1月27日
ハナには魔石巡りをして貰う事にし、案の定、直ぐに連絡が来た。
【女はダメみたい】
「なら他に思い当たる場所に行ってみたら良い、ついでに神々用の献上品になりそうな土産も頼む」
【成程、おう、行ってくる】
そして今回はマサコ対策の為、悪い召喚者と転生者について学ぶ事に。
武光君、こう学ぶ子なんだねぇ。
「悪い召喚者様、か」
「自分が当て嵌まりたく無いのは勿論、もし次も来るなら、しっかり見極めるべきだろうと思ってな」
《次、ですか》
「あぁ、ココで終われば良い召喚者だけ。だがもし次が来て、俺が前例通りだと見誤れば」
「確かに、問題は大きくなるだろうけど。そうホイホイ来ると思うのかい?」
《対地球を想定すれば、ですか》
「まぁ、来ないなら来ないで良いんだ。ココの道徳規範や流れをハナに教える事が出来るしな」
「桜木君とエミール君を除外している理由はなんだろうか?」
「そうだな、危うい幼さや幼稚さも無い、防衛機制も過剰とは言い切れない、話も通じる。だな」
「ほう、話が通じる子だって言う論拠は何処なんだい?」
「ハナは素直過ぎる位に話を良く聞く、エミールも根は素直なのが見て取れる。向こうの話が通じないヤツとは全く違う、対話や会話が可能なんでな、そう思った」
「となると、それはお身内かな」
「叔母がな、優しいは優しいんだが、直ぐに強く反論するんで子供の頃は避けていた。今、俺は恵まれた環境だが、だからと言って警戒しない理由にはならない」
「成る程ね」
《確かに、武光君の言う事を真逆にすれば、悪い召喚者に当て嵌まるかも知れませんね》
「もしそんな子が来たら、君はどうするつもりなんだい」
「魔法や魔道具を与えない。市井を見て回り、地上や現地民の目線でどうすべきかを考えて貰い、提案をして貰う」
「それは桜木君の為に力を削ぐ様にも見えるけれど、どうなんだい」
「話が通じるのが来れば良いさ、けどハナは夢見や俺らの得られないクトゥルフの力を持っているんだ、俺より優先されるべき戦力だと思っている。それを阻害する様な奴が居れば、当然排除する」
「僕らが、また魔女狩りなんて事をするとでも?」
「状況がそうなれば有り得るだろうが、そうなれば召し上げで逃げて貰うだけだな」
「どこまで想定してるんだか、底が知れないねぇ」
「おう、鍛える時間を脳に回してるんでな、コレでもかなりのフル稼働だ」
「すまないね、向こうの人間だからと言う固定概念が有ったのかも知れない」
「いや、慎重なのも当然だ、俺が悪い召喚者なら何か策略を練っていると思われても、仕方無いだろう」
「まぁ、ココまでの事を聞いたんだし、悪い召喚者対策も再考させてみようかね、国連に」
《ですね、自分達の所に来た想定をして頂いて、炙り出すには良いお題ですし》
「すまんが、頼む」
夕飯にと魔王と共にタケちゃんを迎えに行くと、壮大な溜息を。
魔王には下がって貰い、少し話しを聞く事に。
「どうしたよ」
「あぁ、お帰り妹、少しな、今までの事を振り返ってたんだ」
「お、1人にさせると弱気になるってマジか」
「まぁ、俺も人間なんでな、弱気にもなるさ」
「何で?」
「年上だしな」
「頼りないか?」
「いや、俺はどうしたって帰還するが、下手をすれば厄災が終わった瞬間に帰る事になるかも知れない。そうなったら後始末も何も出来ないだろう、なら何をすべきかと。な」
「あぁ、それで先まで?」
「おう、しかもハナはココに残るんだ、もしかすればエミールも。だからこそ無責任な事も出来ないし、そうなったらどうしても先を、とな」
「大人やね、けど信頼が無いのかとも取れる」
「信頼はしている、だがそれはそれ、信頼とは別の場所に有る問題なんだが。逆の立場ならどうだ?」
「まぁ、実際にエミールの事は心配にはなるが」
「しかも妹の場合は成人していて果ては結婚も有り得る、エミールの相手を選べるとなれば、少しは口を出したくもなるだろう?」
「お姑さんと言うか、口煩い親戚?」
「だな」
「成程ね。お父ちゃん、ちゃんと息抜きしてくれないか?」
「妹がしたらな」
「なんそれ、昨日したわ、マンガアホみたいに読んだ」
「何時間だ」
「2時間無い位だけど」
「なら2時間だな」
「もー」
「しないよりは良いだろう」
「まぁ」
「明日には俺の息抜きに付き合って貰うぞ」
「えー?何をさせる気だ?」
