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2月23日

 マサコには超法規的措置が取られた。

 ココでの記憶の完全消去と、魔法の封印。


 コレにはエミールも賛否に加えたが、賛成を表明した事に少し驚いた。


『ハナさんの安全の為ですから』


 そうして記憶を削除されたマサコの従者には、ミーシャが進んで手を挙げた。


「好みは分かっていますし、もう慣れてますから」

「私も、他の方に任せるのは危なっかしいですし、シミュレーションに使えないでしょうし」

「すまん、ミーシャ、サイラ」


 このシミュレーションとは、エナの演算もそうだが、ある種の思考実験の事も差す。

 もしもを人力で考える、ココの当たり前らしい。


《では、最初から始めましょうか》


 こうしてマサコは召喚者だが、天使や神々、そしてネイハムと五十六の監視を受けながら、ほぼ転生者と同じプログラムで生活する事になった。


 地上でココの常識を学び、歴史を学び、息抜きには真剣の素振りをし、時には教会へ赴く。


 ハナもいずれは、こんな風に過ごす時が来るんだろうか。




 部屋に案内され、着替えをし、神様とショナ子ちゃんとお茶をする事に。


《世話になったね、どうぞ》


「どうも、お上手でらっしゃる」

《呑み込みが早い方なんだ。君も楽にして良いよ》

「はい、ありがとうございます」


《何処まで知ってくれているだろうか》

「僕がご説明しても宜しいでしょうか」


《うん、頼むよ》

「ココは女性を家長とした、女系制度を維持する世界。そこで古くから崇められる唯一神、“(エルヒム)”と言う名の神がいらっしゃる、と」


《うん、君達は敬称無しのエルヒムで結構だよ。良く勉強してくれたね、ありがとう》

「いえ」

「単刀直入にお尋ねしたいんですけど」


《移民政策をお願いしたいんだ、協力して欲しい》

「どう言った協力要請でしょうか」


《魔素の補充、ソチラに行くにしても膨大な魔素を消費するからね》

「それについてなのですが、コチラで用意する移民船を利用する方法を、ご提案させて頂きたいのですが」


《お願いしたいのだけれど、見慣れぬ存在に対して非常に憶病なんだ。外見を見慣れた素材で用意して貰えるかな》

「ココの石材みたいな見た目って事?」


《うん、もう創世記を解読してくれているなら分かると思うけど、何でも悪魔だと思い易いんだココの住民は。だから我儘だけれどそうして欲しい、混乱して暴れられてもお互いに困るだろうからね》

「はい、考慮させて頂きます」


《けれど、どの位掛かるだろうか》

「通常なら180日も掛からないかと」


《そう、けど君らの力を借りられたら、もう少し早く済むよね》

「魔素の供給?」


《うん。けど先ずはココに救う価値が有ると思えるかどうか、だよね。暫く見学してみて貰えるかな》

「それなんですが、僕らの帰還方法をお伺いしたいんですが」


《ココへ来た方法と同じ。けどココだけの魔素で送り返す事も可能だけれど、その分ココの寿命も縮んでしまう。180日以上は持つけど、この星をかえすから消費は程々にしたいんだ》

