1月26日
ハナがクトゥルフと接触したが、海上の門を見ただけに留まった。
つい、どちらかだけだと思っていたが、本来はクトゥルフの後にアクトゥリアンを得ていた。
俺はまだ、ちゃんとやり直せるのかも知れない。
「よし、俺も頼むか。アクトゥリアン」
【はいはーい!アクトゥリアンですよー!お呼びになりましたよね?能力ですか?】
「おう、ストレージや空間移動を頼む」
【はい!】
銀色の宇宙人に会った後、タケちゃんがストレージをゲットしたので、再びニーダベリルへ行く事に。
「妹、少し気難しいのが居るから一時的に男で行こう」
「おう?」
なんの事かと思えば、ノームさんの事だった。
外見さえ男なら平気って、逆に男らしいと言うか、おや、そも男なんだろうかノームさん。
いや、何かやめとこう。
そうして揉める事も無く、昨日頼んでいた魔導具や、武器を得る事に。
「その髪で男は、どうなんだろうか?」
渡りに舟ですな、やんややんや言われながらも髪を伸ばして切って、伸ばしては切って。
《厄災が終わったらね》
《約束よ》
《絶対よ》
「はぃ」
それから方々を周りエリクサーや鍋を貰い、虚栄心のお店へ。
こう考えるとやはり虚栄心は偏見も無く柔軟で、だがしっかりと考えが有って。
向こうでも欲しい友人の1人だな。
「何よニヤニヤして」
「いや、ハナを宜しく頼む」
「別に、言われなくたって宜しくやってやるわよ」
「おう」
タケちゃん、良く考えるとルシフェルさんにも物怖じしないのよね、肝っ玉父さん過ぎでは。
「ただいまエミール、タコス買って来たよ」
『ありがとうございます』
「さ、皆で食うか」
『メェ~』
シャオヘイは相変わらずメェ~としか言わないし、エリクサーガブガブ飲むし。
けど背中に乗せてくれた。
うん、怖い。
「怖い、降りられない」
「妹は猫猫か、ふふ、ふふふ」
「いや笑って無いで降ろしてくれよ」
「ほらおいで猫猫、ふふふ」
結局はシャオヘイが膝を着いてくれて降りられたけど、シャオヘイってデカいのよな、黒○号もビックリよ。
『早く見てみたいなぁ』
『メェ~』
「そうかそうか。良くなったら競争しよう、だとさ」
『はい、宜しくお願いしますね』
こう、無能だからか、神獣が居るってだけで安心するよね。
「桜木様、エジプトから連絡が来てて、お礼にご招待したいそうっす」
「ほう?」
「あぁ、エリクサー回収のお礼かも知れんな」
「マジか」
マジだった、エリクサー撒いて戦争って。
けど、確かにそうよね、生態系が変わっちゃうだろうし。
「所で、コレは夢見に影響は?」
『いえ勿論、大丈夫ですよ』
抜かりない。
温泉を提案したが、ノーム神は普通に受け入れてくれた。
摩擦を減らす為にもと俺もハナも男性体だったんだが、それだけで流れがココまで変わるものだろうか。
「ノーム神、どうしてそんなに良くしてくれるんだ?」
《そらアンタが元気無かったんやし、温泉で元気が出たらええかなと思って》
『そうなんですか?』
「タケちゃんに?いつよ」
《昨日なんかもう、不安で泣きそうになってはって、そんなんに意地悪したらアカンやろ?》
「女でも?」
《そら……》
「迷うんかい」
《そらそうや、萎れてても毒花は毒やし》
「あぁ、まぁ」
「ハナ、エンジェルトランペットを知ってるか?」
「何それ?知ってる?」
『聞いた事は有る気はするんですけど』
『キダチチョウセンアサガオだね』
《良き香りじゃよ、嗅いでみるかえ?》
「おいやめろ」
《冗談じゃよぅ》
「あまり良い思い出が無いんだ」
『幻覚作用が有る、嗅がない方が良い』
「成程。って言うかタケちゃん嗅いだの?」
「いや、だが、嗅いでしまった者を見た事が有るんでな」
『あぁ、大変でしたねタケミツさん』
《そうかそうか、すまんすまん》
『後でどんな花か見せて貰おう』
「無毒なら嗅ぎたい」
《おう!任せておれよ!》
こう、もっと自然体で居るべきなんだろうか。
武光様の提案で、温泉の後はキノコ祭りになった。
桜木様はスクナ様とキノコの神様に会いに行き、武光様はノーム神と料理をしながら晩酌を楽しんで。
楽しんでるっつうか、少し怪訝な顔っすけど、まぁ良いか。
『すみません、ありがとうございます、僕も早く手伝えたら良いんですけど』
「先ずは何がしたいっすか?」
『は、ぁ、ハナさんの姿が見てみたいです』