「明日になれば分かるさ」
「と言う事は夜に不向きなのか、あ、夕飯に呼びに来たんだわ」
「よし、帰るか」
タケミツさんから、今後の方針を聞いたけど。
『そんな、勝手に呼んで』
「残念だが、コッチの人間にしたら勝手に来たって感想なのだろう、特に安定していたら余計にそう思ってもおかしくはない」
『そうでしょうけど』
「ココの良い面を見て貰う前に悪いんだが、ココで起こった事を知った上での事でもあると、知って欲しい」
《ワイが人間に捕まった理由を遡る所からやね》
《まぁ、今となっては魔王が暴れていた真の理由、じゃな》
「当時、魔女狩りと呼ばれる虐殺行為を主導していたのが、召喚者と転生者だったんです」
『えっ』
医療と科学の発展の為に、ハナさんの様な能力の人達を皆殺しにしようとしていた。
そして全く無関係な人も利害関係から魔女狩りに加わり、神様や精霊でも止められない、世界を巻き込んだ大きな虐殺行為に発展したって。
「コレは裏情報、正当な理由無しでは開示されない情報なんだが」
「裏を返せばこの事を国連も承知している、と言う事は、コレを戒めに成立した可能性が高いそうです」
「成立年代も被ってるんでな。だからこそ魔王や大罪の監視は勿論、召喚者も転生者も管理している」
「良い様に監視しているだけなら、ですよね」
《そこなんじゃよ、我らでも情報を得られぬでな》
《誰が敵か味方か分からんらしいねんな》
『天使さんでも分からないんですかね?』
「あぁ、確かに、そうか」
《失礼しても宜しいですか?》
「おう、頼む」
《残念ですが、天使除けがなされてまして、私でも情報は得られないのです》
『けど内部の情報は難しくても、誰か味方に出来そうな方は分からないんですか?』
《そうですね……いえ、可能です、許可を頂けました》
「そうか、助かる。すまん、気が付かなくて」
『タケミツさんの国には天使って概念が無いですもんね、仕方無いですよ』
《そうですよ、どうぞお気になさらず》
「ありがとう、助かる」
《ほいで、何処の誰がええねん》
《そうですね……》
勝手に呼んで品定めだなんて酷い人達だと思ってしまったけど、酷い前例が有るからこそで。
なら慎重になっても仕方無いけど、その大事な部分が腐敗してしまうって、やっぱり神様達にも協力をして貰わないとダメなのかも。
鏡通信で桜木花子から武光君の事で相談を持ち掛けられる事に。
【もう少ししっかりすべきかと】
《それは構いませんが、寧ろしっかりすべきだと焦って欲しくないからこそ、色々と考えて下さってるのでは?》
【そう甘えても良いのだろうか】
《余裕が有るから焦らないで良いと言う事でしょうから、甘えとは少し違うかと。憶測ですが、他の事に気を回して欲しいのかも知れませんよ》
【あぁ、ぅうん、けどそう気を使える人間でも無いし】
《こう思い悩まず、伸び伸びと過ごして欲しいのかも知れませんね》
【難しくない?】
《私が逆の立場なら、どれだけ許すのか逆に見定めてやろうとは思いますね。余力とは国力、個人なら許容量、それを敢えて試して自分の立場がどの程度なのかを見定めてから、逃げられる様に余力を貯め込んで、逃げ出す準備を整えますね》
【そう言う想定かぁ】
《中世後期でも、ですね。全員が善人とは限りませんし、たった1人では出来る事は限られるでしょうし。仮に全員が善人でも問題は限られますから、どうしたって逃げ出す準備をしますね》
【もし2人なら?】
《今の武光君と同じ立場なら、同じ様な事をしますよ。けれど私の場合はもっと策略的に動きますね、好きな事だけをしたいので、全力で相手に任せ、動くべきと思った所だけ動く》
【タケちゃんがお人好しの善人だから、配慮してくれてると言いたいのか?】
《話が早くて助かります》
【すみませんね、物分かりが悪いもので】
《いえいえ、この程度で分かって頂けて本当に助かります。それで、ご心配はコレだけですか?》
【タケちゃんに息抜きさせたい】
《様子を見てコチラからも提言させて頂きますけど、ご自身の事も宜しくお願いしますね》
【へい、どうも、ありがとうございました】
《いえ、では》
常に顔を隠し続けたまま、容姿の事で間違いなく誰かに何かを言われた事が有りますねコレ。
問題は誰に、いつ言われたのか。
何もしなければ、長く掛かりそうですね。