「かえすとは」


《元通り、そのままの意味なのだけれど》

『失礼します、お時間なのですが』


《ココの魔素に関わる事だから、時間をずらすワケにはいかないのだけれど》

「はい、ではまた」


《うん、またね》


 穏やかで普通な感じだけど、元通りにって、本当なら帰る為の魔素は大丈夫なのかしら。




 部屋は1階の角部屋、寝室とベッドは2つ。

 テラスも有り、ココでなら火を使う事も可能だと確認が取れた。


「エリクサー作るべか」

「火を起こしますね」


 空気が乾燥しているからか、ほんのりと息苦しさを感じる。

 けれど魔素の無い世界に居た桜木さんだからなのか、違和感を訴えないまま。


「絹が有ったよね」

「しかも真新しい感じでしたね、綿もですし、緑化された部分全てに人が居るのかも知れませんね」


「科学燃料でも往復が凄そう」

「年単位の可能性も出て来ましたね」


「まぁ、いきなり大量移住は軋轢を生みそうだし、良いのかもね」

「そうですね、報告書を作成しますね」


「おう」


 神獣が獣化する可能性も有り、本当に紫苑さんと2人きり。

 何も問題が起きない様にと願いながら、この時点で確認が出来た事を文章に書き起こし始めた。




 今回は神々の介入が前提に有るお陰で、深海探索用の小型船を魔改造し、宇宙での中継基地として点在させる事が可能になった。

 コレはエミールとハナの案、ハナが転移しないメリットを初めて認識したかも知れない。


「アクトゥリアン、あの転移はどう見てもお前らの技術に思えるんだがな」

【マジで向こうには現在進行系で介入してませんからね?】

『そうなると、遺産って事ですかね?』


【見た限りはそうっぽいですよねぇ〜】

「関わっているかも知れない証拠が有れば、どうなるんだろうな」


【それはもう必死に誤解を解きますよぅ】

『物証も無いとダメなんですね』


【確実に我々が残してきたモノなら、ですけどね】

『高度に発達して、衰退した可能性が有るって事ですよね』

「若しくは、アクトゥリアンがワザと残したか」


【あはー、疑われちゃってるぅ】

「半分な」


【半分もですかぁ】


 本来では最終的な結論を俺は聞かないままに行動していた、と言うかハナに合わせて適当に過ごしていたんだが。

 また、この部分でも後悔する事になるとはな。


『あ、報告が来ましたよ』

「早いな」




 何か、凄い張り詰めてんのよね、ショナ子ちゃん。

 ピリピリって言うか、壁と言うか。

 珍しく緊張してんのかしら。


『失礼します』

「お、アンリちゃん」


『見学へご案内する様にと言われているのですが、もう少し待っているべきでしょうか』

「おう、もう少し」


『では隣りでお待ちしていますね、以降は我々がココでの侍従になりますので』

「あぁ、隣ってそう言う部屋なのね」

「あ、そうなんですね」


 どうしてそんなに慌てた様な、混乱と言うか、取り乱したのかしら。

 流石に夫婦なんだから、別々に寝るのは不味いだろうに。


「どんまい」

「え、いえ、はい」


 え、新婚さん設定なのかしら。




 真室が2つ有るからと油断していて、一緒に眠る事になると分かって少し慌ててしまった。

 アンリさん達には後で上手く誤魔化さないと。


「コッチは終わった」


「はい、コチラも、はい。終わりました」

「結婚して何年になんの?」


「えっと、3ヶ月です」

「新婚さんか、成程。アンリちゃん、終わったよー」


 何をどう納得されたのか分からないまま、施設内部を案内される事に。


 建築様式はロマネスク様式に近いけれど、窓も大きくゴシック様式とも取れる。

 石材に見えるけれど、切り出したのか固めたのかは不明、壁や柱、天井部分はザラザラとした質感だが、床は艶出しが施されているし。


 そう建築物や構造を確認していると、廊下の先で何か有ったのか騒ぎ立てる声が聞こえた。


『申し訳無いのですが、負傷者が出たらしいので、お力をお見せ頂けませんか』

「どう思う?」

「先ずは見てみてからで」


「だそうだ」

『はい』


 非常事態以外は小野坂さん程度の治癒魔法をと抑える様に言って有るので、怪我の程度次第では治さないで欲しいとお願いをしてある。

 なので深手の場合でも、治療はそこまで。


「あぁ、この程度なら完治させられますよね」

「おう」


 骨には達していないので、じっくりと治して貰う事に。




 治しただけで終わらなかった、腕が見てみたいんだって。


『申し訳ございません、どうしても引いて貰えなくて』


