2月9日
本来とは少し違う、断片的な夢だった。
人が降り落ち、積み重なる。
これは第2地球の人間なのだろう。
なら、より多くを救うには、どうすべきなのか。
『おはようございます、武光様』
「おう、おはよう」
『おはようございます、タケミツさん』
悪夢と言うか、最初は凄く淡々としていて怖くは無かった。
無感情と言うか、他人事と言うか。
『少し異質だったな、情報を共有する』
「おう、お願いします」
マーリンが居たからなんだろうか、現実なら怖い事が起きたのに。
別に、怖いとか可哀想と言う感情も無しに、人が雨に変わったなと思った。
けど、下を見ると人が折り重なって、山の様になって。
桜木さんが一服する回数が増えた。
もし病気になっても、治癒魔法で治せるから良いだろうと天使さんにも言われたけれど、でも心配になってしまう。
「大丈夫じゃ、無いですよね」
「前半は良かったんだけどね、後半はもう、悲惨」
「気分転換をする気には?」
「いや、コレが気分転換だから大丈夫、普通に訓練するよ」
『サクラちゃん、気分転換に行こう』
「いや、大丈夫だって」
『何処が良い?新婚旅行』
「いや、もう大丈夫だって」
《私の為に何か買って来て?》
「分かった」
先ずはグアムで海に入れ、日光浴をさせ。
「無言で食べてますけど」
「レッドライス、クソ美味い」
「あぁ、後で買いましょうね」
「おう」
海辺でお昼寝をして貰って。
「どうでしたか?」
「悪夢は無し」
そのまま買い物に行って、また海へ。
「練習しますか?」
「こんど」
再びお昼寝をし、オヤツの時間になったらイスタンブールへ。
中身が女性の召喚者様とだけしか聞いて無かったのですが、ちょっと私の好みで困ってしまって。
けどお写真では小さくて可愛らしくて、つい妹の様に可愛がりたくなる感じで。
実際に妹は居ないんですけど、居たらこんな風に回れてたのかと思うと、緊張もすっかり解けて。
「意外とクルミのバクラワも美味しいんですよ」
「本当だ、確かに」
「コッチの方が甘さ控え目ですね」
「うん、美味い」
それと従者さん。
好きが溢れてる様に見えるんですけれど、私の目の錯覚なんでしょうか。
「コレをお願いします」
「あぁ、また勝手に買って」
「お土産ですから」
召喚者様のお取り扱いが非常にお上手で、物腰も柔らかくて優しい従者さん。
まぁ、私の好みでは無いんですけどね。
「あ、服は違うじゃない」
「紫苑さんの部屋着に良いと思うんですけど」
「是非是非、先ずは試着なさってみて下さい」
お似合いなのに、何を遠慮してらっしゃるんでしょうかね、このお2人は。
大使館員とお店を回って、石鹸屋でお茶を頂いて。
男女共同のハマムへ。
「大丈夫ですか?」
「何が?」
「いえ、大丈夫なら良いんですけど」
「あぁ、共同だし大丈夫じゃない?」
違うんです、そうじゃないんです、桜木さん。
何でショナが心配したのか、マキさんは水着だし。
洗ってくれる人はオバちゃんだし。
ガシガシと洗われ、スッキリさっぱりで終わったし。
「どうでしたか?」
「スッキリさっぱり、ハマる」
「良かった」
何を心配したんだろう。
「ありがとうございました」
「いえ、では」
帰りは大使館から浮島へ。
あの心配は一体。
「ハマムでは何を心配したの?」
「いえ、何でも無いです」
「何だよー、言わないと口を利かんぞ」
「男性体は色々と大変なので、大丈夫かなと」
「あぁ、いや、うん、大丈夫でした」
コレはつまり、ショナはマキさんに反応しちゃうかもって事だったのか?
今日も僕は休憩、と言うかお勉強をしながら浮島で過ごしていると、ハナさんがお夕飯にケバブを買って来てくれた。
『美味しいです、ありがとうございます』
「おう、タケちゃんにも買って有るんだけど」
『潜入したままの方が楽だそうですし、僕のストレージに入れておきますね』
「ありがとう」
僕が代わりにクトゥルフを得られたら良いんだけど、悪夢なんて殆ど見た事が無いし。
素養って、どうしたら良いんだろう。




