはようございますぅ」


 そんで普通に朝食の準備って。

 面白味が無いっつうか、怒るのに迷いが有るんすかねぇ。


「怒っても良いんすよ?」


「何を怒れば良いんですか?」

「いや、何か反応してくんないと、桜木様がほら、まだ体育座りなんで」


「あぁ、怒ってませんよ紫苑さん」

「不快だったのでは?」


 あぁ、そっちかぁ。


「え、いえ、ビックリしただけなので。それで少し固まっただけですから」

「あぁ、なら良かった、コレもダメなのかと思うとヒヤヒヤしてたわ」


「もって、どっちも普通だと思いますよ」

「ワシにしたら全然違うんだけどなぁ」


「俺的にも普通に見えてるんすけど、認知検査してみますか?」

「どんなん?」

「瞬発的にどちらかを選ぶんだそうですよ」


「何か、それは少し、もう少し先にしとくわ。魔素回復してからで」

「ですよねー」

「おはようございます!」


 あぁ、蜜仍君が来てくれて助かった。




 今日も魔素回復。

 魔石なら一瞬だけど、その魔石を一瞬で回復させられないので、どれだけ人力で魔素を蓄えられるのか、見定めた方が良いって。

 タケちゃん、過保護。


 皆も、過保護。


「本当に普通?」

「なんなら僕の方が、とすら思いますけど」


「何故」

「薄いとか、地味、なので」


「それと不細工は関係無いわい、濃い方がマズい」

「それ俺を見て言います?」


「マズくなりがち」

「ガン見て」


「あ、タケちゃん大丈夫かなぁ」

「ちょ」

「このまま時間をずらすそうですし、ドリアードも付いてますから」

《じゃの、爆睡じゃ》


 ネイハム先生も同意してたから甘んじてるけど、良いのかな、コレ。




 ハナが魔石を使い、寝て起きる直後、ハナがドリームランドへ行く場面を見てしまったのだが。

 起きるとハナは起きていた。


 そして魔石を使った、と。


「で、どうして魔石を使ったんだ?」

「昨夜は平気だったけど、昼寝でドリームランドへ行っちゃったらアレかなって」


「それで逆にドリームランドへ行ったワケだが、まぁ、良いか。どこまで行ったんだ?」

「漁村攻略したった」


 コレはコレで、分割の方が安心ではあるし。

 負担が少ないならコレで良いのかも知れない。


「そうか、なら次は、夜寝る前に補充にしてみるか」

「おうよ」


 こう、怒られるかも知れないと思った後に、ホッとする表情に手を出したくなるのだろうな。

 頭ポンポンとか言うのは、こんな時にしたくなるのは分かったが、ハナは接触を嫌がるし。


「ネイハムにもう内容は言ったのか?」

「これからやで」


「よし、行ってこい」

「あのさ、甘やかし、過保護では?」


「適材適所、(メイメイ)はタンカーで修繕場、俺は小回りの利くバイクで見回り役。エミールはコレから、全員が全員張り詰めて消耗しているよりは良いだろう」


「おう、次から頑張るわ」

「そうしといてくれ」


「何か食いたいのはある?」

「安徽料理で(メイメイ)が気になるモノを用意しておいてくれ」


「あんき?」

「瑞安なら分かる筈だ、どれが好きか教えてくれよ(メイメイ)