 コレははマジ、エルヒムがどうとか言ってたし、ある程度はコチラが戦えるんだと思ってるらしく、凄い挑発してくんの。


「コレ勝って良いの?」

『はい、ですけどお怪我だけは』


「治せるし、大丈夫」


 そして魔剣を本来の取り出し方、ショナ子ちゃんの胸から剣を取り出す。

 ストレージはまだ使えないのに、コレだけは女の子の胸から取り出せるのよね。


 そうして剣を構えてみたけど、ワシ今は男の子だから出力は低いのよね、王子様の剣の筈なのに。


『では、宜しいですか?』

「おう」




 手加減なさって頂いたのか、剣を弾き落とされて模擬試合は無事に終わったのですが。


『“こんなものでは無いと聞いていたんだが”』

『“そうでしたか。では失礼させて頂きますね、”』


『“待て、どうしたら本気を出して貰えるんだろうか”』

『“力や強さを誇示なさらない方ですので、難しいかと”』


『“あぁ、そうか”』

『“はい、では失礼しますね、ルト”』


 彼らは女性達に認められたい、必要とされたいからこそ技を磨き、鍛え、力と強さを誇示したがる。

 ココにも癒しの魔法を使える方々は居るけれど、使えるのは女性のみ、だからこそ癒しの魔法を使えるシオンが珍しい。


 そしてあわよくば子種が欲しいと思う女性が出ても、おかしくはない。

 なので本当なら、女性達には近付けたくは無いのですが。


「お、刺繍?」

『はい、花嫁衣裳です』


 ココは女性ばかり、早く切り上げたいんですが。


《“如何ですか、刺繍”》

『“イナンヌ、彼女は既に彼の家族なんです”』


《“あぁ、そうなんですか、なら”》

『“一対なのだそうです、余計な手出しは問題となるかと”』


《“そう、少し予定とは違うみたいね”》

『“予定、ですか?”』


《“何か行き違いが有っただけだとは思うけど、確認してくるわ、じゃあ失礼するわね”》

『“はい、では”』


 予定、予定とは一体。




 刺繍も気になるけど、1人だけ様子がおかしい子が居る。

 中央で悶々と刺繍する子。


「あの子は?」

『あ、はい、神様に選ばれたアポロと言う少年です』


「少年なのか」

「神様に選ばれる、とは」

『神様と家族になる予定の方です』


「もう少し具体的に頼む」

『あの、他を見学後、お部屋に戻ってからご説明させて頂いても?』

「はい」


 現地視察って大事やな、資料に無かった。


 それから次に案内されたのは展示室、創世記がタペストリーになってる。

 コレは資料にあったけど、実物やっぱり凄いな。




 展示室を閲覧後、昼食にと部屋へ。

 アンリさんも含め3人で食事を取り終わった後、神様の家族について詳しく説明がなされた。


『神様の側仕えになると言う事なのですが、1度仕えると私達でも会う事は出来ません。神様とだけ寝食を共にするお部屋に行き、そこで一生を終えます。そして神官が神様と同様にお世話をなさるので、いつ亡くなられたのか、今も生きてらっしゃるのかは不明です』


「召し上げっぽいね」

「そうですね、ただ生きているか死んでいるのか、誰も確認はしないんですか?」

『はい、踏み入る、踏み込む、越権行為になるので』


「それ、幸せだと思う?」


『神官になるのと同様に、最高位の幸せだと、言われています』

「それでアンリちゃんは幸せだと思うの?」


『今の私は、また、家族と共に地球に戻る事を願っています』

「なら、あの子はどうして怯えてたんだろう」


『怯えている様に見えましたか?』

「それか刺繍が上手く出来無くてイライラしてたか」


『あぁ、地方の子で刺繍は初めてなのだそうで、それかと』

「あぁ、加わったら不味いかね」


『あの、一応、男子禁制なので』

「あら」

「なら僕が。ただ、刺繍をする事に何か意味は有りますか?」


『本来は神様のお相手が刺繍をするので、刺繍には手を出されない方が良いかと』

「あぁ、危ない」

「そうなると、基本的には女性が神様のお相手になると言う事ですか?」


『いえ、神様だけが、男性も女性もお相手となさいます。日頃は他の者の刺繍もあの場所で行うので、その時も協力して女性達が行うのです』

「まさかの両性具有か」

「両方の性を持つ者は居ますか?」


『いえ、いらっしゃらないかと、話にも聞いた事は無いので。寧ろ、そう言った方は、ソチラでは普通に存在するんですか?』


「はい、ただ外見は両方を完全に備えているワケでは無く、どちらかと言えば成人後も未発達な状態に見えるかと。子供が出来無い事で初めて気付く方も居ますし、月経が無くて気付く方も居るそうです」

