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1月29日

 今回も魔素の放出が収まるまでに時間が掛かった。

 だが、どうして距離が縮まないんだ、ハナとショナ君は。


「ゲラゲラ笑ってくれるのを期待したのにな」

「桜木さんの方は本来のレジストだけで充分でした」

『俺にも効かないのは残念だったなぁ、エロいのとか期待してたのにぃ』

《なら我で良かろう?》


『えー、好きな人としたいじゃんねぇ?』

「え、あ、はい」

「おや」

「でだ、特に問題が無いなら。今日はどうしたい、(メイメイ)


「雷電よな、ビリビリを会得したい。ロキさんが神様を紹介してくれるって」

「そうか、名を聞いても良いか?」

『ヘカテ』


 ココでこんなにもショートカットして良いのか。

 空間移動も何も無いままで、起因がどれかも確定していないなら、だからこそ進めるべきなのか。


 だが俺にはクトゥルフが手助けしてくれる気配も無いのだし。

 けれど。


「タケちゃん、そんな悩む?」

「その、母国の神に師事する方が良いのかどうか、でな」


「あぁ、そうか、雷神さんが居るか」

『特には気にしては無さそうだが、会ってみるか?』


「おう」


 コレで良い方向へ行くのかどうか。




 性別判定不明な神様。

 和服と言うか、水色の袴で、神主さんみたいな格好をしてる。


《邪魔するよ、咲雷神だ》

《ふむ、許可するぞぃ》


「桜木花子です」

「李 武光だ」

《宜しく、あぁ、雷電の匂いがするね》


 雷電の匂い?

 近付かれてつい嗅いでしまったけれど、咲雷神からイオンの匂いが。

 コレの事かしら。


「あの、この、イオンの匂いの事ですかね?」

《そうそう、私からも出てる匂いだよ》


 柔らかく優しい笑顔、イケメンと言うべきか、美人と言うべきか。

 神様達、顔面偏差値高過ぎでは。


「顔面偏差値高過ぎ」

《だが元は蛆、この姿は人々に昇華して貰ったに過ぎないよ》

「いや、だとしても美しいのは確かだ」


「うん、凄い」

《ありがとう》


 フワフワ浮いてるけど、ちゃんと感触は有る。

 話せて触れる神様、コレは確かに人間との関わりは程々に、とも言いたくなるよな。


「成程」

(メイメイ)、何を勝手に納得したんだ」


「いや、見目麗しい神々ばかり見てたら、子孫繁栄に不具合が生じそうだなと。なぁ?」

「その、僕には畏れ多過ぎて」

《らしいね、良くそう言われるよ。けれど私にはその機能は無いからね、心配しないで欲しい》


「と言う事は、逆に、あれ?生殖機能が無いと言う事で宜しいですか?」

《そうだね、けれど行為は可能だよ、見る?》


「いや、まだ大丈夫です。痛いとかは?」

《もう無いよ、大丈夫》


「なら良かった」

《ふふ、ありがとう》


「すまんが、その、ハナに雷電の操作をだな」

《けれど先に名が出たのはヘカテ神だ、折角なら一緒にどうだろうか》

《ふむ、歓迎しておるぞぃ》

「おぉ、共演」


 タケちゃん、また悩んでる。


「よし、お願いしてみるか」

「おう、宜しくお願いします」


 タケちゃんに綿を渡し、ニーダベリルで従者達の道具を揃えて貰う事に。






 おタケがヨグに願ってもねぇ、無駄だと思うよ、俺が惹かれるのはハナちゃんだもの。


 闇を抱えてそうで、不安定で、何なら複雑性も有ると尚良い。

 分岐次第で選択が大きく変わってくれるけれど、性格が真反対に変わるのは楽しく無い、元の性格のままに歪む可能性を秘めてるかどうか。


 急に転換すると、ちょっとした切っ掛けで直ぐに冷静になっちゃったら、つまらないからね。

 しかも出来るだけ直ぐに自滅しない方が良い。

 自暴自棄で直ぐに命を捨てるより、苦悩しながら老いさらばえるか、後悔を残して死に絶えるか。


 絶望と恐怖が好き。

 恐怖と苦悩って俺達だから、そこまで思い悩めるかどうか。

 そこが大事。


「俺ではどうしても、ダメか」

『かもねぇ、ハナちゃんと君は真反対だもの』


「なら、得て貰うしか無いのか」

『どうだろうね、今のハナちゃんに得られるかどうか。だって本来とはかなり違うじゃない、ハナちゃんの闇が薄れてるかもだし、そもクトゥルフが興味を示すかどうかだよね』


「な」

『もしもだよ、向こうのクトゥルフって意地悪みたいだからさ』


 急いで起きちゃって。

 さ、どうなるかな。






 昼寝から目覚めると、ハナが黒い小人に変身してしまったとの報告が入った。

 だが変身は直ぐに解除出来たそうで、消耗したのかそのまま昼寝を始めたらしい。


 本来ならもっと後で、ドリームランドから土蜘蛛族へ繋がる、だがこの状態で土蜘蛛族へとどう繋げば良いのか。


 そもこの動きは早過ぎたのか、それともこのままで良いのか。


「武光様、あの、訓練良いっすか?」

「おう」


 賢人と瑞安か、初めて見るな。




 タケちゃんに魔法を見せびらかしに来たんだけど、瑞安と賢人君と練習試合してんの。

 でもボロボロだからクーロンとカールラも加え、更にショナも。


 いや、強過ぎ。


 全員で何とか勝った、タケちゃんに勝った。

 確かに警戒されるのも分かるわ。


「成程」

「また、今度は何を納得しているんだ(メイメイ)


