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1月31日

 ハナが能力を得られぬまま、緊急警報が鳴ってしまった。

 早い、コレも数時間差とは言えど早まってしまった。


「エミールは準備をしてからだ、俺が先に行く」

『え、あ、はい』


 賢人を置いて、代わりに瑞安を連れ、コレでどうなるか。




 紫苑に変身してたから、遅かった、タケちゃんが。


「はなちゃん戻りましょう!」

「魔王、タケちゃんお願い」


「はい、ですからココは一旦」

「魔法が有る、魔法で何とかする。カールラ、クーロン、お願い」

《はい》

『僕はもう1体を牽制します』


 冷静に。

 慌てたら死ぬ。

 冷静に、倒さないと人がもっと死ぬ。




 タケミツさんに言われて連射式も持って来たのに。

 全然、足止めにもならなかった、どんどんハナさんの方へ向かって行ってしまう。


『ハナさん!逃げて下さい!』


 僕の声に怪物は何の反応も示さなかった。

 狙いはハナさん。

 相変わらず僅かな数の目だけが僕の方を見て、僕の方が牽制されている側。




 今回は、俺が死んだらしい。


《武光様!》

「あぁ、瑞安、無事か」


《はい、皆さんも無事ですよ》


 あの場に瑞安も居たお陰で、どうハナが倒したのかが確認出来た。


 今回は紫苑に変身し、雷を何度も打ち込んでいたが僅かに足止めが出来たに過ぎず。

 トドメは以前と同じ様に、手で魔素を握りつぶした。


「俺は、どうなったんだ?」


《亡くなって、ました》

「そうか」


《桜木様が居なかったら死んだままなんですからね!少しは、休んで下さい》


 初めての死の感覚。


 無だった。

 何も無い、突然意識が途切れ、そして覚醒した。


「死天使、俺を生き返らせたら介入になるのか」

【そうだね、あの子が居なければ君は死んだままだった】


「そうか」


 コレが代償。

 運命を大きく動かせば、予測不能な代償を請け負わなくてはいけない。


 もっと大きな事をすれば、こんなモノで済まない程の代償を請け負う事になる。

 俺が請け負うなら向こうで働けなくなった状態での覚醒、脳溢血で半身麻痺か、子供に何か不幸が。


 それを選ぶには、まだ、他の道を模索してからだ。




 死ぬ程怖かった、タケちゃんが死んだままだなんて無理だった。

 生き返らせてしまった。

 良いんだろうか、生死を人間がどうにかしてしまって。

 しかも魂が本当にタケちゃんなのか。


《どう見ても思い悩んでいそうなのでお声を掛けさせて頂いたんですが、他の方が良ければご案内致しますよ》


 ネイハム先生、彼は長寿で知識と経験が有る。

 彼以上の適任者が居るんだろうか。


「アナタより適任者が存在してますか」


《少なくとも国内には存在してはいません、どうしても知識と経験は劣るでしょう。それに、海外ともなれば信頼性と移動の問題が有るので》

「じゃあ相談します」


《では》


 好きな椅子に座ってリラックスしてくれと言われても、無理。


「良いですかね」

《はい、どうぞ》


「生き返ったタケちゃんは本当にタケちゃんなんでしょうか、魂は本物で、タケちゃんはタケちゃんのままなんでしょうか」


《魂の定義、武光君とはどんな存在か、等の前提条件を決めませんか》

「はい」


《私が思う魂とは、個性、個人の意識に知識を持った何か。そして武光君は君の父兄で仲間、どうでしょうか》

「うん、はい、そう思います」


《そして生きるとは変化する事。もし武光君に突然の変化が有れば、可能性は2つ。生死を彷徨う劇的な体験をしたからか、違う魂が入ってしまったから。次に緩やかな変化の場合は、その体験を消化しているからか、徐々に化けの皮が剥がれたか》


「両方の後者が心配です」

《どう考えても武光君だとは思えない行動でも、もし善行なら止めますか?》


「……いいえ」


《では悪行なら?》

「止める」


《魂が同じだった場合でも、その行動に何か違いは有りますか?》

「いや、一緒だ。どうもありがとうございました、すみませんでした、頭が良くないもので」


《いえ、本当に頭が悪いなら逆に悩みませんから、そう卑下しなくても大丈夫ですよ、知能的には充分です》

「今ので何が分かるんですかね」


《悩んでらっしゃったのは、もし武光君では無い魂が入ってしまっていたら、生き返らせた責任を取って殺そうと考えたから。そして殺す基準を見出そうとした、そう思えたので》

「顔に出てた?」


《いえ、ですが生き返った事に浮かれ無かった時点で、どう悩んでいるかは想像出来ました。大雑把に言うと、経験則から導き出された勘です》

「あぁ、普通は喜ぶだけか」


《普通と言うには前提条件が不安定かと。魂が確実に本人の元へ還る保証が有ったなら、君も喜んだのでは》

「まぁ、喜んで、直ぐに落ち込むね、紫苑にならなければ救えたかもだから」


《ですが真っ先に君が出ていたら、君は死んで終わり、だったんですよ》

「そうか、蘇生は頼めないのか」

《じゃの、過度な介入になるでな》


「ワシ、重要じゃん」

《そうじゃよ、せめて神々の介入が採決されるまで、意地でもお主には生きてて貰わねばならんのじゃ》


「いや、寧ろ同族を、同族って」


《ルーマニアにいらっしゃるそうですが、御本人とだけお話する、と》

《付き添いは構わんらしいぞい》


「相談すべきだろうか」

《はい、是非》




 ハナが同族と会いたい、と。


「どうしてなんだ」

「ワシの代わりを探したい、蘇生出来る人は多い方が良い」


「そこか。だが代わりが居るからと」

「無茶はしないよ、死にたく無いもの」


「知りたく無い事まで、知る事になるかも知れないぞ」

「おう、受けて立ってやる」


「そうか、分かった。同行者はどうする」

「タケちゃんにお願いしたい」


「おう」


 そして俺とハナは性別を変え、俺の転移でルーマニアへ。


 だがハナの様な蘇生を出来る者は居なかった、そして性質を知ったハナは、深く落ち込んだ。


「タケちゃん、知ってたのか」

「あぁ、すまなかった」


「いや、コレは悩むよね、ハーレムか血筋か、全てを変えるか。そうよね、人に影響を及ぼすって、何処までの範囲かって話だもんね」

「俺はどんな選択をしても、ハナを応援する。それに神々も介入する予定なんだ、今は決めず、全てが終わって落ち着いてから、悩んでみてくれないか」


「そうよね、厄災が終わってから、よね」

「それに今日は忙しかったんだ、休んでから悩もう」


「おう」




 悩むと寝れないのよね。


《ご主人》

『悩んでる』

「もう少しだけ悩ませてくれ、少ししたら寝るから」

《どう悩んでおるんじゃ》


「ワシが潔癖気味だから良いものを、危険人物だよな、と。従者の親にしてみたら、さぞ心配だろうなと思って」

《そこも覚悟の上じゃろう》

『そしてどう教育するかは国と親次第、好意が芽生えるかどうかは個人次第。心理学の勉強もそれなりに受けているんだ、そう惑わされる事は無いだろう』


「女性を入れるべきかな」

《新規に増やすは微妙じゃろう、そう負担でも無い状況じゃし》

『却って負担を増やす事になりかねんぞ』


「あぁ、それもそうか」

『後はもう、眠って起きてから考えろ』

《そうじゃよ、ほれほれ、寝かし付けてやろう》

《ねよねよ》

『また明日なの』


「おう、おやすみ」

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