「毎月の出血ね」


『その、毎月の出血が無いだけで、両方の性を持つ事になるのでしょうか』


「毎月出血が無い理由は他にも色々と有るので」

「アンリちゃん、毎月無いの?」


『はい、子を成せないので、子を成せない者同士、家族になります』

「ならカインもリリスも?」


『はい』

「他にもいらっしゃるんですか?」


『僅かですが、はい。各地の神都へ招かれ、ココでも普通に暮らしています』


 資源の有効活用の為、究極は殺処分かも知れないと思われていたけれど。

 意外とそこまでは困っていないのかも知れない。


「悪く言う気は無いんだけど、普通にって、実際にはどう暮らしてるんだろう」

『私は魔素が見えるので今回の使節団入りし、他の方は、他と同じ様に織物や加工をなさってるかと』


「見に行く事は可能?」

『あ、それは今回の予定には無いので、お伺いしてみないと』

「一応、お願いします」


『はい。そろそろ、午睡のお時間なのですが』

「おう、お昼寝するか」


 日の出と共に起き、日の入りと共に眠る。

 そして日の出が長い期間に対応する為、午睡も義務化されている。


『では』

「おう、おやすみ」

「おやすみなさい」


「なぁ、本当に普通に暮らしてんのかな」

「子孫繁栄には貢献出来ませんから、資源の有効活用には最悪は殺処分だろうと想定されてましたから、意外だなと言う感想ですね」


「実は余力が有るのかなって感じよね」

「そうですね」


「寝れそう?」

「その、眠るかどうか迷ってまして」


「お、ついでにココで溢れさせてみるか」

「在庫は大丈夫ですか?」


「満タンだったし、大丈夫でしょう」


 そして想定されていなかった事態が起きた。

 本来なら直ぐに溢れる筈が、想定以上に飲んでも溢れない。


「紫苑さん、ココへ来てから、息苦しさを感じませんか?」

「いやー、いや、一服すると凄い上手いとかは」


「もしかしたら、この地に吸われてるのでは」

「あぁ、ちょっと君が溢れてみなさいよ」


 けれど僕は直ぐにも溢れ、頭痛が。


「ワシだけか、大丈夫?」

「はい、ありがとうございます。こうなると、紫苑さんが最初から狙いだったのかも知れません」


「えー、マサコちゃんは吸われないの?」

「性質が違うそうなので、はい、多分」


「けど、ワシに会った瞬間に、じゃん」

「そこは先読みなのかと」


「けど吸い上げるだけ、なのか?」

「そこは、正直、想定外です」


「あらー」

「報告書を上げます」


「いや、寝た方が良いよ」

「この部分だけでも上げます」


「だけ、な。魔石使うわ」

「はい、直ぐに上げますからエリクサーは待ってて下さい」


「30秒で支度しな」






 報告書を上げたと言われた瞬間にエリクサーをガブ飲みして、ショナ子ちゃんを寝かせて。

 起きて。


 今、怒られてます。


「せめてベッドにちゃんと入ってからでも良かったじゃないですか」

「すまん、けど何か、駄々こねそうだったので」


「駄々って、別に、ちゃんと眠るつもりでしたよ」

「本当か?何か壁を感じるし、よそよそしいし」


「そ、それは、紫苑さんみたいに慣れて無いからです」


「あぁ、うん?」

『あの、お邪魔しても?』

「はい、どうぞ」


『あの、何か問題でも?』

「いえ」

「いや、ココでの夜の事で揉めてたの、ココではしたく無いんだって」


『あ、それは、何か問題が?』

「まだ1年は2人だけが良いんだって」


『あぁ、そう言うモノなんですね』

「そう、その為の道具が無いからお預けなんだって。ココってそう言うモノ有る?避妊具とか」


『いえ、ココでは生む事が前提ですので』

「ですよね、残念だ」