「ワシの雷電とタケちゃんの試合でさ、危ない人間だって納得した」

「そこか」

「桜木さんが危ない人だなんて思ってませんからね」

「そうっすよ、サイコパスとか言う感じも無いんですし」

《でも、サイコパスって普通に過ごせてる様には見えるんですよね?あ、お2人がとかじゃなくて、自分でも分からない、検査もすり抜けてしまう人って居るんじゃないかーって、思って》


「それ見抜くのって、どの神様に頼めば良いんだろ」


《まぁ、身近だと我じゃよねぇ》

「そうか、サイコパスとかココに居るか?」


《居らんよココには、ネイハムもじゃ、表情に出ぬだけで内心はグルグルしおる良い奴じゃよ》

「そっか」


 なら警戒し過ぎるのは悪いのかも、もう少しだけ様子を見るか。


 それから全員を治して、今度はエミールと少し遅いお昼寝。




 ハナと一緒に眠ったからか、エミールの治りは早かった。


《エミールの診察が始まりますぞー》

《ご案内するですぞー》

「あぁ、とうとうこの日が来てしまったか」

「どうした(メイメイ)


「顔を見られて落胆されたら一生仲良くするのは無理」

「流石に無いだろう、行くぞ(メイメイ)




 やっと見れたハナさんの姿は、ベールを被ってた。


『どうしてベールなんですか?』

(メイメイ)は見目麗しい神々を見て自信を無くしているんだ」

「無くす自信すら無いわい。落胆されたく無いのよ、属性はブスだから」

『もー、恥ずかしがり屋さんなんだから。もう充分にハードルを下げたんだし、少し位は良いじゃない』


「はい……はい、終わり」

『もぅ、可愛いんだから、良い子良い子』

『あの、どう不細工なんですか?』

「エミール、ナイスな回答だな」


「主に鼻とか」

『控え目で可愛いと思いますよ?』

「ほら、もう良いだろう(メイメイ)

『あ、逃げた』

「桜木さん」


「すまんな、拗らせてるのが今出るとは」

《ヘカテにモルモーにニュクスじゃし、仕方あるまいよ》

『あー、特に特級の美人シリーズじゃない、可哀想に。でもそう卑下しなくても可愛いのにねぇ?』


「全くだ、(メイメイ)だからじゃないんだがな、どうにも自信を持ってくれないんだ」

『あの、髪が短かったのは』


「あぁ、偽装用にな、カツラを作ったんだ」

『そうなんですね、触りたかったなぁ』


 思ったより小さくて、僕は可愛いらしいなと思ったのに。




 いたたまれ無かったので、つい。


「桜木さん」

「すまん、悪い子じゃ無いとは思うんだけどな、つい」


「戻りましょう」

「ベールを付けたままで良いなら」


「紫苑さんの姿は見せなくて良いんですか?」

「あぁ、確かに」


 うん、落ち着く。


『全然、違うんですね?』

「わかる、そしてコッチは何も恥ずかしく無いので何でも出来る。完治おめでとうございます」


『ふふ、ありがとうございます』


 ハグだってへっちゃらですよ。

 何なら抱っこすらしちゃうよね。


「このまま何処かに持って帰りたい」

「猫じゃないんだから止めてやれ(メイメイ)、すまんなエミール、この格好だと随分と自由になってしまうんだ」

『ハナさんって男性になりたかったんですか?』


「いやぁー、いや?」

「疑問形だぞ?」


「男性って何?」

「そこからなのか?」


「魔道具で性別が関係無くなったらさ、どう選択するんだろ?可愛い格好が好きだから女?男が好きだから女を選ぶ?どうすんだろ?」

「僕をガン見しながら聞きかれても」

「まぁ、確かに選ぶとなるとそうかも知れんが、相手が居た場合は」


「それこそさ、好きならお前も変われよ、とかなりそうじゃない?どっちだって妊娠出来るならさ、役割を固定化させる必要って有るのかな。寧ろさ、負担を分け合った方が良くない?」


 何で、皆黙る?