「おう」


 あぁ、危ない、つい可愛がってしまいそうになった。


『何故我慢する』

「よし、じゃあ行ってこい」

「おうよー」


「はぁ、教師は異性の生徒に触れるのは厳禁なんだ」

『お前の妹だろう』


「妹の様に可愛がっている、だ」

『ややこしい奴め』


「だろうな」


 間違っても誤解されない為だ。




 タケちゃんが言ってた料理も気になるが、先ずはドリームランドの話をネイハム先生へ。


 けど蜜仍君が話してくれたので、ほぼ相槌のみ、楽。


「うん、相違無いです」

《このネックレスの事ですけど、少し現実も混ざってるんでしょうかね》


「どうなんじゃろ、神様も天使さんも好きよ、ステンドグラスも」

【ありがとう、良い子良い子】


 それからタケちゃんが言ってた料理について瑞安に尋ねると、タケちゃんの出身地の料理なんだそうだ。

 八大菜系や八大料理と区分けされる中の、福建料理、更にその中の河南料理の中の、安徽料理なんだと。


「ややこしい」

「コチラだと、青森県の、津軽の何か、とかですかね?」


「あぁ、県内でも名物は分かれてたりするんだものね、そうか。津軽と南部で争う位だしな」

「え?」


「常に血みどろの戦いよ、報復に八〇センターのサーバー落としたり」

「桜木さん、冗談なら冗談だって後でちゃんと付け足して下さいね?」


「えー、ネタバラししたく無いー」

『桜木様、コレとかどうでしょう?』


 梅干菜焼肉、ざっと言うと菜っ葉と豚バラの甘辛煮。

 見るからにもう美味しそう、濃い色の皮付き豚バラの角煮なんてもうね。


「こんなんご飯泥棒ですやん」

「脂身ですよ?」


「コレはもう豚足煮込みに近い、豚足のプルプルだけは平気、コラーゲンだからって食わされたからコレだけは平気」

「けど鶏皮は」


「カリカリ以外は無理」

『でも鶏皮もこうしてみたら食べれるかも知れませんよ?』


「カリカリが良い」

「歯応えが良いものが好きですもんね」


「はい」

『じゃあ、中華土鍋はどうですかね?安徽のかどうか微妙なんですけど、こんな感じのでカリカリおこげ付きなんです』


「それ食ってみたい」

『はい!手配しておきますね!』


「つか、さっきのとか材料も欲しい、タケちゃんの味付けを残しておきたいし」

『はい!』


 全く子供とか考えて無いけど、お祖父ちゃんの味ですよ、とかしてみたいじゃない。

 お祖父ちゃん向こうにも居なかったし、この位の妄想は許してくれるでしょう。




 仕訳をし、職員を個別に部屋へと呼び出し、ミカエルを呼び出しただけで震えるとはな。

 悪い事をした自覚が有るだけ、マシ、か。


 他のは味方が来たと喜んで罪悪感の欠片も無い、矯正は相当時間を浪費する事になるのだろう。

 つい、いっそ殺してしまえばとすら。


『もう牢にぶちこむが、良いか?』

「あぁ、すまんな怠惰、出張をさせてしまって」


『いや、初めてが仕事とはな、隣に大声で言ってやりたい位に爽快だ、気にするな』


 口が上手いのに嘘が下手だな、苦々しい顔で良く言う。


「俺に気を使ってくれなくても結構だぞ、ありがとう」

『分かってるなら口車に乗れガキ』


「おう、今度からそうさせて貰うよ」

『可愛くないヤツだ』




 魔王には料理をゲットして貰って、コッチはタケちゃんのフリをしながら買い付け。

 菜っ葉って言っても青梗菜なのか、高菜なのか、そして塩漬けなのか発酵物なのか、単に乾燥させただけなのか。


「聞いておけば良かったかも」

『でもでも、ご自分のお好きな味を追及するなら丁度良いかと』


「それなー、手抜きしてまぁまぁとか嫌だしな」

『僕は酸味アリがオススメです』


「その酸味も色々だものなぁ」

「そうなんですよね、ご本人も知らない意外な隠し味が使われてるかも知れませんし」

『ですよねー、紹興酒も様々ですし、紹興酒だと思ったら白酒使ってた、なんて事も有りそうですし』


「まぁ、足りなかったら後で買い足して貰おう、凄く楽しそうだし」

「ですね、子供達も花茶が大好きだそうですよ」

『可愛いですよね花茶、あ、ココのお茶も買って、飲んで行きましょう』


 ココ独特の赤いお茶、棒棒茶と点心で休憩。


「グーグがココに遊びに来た事は?」

『無いです、今度お誘いしようかと』


「そうしておくれ、ココのお茶も同じかどうか知りたいし」


 ココの泉水で淹れるからこその赤色なんだそう、けど色が同じだからって味や香りはどうなのか、ワシばっかりは無理。

 エミールの好物も買いに行かないとだ。




 転生者隠匿の罪で関係者の逮捕者数を突き付け、神々の介入の条件を提案させる事になったのだが。

 今まで日和ってたせいで進みが遅い。

 正直、帰りたいが、気を抜けさせるのはまだ早いらしい。


「まだ、か」


 俺の一言で慌てふためくなら、もっとマトモに議論して欲しいんだがな。


「まぁまぁ、連日でお疲れでしょうし、ちょっと休憩に帰りましょうかね」


 五十六先生の発言で会議の空気が纏まった、コレが狙いか。

 そして警備に見送られ、浮島へ。


『お帰りなさいませ』

「あぁ、ただいま。ハナはどうだ瑞安」


『はい、かなりのメニューを気に入って頂けたかと、順位付けはもう大変悩まれてましたよ』

「そうか、上位のを出して貰えるか?」


『はい』


 鳩のスープ、川魚の蒸し物、梅干菜焼肉が3位らしい。

 あぁ、アレは好きじゃ無かったか。


「ふふ、藜蒿(リーハオ)はダメだったか」

『あ、早取りのを頂けたので4位でしたよ、シャキシャキして味も美味しいって。けど馬蘭頭(マーラントゥ)はダメでしたね、全然でした』


「だろうな、ふふふ」

『紹興酒は如何ですか、馬蘭頭(マーラントゥ)の味を消すのに少しだけ、たっぷりのお砂糖で飲まれてましたよ』


「あぁ、毒消しも有るしな、少しだけ飲ませて貰うよ」

『はい』


 清明節には清明粿を食って貰いたいな、甘いのと両方を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