 うん、凄い顔でショナ子ちゃんにガン見されてる。

 けどこうでもしないと探れないじゃない、性的な事が神聖っぽいし。


「えっと、それで、午後の見学は」

『はい、先ずは先程の事をお伺いをしに行きますので、その後に諸所の見学になってしまうのですが』


「はい、それで大丈夫ですよ」

『はい、では』


「ゆっくりまったりよね、魔素が吸われないなら居ても良いんだが」

「あ、返信を確認しないと」


 そんなに触られるのが嫌なのかしら。




 紫苑さんの顔だったとしても、目の前に有ると気が動転してしまって。

 しかも僕より先に目覚めてたらしく、ニヤニヤと寝顔を見られてて。

 もう、動揺を叱って誤魔化す事しか出来無くて。


 慣れてたら、もう少し違う挙動が出来たのかも知れないけれど。

 こんな状況なのに、ドキドキしてしまって。


「どうですか」

「あ、はい。吸い上げは作為的かどうか不明なまま、なので意図的に引き起こされてるのかも、不明です」


「ピッチャーと魔石は平気そうなのがまた、不思議」

「人からのみ、特定の人物からだけ吸い上げられるにしても。既にさ、紫苑さんにも協力を願い出てるんですから、寧ろ必要が無い筈ですよね」


「偶々?」

「それか偶然のフリ、か。でも結局は意味が分かりませんよね」


「聞いたら答えてくれるかな」

「協力的な姿勢を見せるなら、ですけど。とぼける場合もありますよね」


「マジ神様なら魔道具は効かないからなぁ」

「それか、サイコパス性質の方か」


「目の前で手首でも切る?」

「それで拘束されても困るので、追々で」


『失礼します』

「ほいほい」


『直接、神様がお話になるそうでして』

「あぁ」


『ですが午後は予定が立て込んでいるので、明日にでも、と』

「じゃあ見学かな、ゴリ押し出来無いし」


『すみません』

「いえ」




 テレビとか映画とかで見る様な、普通の生活様式と建物。

 古代ローマとか古代エジプトって感じの建物で、料理だとか洗濯だとか繕い物だとかをしてる。


 0世界とは違て忙しくしたり、喧々とした雰囲気は無い。

 どちらかと言えば長屋的、和気藹々、のんびりゆったり。


「刺繍部屋が1番静かで、仕事のスピードが速い気がするんだが」

『あぁ、いつもはこんな感じですよ。男性のお客様が来ると知って緊張なさったか、少し控え目になさったのかも知れません』


「あら、成程。あ、刺繍の視察は?」

『はい、許可頂けましたので、明日にでもと』

「ありがとうございます」


 燃料には困ってるかも知れないけど、パッと見て魔素に困ってる様には見えないんだよね。




 そして見学を終える頃、日の入りに。

 ココでは軽い夕飯を食べ、早くもベッドへ。


 蜜蠟の蝋燭の小さな灯りと、月光だけ。


「寝れる?」

「報告書を上げないといけないので」


「ですよね」


 紫苑さんはストレッチを始めたので、報告書に集中する事に。


 そうして静かな夜を過ごしていたのに、嬌声が、隣の部屋から。


「え」

「あぁ、家族だって言ってたし、まぁ、仕方無い。そのウチ終わるでしょう」


 気が散るのでテラスで報告書を作成し、もう終わっただろうと部屋に戻ると、まだ。


「1時間は経ってるんですけど」

「3人だからじゃね?」


「あの、寝かし付けて貰えませんか」

「おう」


 魔石で補充し、エリクサーを飲んで貰う事に。


「じゃあ、おやすみなさい」

「コレで溢れさせなかったら、どうする?」


「大声で泣き叫びます」

「あぁ、それは困るわ。おやすみ」


 こう心を乱されると思わなかった。

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