《あの、僕の友人がそうなんですけど、桜木様の言う通り、交代すると思います。妊娠って病気じゃ無いってソッチではなってるそうですけど、通常の状態とは異なるのでココでは病気と同等の扱いなんですよ、通院は必須だし、出産では万が一にも輸血処置や手術にもなる。なら負担し合うのが当たり前だと思うんです。それからか、もしくはその前でも、好きな性別を選択しても良いと思うんですよね》

「だよね、何か変な事を言ったのかと思ってビックリしたわ」


《その、桜木様が本来は男性になりたかったのか、って事で、驚いてるんじゃないでしょうか》

「あぁ、生理痛の時は男が良いなと思ってた程度だけど、皆そんなモノじゃない?」

【ふふふ、今日は痛みを増強させる練習でもしてみようか】


 下痢と頭痛の起こし方を学ぶ事になった。




 エミール君は未成年なのもあって、今回は除外されたけれど。

 男性体の桜木さんの提案で、先ずは僕が。


「その、コレは、いつまでなんでしょうか」

「ワシなら最低でも3日間」

【通常ならココまでの腹痛は無いし、痛みも1日で終わるだろう】


「あー、ワシ病気だったからね、普通はそんなに軽いのか」

【そうだね】


「だそうだ、治すよ」


 この痛みに加えて下半身の不快感、味覚や嗅覚が劇的に変化し、睡眠も。


「しかも毎月」

「おう、そら生理が無い男にもなりたくなるだろうよ」


「向こうで選ばなかった理由って有るんですか?」

「ホルモン療法で結局は苦痛を伴うんだもの、楽を追及するなら閉経するだけを選択した方が楽じゃない?」


「閉経って」

「それに金が掛るし、苦痛から逃れたいってだけで、どっちかと悩んだ事は無い」


 どうだったとしても僕には関係無いのに、どうしてなのか少しホッとしてしまった。




 全く本来には無い展開で、しかも内臓の痛みに慣れて無い俺は、起き上がる事も諦めてしまった。

 こんな苦行を経て妊娠出産をするんだ、料理を手伝う、だなんて言い方をすれば怒りたくもなるだろう。


「はぁ、とんでも無いな」

「だろう」


「だが腹がスッキリしたな」

「アレか、全部出ちゃったか」

【良く見れば、きっと見えるだろう】


「えー、内臓はプライバシーでは?」

「構わんぞ」


【イメージして焦点を合わせる、ココに何が有るか、だよ】


「おぉ、大腸」

「直腸は良いのか?」


「いや、まぁ、他の見えたら気まずい」

「確かに」


 服を着ているのに下半身を隠したくなるのは、やはり男の性なんだろうか。


 そして一通り体験した後は、ヴァルハラで夕飯。

 そうだった、ココで本来なら家族の話をする筈なんだが、魔王は既にココに居るのだし。


「はなちゃん」

「紫苑、な」


「しおんちゃん、もし能力を得たら、私はもう用無しでしょうか?」


 コレは、本来通りになるか?


「どうしたんよ」

「今は移動魔法とストレージでお役に立ててますけど、もし人間になれたとしたら、私はどうすべきなのか、と」


「能力次第やね、ワシらがストレージ得ても、従者は移動魔法を得て無いんだし、そのまま裏方をして貰うつもりよ?」


「その、人の父親とは、どんな感じなのでしょう」

「ワシ碌な事は言えないよ、暴力が無いだけでクズ親だったから」


 コレは、本来から外れるか。


『私の父はね、他人には横暴で横柄だった。でも私達にはとても優しくて愛してくれた、バカな事をして来たのも知ってるけれど、憎めない大事な父。そんな父を愛して支える母が居て…って感じかしら』


 いや、本来の流れになったか。




 ドリアードから双子達の話を聞いて、涙腺が崩壊するかと思った。

 危ない、花子だったら死んでたわ。


「強烈なバックグラウンドやんけ」

「ですね、凄く」


「ワシはマジで違うからね、暴言は有ったけど1回だけとかだし。母親に構い倒されてネグレクトとは程遠いし」

「ハナ、父親との良い思い出を言えるか?」


「えー……、学校行って無かったから、1回だけ運動会に来てくれた事」


 何か、今日は黙られる日なんだろうか。


「見舞いは」

「無い、だって仕事してたし。他の子も、父親が来るのは珍しかったよ」


「2桁で、か」

「意識が有る時はね、寝てる時は知らん。死ぬかもって感じのは殆ど無かったし、母親はこまめに来てくれてたよ」


《桜木様、ココだとネグレクトですよ、それ》

「関わらないってだけで?」


《はい》

「そも向こうでもだ、喧嘩を見せるのも、父親が育児に関わらないのも異常だ」


「まぁ、でももうココには居ないし、ワシ大人やし。魔王は心配無いでしょう、何なら構い過ぎそう」

「正直、そう怒られてます」


「なら心配無いべ、今まで上がった良いのを統合して生かせば良いんだし」

『シンプルこそ難しいけれど、良い事は追加すれば良いし。よし、デザートにしましょう』


 家族の話って、難しいな。




 今日はハナさんの小屋で眠らせて貰う事になった。

 温泉は綺麗な水色で、宝石みたいで。

 小屋も可愛いくて、神獣も小さくて可愛い。


『可愛いですね』

《えへへー》

『えっへん』

「はいはい、寝ますよ」


 大きなベッドでシオンさんと一緒。

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