2月2日
本来なら今日にもホムンクルス製造の許可が出る筈だが、もしかしたら許可が下りないかも知れない。
大きく逸脱した代償として、魔王の無力化が叶わないかも知れない。
もしこのままハナが第2世界へ飛ばされてしまったら、帰って来れるのだろうか。
ショナ君がどうのと言う場合じゃない、コレは命に関わるかも知れない。
誰かに相談したいが、どう相談する、そもそも相談してどうなる。
相談して、更に逸脱するか代償を支払う事になるなら、このまま見守るしか。
『タケミツさん?眉間に凄い谷間が出来てますよ』
「あぁ、すまん、つい考え事をな」
『ハナさんについてですか?』
「お、顔に出てしまっていたか」
『流石に僕でも分かりますよ、空間移動が出来無いってリスクですし』
「俺が待てを掛けたんだ、もし俺が得られるならと。だが明らかな間違いだったかも知れない、神々を良い様に扱える等と思ったつもりは無いんだがな」
【大丈夫ですよぅ、急なご用命も即時対処出来ますし。私って、そんなに信用無いですか?】
「いや、そうじゃないんだ」
【まぁ、リスク分散に関しては確かにそうですね、均一化の果てに有るのは衰退ですから】
『僕に、その素養は無いんでしょうか?』
俺から見てだけど、ギリギリアウトかな。
『ハナちゃんって支えが無ければ可能だったかも、けどそれを次で試す?君が辛く当たって、得られるかどうか怪しい程度じゃないかな?』
「試してはみたいが、正直言ってキツく当たるのは、躊躇うな」
『それで得られるなら良いけど、得られなかったら、バランサーの君が派手に動いてマサコがどうなるか、じゃない』
「あぁ、マサコか」
『そっ、中和剤でも有るんだから、今回は見守ろう』
「だが、最悪はハナが」
『俺、ハナちゃんが弱いだなんて思って無いんだよね。何なら強いとすら思ってる、例えクトゥルフが無くても、ハナちゃんは生き残るって信じてる。君も長く一緒に居るなら、少しは信じてあげたら?』
あれ、コレ、また、俺の言葉じゃない。
あぁ、おじさんか。
「あぁ、そうだな」
俺の言葉で説得したかったのにな、おじさん。
タケちゃん、すっかり元気になって、男の子の日だったんかしら。
「何か、寝て起きて急に元気になった?」
「おう、信じる心も大切だなと思ってな。信じて祈って、それしか出来ない時も有る事を受け入れる」
「度胸が凄いな、そう信じられるのも強さよね」
「ハナもだ、俺の妹なんだから強いに決まってる」
「ふふ、おう」
「桜木さん、柏木さんから連絡が来ました」
「おう?」
「あぁ、やっとか」
タケちゃんがやっとか、と言った意味が分かった。
ホムンクルスが国内でのみ認可された。
「コレ、国際問題になるのでは?」
「問題が起きればだが、大丈夫だろう」
ハナさんとタケミツさんに紹介されたのは、元魔王と名乗る2人の男性。
「アレクシスって名前になった」
『セバスチャンです、どうも』
『あ、はい』
人造人間を使い、魔王を人間にしたんだと言われても。
魔王さんは角と能力以外は普通だったし、どう変わったのか。
「実際に人間だとの認可も得た」
「国内だけだけどねぇ」
『えっ、それじゃあ』
「うん、一歩間違えば国際問題」
「だが成功したんでな、問題無いだろう、と」
『その、国の責任とかは』
「それでだ、女王陛下にも面通しをしておこうと思ってな」
「頑張れ、ワシはもう休む」
『あ、はい』
それから時計塔へ行き、本当に謁見する事に。
エミールは緊張していたものの、実にしっかりとした対応だった。
「うん、立派だったぞエミール」
『はぁ、コレが突然だったら確かにビックリしますよ』
「さーせん、マジで連絡ミスでした」
「まぁ、コレだけ過ごしてもミスはそれだけなんだ、次に生かしてくれたら良い。で、身分証はどうなっている?」
『はい、コチラで内密に用意させて頂きます』
『あ、宜しくお願いします、フィラストさん』
『いえいえ、準備が整うまで、お茶は如何ですか?』
「あぁ、俺は遠慮しておくよ、ハナには転移が無いんでな、戻ろうと思う」
「じゃあ俺が行くよ」
「いや、お前は身分証を受け取ったりだ何だと有るだろう、何か有れば連絡する、待ってろ」
「おう」
そうして浮島へ行くと、ハナは気持ち良さそうに爆睡していた。
今日こそは、ドリームランドへ行って欲しい。