《くふふふ、いっちょ前に色気付きおって》
『違いますってば、ただ、どんな人なのかなって』
《ふむ、どうやら、ちぃっと容姿に自信が無いんじゃよねぇ》
「あ、それ、何か聞いてるんすか?」
《いや、無理に聞く事でも無かろうし、どれだけ根深いか不明じゃて。ただ》
「ただ?」
《あの調子じゃから、誰かに何か言われたんじゃろ。特におかしな部分は無いと言うのにのぅ》
『向こうって、本当に心無い人達ばかりですからね。何を言われちゃったんだろう』
「そうっすね、何か聞ける切っ掛けが有るだけでも違うんすけどね」
《じゃの。それで、お主からはどう見えるんじゃ?》
『実はキツそうな顔とか?笑顔はどんな感じなんですか?』
「明るくて楽しいヲタク」
『ヲタク?そうは思えないんですけど』
《まぁ、見てのお楽しみじゃよねぇ》
ハナが山の神々を招き、五十六先生達も呼びたい、と。
あぁ、今度は俺がマサコとハナを比べてしまいそうになった、良くないな。
アイツはアイツの活きる場所が有るんだ、比べるべきじゃない。
「此の度は、誠に、ありがとうございます」
「いえいえいえ、いつもお世話になってるし、ココに呼んだだけですから」
「だな、俺に至っては単なる漁夫の利だ、なぁキノコ神」
《せやせや、それにコレから宜しゅうやってくんやし、そない緊張したら身が保たへんよ。何でも程々に、や》
「はい、ありがとうございます」
《硬いのぅ》
「コレは少し飲ませないといかんな、行くぞキノコ神」
《おう!》
効率化を図るのは良くないのかも知れんが、本来ならいつ何が起こるか分からないんだ。
ココで魔女狩りの情報も出して貰い、討論するか。
武光君やノームと共に今後の方針を決めた後、桜木花子についての相談が始まった。
「俺が居なくなった後の後見人と言うか、父兄としてアイツの保護者になってくれないだろうか」
《私が、ですか?》
「あぁ、見る目があるねぇ武光君は」
《構いませんが、他に候補者はいらっしゃらないんですか?》
「少なくとも最後まで見守る事が出来そうなのは、アナタ位だと思うんだが」
「うんうん、そうだね」
「そうですね、50年後とも言うと、流石に僕らも耄碌しているかも知れませんからね」
「家族との不具合が有りそうなんでな、父兄として、宜しく頼む」
《はい、承知しました》
「よし、呼ぶか」
「ついでにお祝いもしないとだ」
「そうですね」
そう言って武光君が桜木花子を呼び出し。
「俺が居なくなった後の、兄であり父親予定のネイハムだ」
「な」
《宜しくお願いしますね》
「いや、こんな出来が良過ぎる人はちょっと、尻込みするんですけど」
《不出来だからと、怒る様に見えてしまってるんでしょうかね?》
「いや、何か、呆れて見放されそう」
「無い無い、ネイハム君は人間も大罪もエルフも良く知っているからね、どう生きるかの見本は示してくれるだろうけど。沿わないからと言って見放す程、頭は悪く無いよ」
《どう生きるかにそもそも興味が有るので、そんな簡単には見放したりはしませんよ》
「なら、どう言う時に?」
見放され不安、愛着障害、往々にして親との問題が有る場合が多いんですが。
《私以外の人の話も全く聞かない。そう言う、どうしようも無い人間になったら、ですかね》
「独断専行、相談をしない、心をすっかり閉じた独裁者なんかは流石に無理だろうね」
《そうですね、私が居ても無駄、時間の無駄になりますから》
「そうなるかもよ?」
《そう心配される方の殆どは、そうはならずに悩み多き良き人間ですから、そう卑下なさらなくても良いかと》
「父親がクソで、その遺伝子が入ってるし。こう、ココでも向こうでも、評価を得る様な事はしてないし」
《それはコレからですし、寧ろ君が嫌だと思えば変更も可能ですから。徐々に、で》
「まだ先の話だしな、今はその腹積もりって事だけだ」
「ぅうん、そんなに心配かい?」
「多少はな、妹はそう人に愚痴を言ったり弱音を言わないだろう。言っても良いんだと思える相手が居る方が良い、それだけだ」
「カウンセラーを通り越して、父兄?」
「カウンセラー止まりでも構わない、良き見本と思える相手に師事すれば良い。俺としてはネイハム、ただそれだけで構わないさ」
「僕もネイハム君で良いと思うけど、もし他にもっと良い人が現れたらじゃんじゃん推し進めるからね」
