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2月21日

 マサコが、ジョーカー。


『分かるぅ、だよね。けどそう思い至らなかったのって、灯台とか誘蛾灯の力なのかなって思うんだよねぇ』

「あぁ、そうかも知れないな、聞いてみるか」


『つか大丈夫?格闘練習なら付き合うよ?』


「良い、のか?」

『俺で満足させられるかは分からないけど、ストレス発散って大事じゃない?』


「すまん、助かる」




 前回の今頃はラブコメしてて楽しかったんだけどな、ドロドロの重々。


『どう?』

「体が伸びるのはズルいだろう」


『だよねー』

「くっ」


 ネムちゃんにもエナちゃんにも、もう少し早くマサコちゃんの危険性に気付いて欲しかったんだけど。

 善人が3人続いたら、次の子もって、しかも未成年の女の子なら善人だろうって勝手に思っちゃうかもなって。


 だけどさぁ、おタケが言うには大罪化した子だよ?

 短期間に捻じ切れられるって、相当危うい子じゃんか。


『ほらほらー、殺す気で来ないとダメじゃんかー』

「いや、死なれたら困るんだが」


『あ、確かに』

「隙あ、伸びて避けるか」


『本当、ズルいよねぇ~』


 俺も君も、こんなにズルしてんのに、何か不安なんだよね。

 ショナ君とハナちゃんの恋の行方とか、生死とか。






 何か、変な夢見た。


「何か、変な夢見た」

《大丈夫ですか?》

『おはようなの』


「おはよう、うん、大丈夫」


 花子に戻ってふわスベの部屋着に着替えて、下へ。


「お、タケちゃん」

「おう、中華粥だ、食うか?」


「食う」


 そうして冷ましながら食いながら。

 タケちゃんが黒いゴム人間と踊る、奇妙な夢を見た報告をした。


「あぁ、俺もそんな気がする、夢が繋がったのかも知れんな」

「えー、それは恥ずかしいから遠慮しておくわ」


「そうか、残念だ」


 何か、少しスッキリした顔な気がするな、タケちゃん。




 武光君へ、小野坂さんの報告をしに浮島へ。


《エナさんがジョーカーだ、と。私も失念していました、全く善人では無い召喚者も過去にはいたんですよ》


「それは、そう気付けなかったのは、灯台や誘蛾灯の効果なのか?」

《はい、その可能性が高いですが。桜木花子の場合ですと、再査定もさせて頂きましたが影響は無いかと》


「似ているが同じではない、が、似ている。それはつまり、どう言う事なんだろうか」

《必要悪、致し方なく存在を許している悪と言う存在。要は善の対となる存在です、悪が無ければ善も無い、善を説明する為の悪、+が有るなら-も有る。しかも今回は強い+、そのバランスを保つ為の-的存在なのでは、と》


「あぁ、ましてや帰還を望んでいるなら、一時的なバランスを保つ為の存在かも知れない、か」

《そうですね、そして改めて善悪について考えさえる為の存在か》


「役割が確定したとしても、コレは本人には言えないな」

《ですね、五十六先生と君と私だけですし、神々が漏らした場合は記憶の削除を行って頂こうかと》


「あぁ、本人の為にもそれが良いだろう」

《はい。それと、少し顔つきが和らいだ様にも見えますが》


「あぁ、夢で大暴れしたんだ」

《桜木花子は踊っていた、と言っていましたけど。調子が良さそうで何よりです》


「おう、すまなかった」

《いえ、アナタも人間ですものね、何時でもご相談下さい》


「おう」


 この夢のシンクロは偶々か、クトゥルフの気配なのか。

 考察するには情報が少な過ぎるんですよね、クトゥルフは。




 昨日の揉め事のせいなのか、今日はアヴァロンで訓練をする事になってしまった。


『コレってお仕置きなんですかね』

『そうでは無いと思いますが、ユグドラシルへ戻りますか?』


 そうじゃない。

 そうじゃないのに、どうして分かってくれないんだろう。


『いえ、別にいいです』


『お疲れだと感じたなら休憩しても』

『私、怠けたく無いんです』


 少し空気が変になった、どうして。

 正しい事を言ってるのに、間違って無いのに、どうして分かってくれないんだろう。




 私達の希望の光、シオンさんが同行者を伴って私達の星へ来てくれる事になった。


『絶対に、シオンさんをお守りしましょう』


 カインとリリスが深く大きく頷いてくれた。

 同じ気持ちで同じ希望へ向かって協力する。


 もしかしたら、初めてきちんと家族になれたのかも知れない。




 結局、僕は同行する事にした。

 補佐候補だけれど、もし桜木さんを救えるならと。


 けど。


「ショナ君、地球で待つ事は難しいのか」

「はい、僕だけ安全な場所は嫌なので」


「だが最悪の場合は」

「手足を失う程度の覚悟も、最悪は生き残れず桜木さんを苦しめる事になるかも知れません。けどエナさんも居ますし、ネイハム先生も居ますから」


「なら君はハナの代わりが見付けられるとでも」

「だからです、桜木さんの代わりは居ませんから」


「どうにか、安全な場所で待ってては」

「必ず争いが起こるとは限らないんですし、同行者の人数制限が有るかも知れませんから」


「だからこそだ、意地汚くても良いから君には」

「お願いします、制限が掛れば僕は行きたくても行けません。けど、僕なりの桜木さんへの気持ちの示し方なんです、お願いします」


 告白をしてしまったら、断らせると言うストレスを与えてしまうかも知れない。

 例え遠慮しながらハーレムへ入れてくれても、ストレスを与えてしまうかも知れない。


 受け入れて貰えても終わりが有る、断られたらそこで終わり。

 僕は緩慢な状態のまま、従者で居る事を選んだ。


 そして従者として死ねるかも知れない同行者の候補になる事にした。


 後はもう、遺書を書き直すだけ。

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