表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/174

2月18日

 今日は他国へ行く事に。

 空を飛ぶ物体に乗り、初めて空を飛んだ。


 知らない体験、知らない存在、知らない単語。


 どうして私達には無いのか。

 無かったのか、無くなったのか。


『“大昔には、有ったんでしょうかね”』


 私の独り言に対し、カインは初めて意思表示をした。

 大きく1回だけ頷くと、また外を眺め始めた。




 俺らの意図を理解してなのか、使節団員の1人が絵を描き、アンリが語りを始めてくれた。


 そのお陰で言語の解析が進み、多少の事なら意思疎通が可能となった。


『それにしても、私達の知ってる創世記に似てますね』

『そうですね、バベルの塔の崩壊にソドムとゴモラの壊滅』

「知識を得て創り出した気配は無いんだな」

《そうですね、思い出して描く、語っている様にしか見えますが。それすらも偽装している可能性は否定出来ないにしても、後は現地で確認するしか無いでしょう》


 そして小野坂への興味は減退し、今ではハナの事ばかり。


『私達で頑張ったのに、桜木さんが選ばれるんですね』


 マサコには見えない様にエミールを御し、敢えて無視させる事にし、マサコとは離れた場所で話をする事に。


『タケミツさん、どうして僕を止めたんですか』

「あんな風に思うのも当然だとも思ってな、関わった分だけ、苦労の分だけ報いが欲しいと思わないか?」

《プレゼントをあげたなら喜ばれたい、無意識に喜ばれて当然だと思っているからこそ、喜ばれなかったらガッカリしませんか?》


『それは、そうですけど。けどコレは違うじゃないですか』

《それは知っているからですよ、知らなければ、無意識に自分が選ばれるかも知れないと思えますから》

「比べるのは良くないぞ、少なくとも今は、比べて良い時じゃない」


 そう自分にも言い聞かせ、マサコの元へ。


《そろそろ食事にしましょうか》

『はい、けど太りたく無いので、私はお野菜とお豆腐が食べたいんですけど』


《ココではそう太らないと説明はされてませんか?》

『忘れるかもとも聞いてますけど、戻ったら変な食生活が染み付いてても嫌ですし、私はお化粧も身嗜みもしっかりしてたいんです』


 またエミールを御し、食事は2手に分かれる事に。


「じゃあ、また後でな」

『はい、協調性を乱してしまってすみません、けど私は皆さんともっと仲良くなりたいんで、これからも宜しくお願いしますね』


 どうしてこう。


「ぅう」

『タケミツさん?』

『大丈夫ですか武光さん』




 武光さんが胃痛で倒れてしまって、何とか私の魔法で治せたけれど。


《ストレスの原因が無くならない限り、再発するでしょうね》

「あぁ、だろうな」

『辛い物とかお肉とか、控えた方が良いですよ』

『それと、僕らばかりに気を使わないで下さい。未成年でも分別は付いてるんですから、今日だけでもゆっくり休んで下さい』


「すまんが、そうさせて貰う」


 そう言って向かったのは、桜木さんの居る浮島だった。


『大好きなんですね、桜木さん』

『い、あ、そうですね』

《病弱とくれば桜木花子ですから、助言を貰いに行ったのかも知れませんし、心配も有るのでしょうね》


『あぁ、弱いんでしたよね、可哀想ですね』


 私の事も心配はしてくれるけれど、どうしても壁を感じてしまう。


 私と桜木さんの違いは、何だろう。




 ハナと居るだけで楽になる。

 胃も軽くなって、食欲も増す。


「だー、また辛いの使って」

「おう、コレもストレス解消法だ。もし胃がどうにかなっても治してくれるだろう」


「まぁ、そうだけど」

「美味いは辛い、辛いは美味いだ」


「ケツの穴は責任取らんぞ」

「おう」


 そうして馬鹿みたいに好き勝手に食って、暴れて。


「何か、タケちゃんの手足が吹っ飛ぶ事に慣れて来てしまったかも知れない」

「おう、慣れろ慣れろ」


 今ならマサコにも勝てる気がするが、こう考えて俺は負ける質だしな、ならばまだまだだと言う事だろう。




 シャオヘイにエリクサーをがぶがぶ飲まれるし、タケちゃんはポンポン手足を吹き飛ばすし。


「君ら自由にさせると凄い事になるな」

「おう」

『メェー』


「そうかそうか、美味いか」

「どうしたら分かるんかしらね、シャオヘイの言葉」

『メェー』


「その内、だそうだ」

「そのウチねぇ」

『メェー』


「まだ有るだろう、だと」

「はいはい」

『メェー』


 ワシ、実はタケちゃんとシャオヘイ用の人員なのかしら。




 桜木さんの笑顔を見る度に胸が痛む。

 断った場合の最悪の想定、受け入れた場合の最悪の想定。

 ありとあらゆる想定が記された書類には、受け入れ難い想定ばかりだった。


 誰か、又は全員が手籠めにされ、利用される。

 誰か、又は全員が怪我を負う、殺される。


 例え無事に戻れても、次は精神的な面での傷がどの程度のモノになるのか。


 桜木さんが宣言する様に、引き籠るのはマシな方。

 最悪は自傷行為的に性的に奔放になってしまう可能性、家族や子供と言った事への拒絶。


 誰もを拒絶するなら、もう召し上げしかなくなる。


「ワシもう寝るけど、大丈夫かい」

「はい、おやすみなさい桜木さん」


「おう、おやすみ」


 桜木さんにとっての最善を選びたい。

 けど僕には自信が無い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