「そうですね、私からも推薦させて頂くかも知れませんね」
「それか虚栄心でも良いぞ?」
「あぁ、アレはお兄ちゃんと言うか、お姉ちゃんと言うか」
《私にそう思って頂いて結構ですよ、と言う事だけですよ》
「なら僕はお祖父さんにでもなろうかな」
「早急にでは無いので、桜木様のお心積もりにと、言う事ですから、今はご検討頂けるだけで十分かと」
「ありがとう、ございます」
親子関係に問題が有ったなら、確かに私が適格者かも知れませんが。
先の先を考えての提案なのは分かるんだが、先の先過ぎでは。
「先の先過ぎでは、と思うのは浅慮かね賢人君や」
「いや、俺もいきなりの事で驚いてるんすよ」
「君も知らなかったのか」
「はい、でも、武光様は心配と言うか、配慮してくれてるんじゃないっすかね」
「ほう」
「桜木様は、言ったらアレっすけど、ココでは孤児と言うか、天涯孤独じゃないっすか。ご両親が揃って無いからこその、配慮なのかなーと」
「あぁ、居ない苦労か。確かにクソでも居はしたから、居ない苦労は分からんからなぁ」
「俺も片親なんすけど、こう、俺も弟達にはあんな感じなのかなって感じっすよね」
「珍しいの?」
「死別で再婚しないのはまぁ、珍しいっすね。そんで健康診断でも分からない病気で、脳溢血っす」
「こう言う時は何て言えば良い?」
「あー、ぅうん、かなり前なんで、ご愁傷様って言われてもだし。これはこれは、とか言って誤魔化される感じが楽っすね」
「これはこれは」
「いえいえ。だからまぁ、兄ちゃんなりの当たり前の配慮かもなって、感じっすよね」
「大変?」
「あー、居る大変さと居ない大変さの半々っすね。ラブラブだったんで一時期荒れたんすよ、けどまぁ、今はもうすっかり落ち着いてるんで大丈夫っすよ」
「そうか、半々の大変さも有るのか」
「まぁ、全く居ないってココだとレアなんで、その配慮も有るのかもっすね」
「あぁ、成程」
「けどアレっすよね、あの武光様が弱気とか」
「そのタケちゃんが弱気になるって、想像出来る?」
「そーっすよね、どんな風に弱ってたんすかね?」
「ドリアード何か知ってる?」
《それはそれはもう、ニーダベリルに着いて暫くするとじゃよ、急に腑抜けおってのぅ》
「武光様にも、1人の時間が必要なんすかね?」
「も?」
「エミール様もですけど、桜木様にも必要かもって。早期に神獣が覚醒したし、こう、ゆっくりとした時間が必要なんじゃないかって」
「えー、やっと慣れたのに、そうほっとかれるとワシ、ダラダラしてまうよ?」
「その時間も必要なんじゃね?って」
「こう、親戚の家の感覚だから、別にそこまででも」
「預けられた事があるんすか?」
「夏休みだけよ、父親はゴルフだバーベキューだ会社の付き合いばっか。母親は姉と兄の面倒でパンパンになって、祖母ちゃんの助言で毎年ワシだけ田舎。家族からの良い逃げ場だった」
「逃げ場だったんすね」
「そこで家族の異常性に気付けたから、そんなには歪まなかった。たださ、こう言う話を普通の人にすると空気が暗くて重くなるから嫌なのよね。そこまで悲惨な事を話してるつもりはないのに、酷い人だと過度に可哀想だって言ってきて気色悪いし、凄いのだと、けど親が居るだけマシだろうとか言ってくるし。ただ話してるだけで、普通にウチはねーって返して欲しいだけなのにさ」
「周りの人にも恵まれなさ過ぎっすよね、って感想が先ず出ちゃうんすけど。そこで恵まれてる自分の事を話すのって、勇気が要るんじゃないっすかね?」
「そう言ってくれれば良くないか?そのまんま言ってくれたら、お、恵まれてる家ってどんな感じなの、って」
「ソレ言われた事は?」
「無い、ウチも親がヤバくてさーとかは有るけど、それは無い」
「恵まれなさ過ぎっすよねぇ」
「ですよねー。だからネイハム先生を父兄と思えと言われましても、外見が全く違うし。価値観や認識が歪んでる可能性が高いから、こう、遠慮してしまう的な?」
「そう言っちゃえば良いんじゃないっすか?」
「ですよねー、そうよね、言わないと分からないんだし」
「言えば全てが分かるとは思わないっすけど、言わないと全く分かんないっすからね」
「何かこう、次に話す時は、出だしをお願い出来る?」
「うっす」
「たすかる」
体も変えたし、正直もうストレージ以外は困って無いから、何を話せば良いか分からないのよね。




