表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/174

2月29日

 エリクサーも尽き、最後の魔石を額へ宛てがうと、やっと目を覚ましてくれた。


「紫苑さん」


「何か、映画館を映画館で見てた」

「お帰りなさい、桜木さん」


「おう、ただいま、おはよう」


「よし、私達は少し下がりましょう」

『はい』


「紫苑さん、今は2月29日です、1日、ずっと眠ってたんですよ」

「何か、動きとかは?」


「全く、向こうからの干渉は特に有りません。それと魔石が尽きました、エリクサーも紫苑さんの回復の為に使い果たしました」

「あぁ、マジか、吸い上げられたのか」


「最後、覚えてますか?」


「あぁ、アマ」

「その名を呼んでから失神したんです」


「あぁ、アクトゥリアン」

【はいはいはーい!お力をお貸ししますね】


「おう、頼む」

【はい、では指を】


 そう言ったかどうかで地震が起き、急いテラスへ向かうと、空には竜種の群れが。


 そして目の前には誰も居ないのに、真っ黒い影が。


「アマルテイア」


 紫苑さんがその名を口にすると影に呑まれ、その影すらも消えた。


「アクトゥリアン!」

【私じゃ無いです!】


「なら」


「ショナ君!」

「武光さん!桜木さんが、影に」


「アクトゥリアン」

【私じゃ無いですってば!】


「なら誰が、いや、俺が探す、お前達は竜の背に乗れ」

「なら僕も!」


「大丈夫だ、コイツらは人語を解する、上空で探しててくれ」


「はい」




 礼拝堂の地下への入り口が開いていた。

 点々と血痕が有り、急いで飛び降りると息も絶え絶えのエルヒムが。


《人間て、1度、ダメになると、本当に滅びないと、ダメ、みたいで。だから、滅ぼすんだ。向こうで、生きる、者の、為に、犠牲に、成らないと、いけない》

「機械、止まってる?何で君は死にかけてるの?」


《再起動、して。今、リミッターの、最終解除に、必要だから、他も全部、もう、止まるはず》

「他のって、他の方舟か」


《アマルテイアを、宇宙へ、返して》


【あ!ココだったんですね】

「協力して、ココ再起動させる」


【はい!先ずは指をお願いします】

「はやく」


 指と指を繋げると光り輝き、反対側の手も光り輝くと、機械へと溶け込んだ。


【生体の登録、認証、再起動まで、3、2、1】


「動かせる?」

【はい、地球の静止衛星上へ待機命令を変更可能です】


「それに変更」

【了解。あ、エネルギー不足にで上昇不可、他の命令じゃないと無理です】


「宇宙にさえ行ければ」

【待機命令のみなら変更可能ですね】


「変更」

【了解、変更完了。ですけど、どうします?】


「まだ竜種は居る?」

【勿論ですよ、クーロンも居ますよ】


「クーロン、迎えに来て」

【ご主人様!ご無事で】

【座標を送りますね!では脱出を、ココじゃ私達のワープが使えないんですよぅ】


「分かった」


 螺旋階段を飛び出て直ぐにハッチが閉まると、本当に大丈夫なのか不安になる程の静けさ。


『ご主人様!』

「あぁ、クーロン」

【さ、脱出しましょう、上空へ】


『はい』


 クーロンが礼拝堂を突き破りながら飛び上がると、轟音が響き始めた。


【他のも動いちゃってますけど!?】


「カバンの中身をストレージに移動、様子見させて」

『はい』

【はい!】


「ショナ」

【ご無事ですか?!】


「クーロンと合流して上空に待機中、そっちは」

【僕もです、直後に武光さんが来て竜の背で上空に待機中です】


「そのまま帰ってくれ。タケちゃん何処」

【無事か!】

【前方の、あ、下からエネルギー反応です!】


 クーロンが宙返りで避けてくれたが、肌色の物体が目端を横切った。


「全員もっと上空へ!あの怪物がココにも居る!」

【退避ー!全軍撤退ー!上空へ避難して下さーい!】




 紫苑さんとアクトゥリアンの声を聞いた直後、真後ろで空気を切る音がした。

 僕らの乗った竜の速度が落ち、後ろを確認すると、竜の半身と共にアンリさん達が。


『すまん、油断したらしい』


 翼の有る上半身は無事だけれど、速度は更に落ち。


「真っ直ぐ前を見て、しっかり捕まってて下さい」

「うん」


 我儘を言うと、桜木さんの為に命を使いたかった。

 もっと我儘を言うと、桜木さんと一緒に生きていたかった。


「桜木さんに、紫苑さんに宜しく伝えて下さい」

「そ」


 コレで軽くなるから。


『何をしてるんですか!』

「クーロン」

「なんつー事を」

「紫苑!」

『すまん』


「すみません、アンリさん達が」

「良いから、しっかりつか」


 ガクンと衝撃が走ると。

 真っ暗になって。

 何も聞こえなくて。




 クーロンが半身の竜を鼻先で押し、左手にはショナを持っていた筈だった。

 さっきまではそこに有って、そこに居た。


『あぁ、凄く良い絶望ね』

「アマルテイア、ショナを返して」


『えー、どうしようかなぁ』

「代わりになるから」


『ダメ、意外とアナタの代わりって居ないの、だから生き残って様々な感情を供給してね。ふふふ、良い殺意』

「クーロン!戻って!」

『無理です!転生者も居るんですよ!』


 あぁ、自分に関わらなければ生き残ってた筈なのに。

 地球に残ってたら。


『ふふふ、残念ね。あ、それからもう1つ良い事を教えてあげる、私の名は、シュブニグラス』


 あぁ、全部何もかも、間違えてしまったんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