1月25日
ハナとエミールと3人で泉で寝て、起きて。
巨体を持つ神獣を目の当たりにして。
コレは確かに、呆気に取られるな。
「こ、タケちゃん」
「エミールの神獣だろうか」
俺の声に反応したのか、エミールの髪の毛に飽きたのか。
一声嘶くと、角を落とし去って行った。
「全盛り欲張りセットだった」
「だな」
そしてエミールが目覚め、卵に驚く。
と言うか、どうしてマサコにキメラの卵なんだ。
もっと言うとだ、カールラがマサコの元で生まれれば穏便に済むモノを。
いや、他に何か理由が。
だとするなら、一体どんな理由が。
『朝ごはんよー!』
外国人で美少年のお世話をさせて頂けるなんて、マジご褒美。
そう、目が見えない今のウチ、何なら落胆される前に消えたいな。
「サーモンムニエルとポテトかねぇ」
『それとベーコンエッグサラダですかね、ハナさんは?』
「うん、全部」
『そうなんですね、ふふふ』
眼福。
幸せ、もう魔素が、魔素が溢れたらどうなるんやろ。
食後にエイル先生に相談に行くと、恐ろしい事を聞かされるハメになった。
『そうね、この際、全員に説明しておこうかしら』
頭痛、吐き気、目眩。
多岐に渡る原因を持つ腹痛から、下痢、果ては魔法の暴走まで。
「種類が豊富で怖いわ、全部出そう」
『ハナさんの場合、有り得そう』
「だな、病弱大百科」
「言うぅ」
「すまんすまん」
『で、例のロキなんだけど、アレって魔素が漏れる系なのよ』
「それは、ルシフェルと似た状態か?」
『どうだろ、会った事が無いからなぁ』
「呼んでも大丈夫だろうか」
『あ、じゃあ念の為にベール付けてエミール』
『はい』
「お、ワクワク」
「来て貰えるだろうか、ルシフェル」
エイル先生の念の為ってのが何か分かった。
眩いイケメン、優しそう。
『お邪魔するね』
『あらー、良かった、想像通りの眩しい系イケメンね』
「それで、ロキ神と似ているんだろうか?」
『うん、この感じは似てると思う。魔素が漏れっぱなしだけど、大丈夫?』
『正確に言うと、周りの魔素を循環してるに過ぎないんだけどね。それで溢れると他の要素も混ざって影響させてしまうらしいのよ』
「ほう、人間にもそう言った具合のは居るんだろうか」
『英雄気質、ソチラでもジャンヌは有名かな』
「あぁ」
「そらもう、悲劇として、はい」
『残念だけどココでもね、その気質を利用され、果ては魔女と謗られ葬られてしまった』
「あの、その場合だとジルさんは」
『荒れ狂いそうになったからミカエルが召し上げて、落ち着けるのに数年掛ったんだ。その後、ジャンヌを利用した者達を裁かせるのに協力してくれたよ』
「魔女狩りか」
『そうだね、完全に無くすには200年以上掛ってしまったんだ、すまない』
「ココでもそんなに?」
『そうだね、宗派や国に関係無しに広まったから』
「ウチの国には影響無かったんで詳しく知らないんすけど、瑞安さん知ってます?」
《その、はい、口伝でなら》
「何だ、歯切れが悪いな」
《医学と科学の発展の為に、行われたって、どっかで聞いたので》
「瑞安、怒らないから情報の出所を教えてくれ」
《そ、祖母です。医学を目指そうかなって思ってた時に、お前は魔法か医科学、どっちを選ぶのかって。今の医学と科学は大勢の犠牲の上に成り立っている、いずれは魔法が再び栄えたら衰退する砂上の城だって。コレは一部の人間しか知らない、知りたいなら知れる立場になれって。すっかり忘れてたんですけど、それって魔女狩りの事なんだと、今、思って》
「それ、ワシの、この魔法?」
『そうだね、君の魔法が栄えていたら、また違う世界になってただろうね』
「え、じゃあ桜木様って漏れる系確定っすか?」
『可能性としてはね、けど溢れてみないと実際は分からないのよ』
「危ないのでは?」
『どう影響するかも未知数なのよ、溢れてみないとだから』
「いや、もし仮にそうなら、影響は最小限に留めたいだろう妹」
「そらね、何も無いのが1番なんだけど」
「エイル神、ハナの容量はどうだ?」
『それが増減がブレるのよね、ロキみたいに』
「あらー」
『でも、実は全然違うかもだし、様子見次第ね』
「もし広がった場合はどうしたら良いんだ?」
『私は少し羽ばたけば散ってしまうのだけれど、ジャンヌのはそれより重くて飛ばすには少し大変だったね』
『あー、ロキのは軽いんだけど、人間の魔素って乗る感情次第で重い場合が有るみたい』
「おふぅ、隔離してくれぃ」
「ふむ、なら浮島か?」
「温泉有れば完璧よな」
『あら素敵』
『あの、ハナさんが隔離だなんて』
『エミールの目にも影響するかもだから、少しの間だけよ』
《そうじゃな、今はビックリして少し萎れておるしの、先ずは浮島を整備するか》
「だな、コッチは魔道具か。妹に綿を成長させて貰うかな」
「任せておくれ」
暫くエリクサー作りはエイル先生にお願いして、綿花を育てる事になった。
俺の方は瑞安と共に、女媧神の元へ挨拶に行く事に。
《やっと、ね》
「お出で頂き感謝する」
《おタケ、瑞安、顔を上げなさい》
《ひゃい》
「はい」
《神々の介入、瑞安はどう思うのかしら》
《凄く、ワクワクします。もっともっと困る人が減って、幸せになれる人が増えるんだろうなって》
《良い子ね、見る目が有るじゃない、おタケ》
「ありがとうございます。ご協力頂けますでしょうか」
《勿論よ》
「ありがとうございます」
そしてハナが夢を見終わるまで、魔王と瑞安と共にハナの為に買い物をする事に。
そして神々にも、確かエイル神は花茶を喜んでいたな。
【武光様、桜木様が】
「魔王、頼めるか」
「はい」
ユグドラシルで夢を見たからか、エミールのお陰か、以前よりも僅かに緊張が解けていた。
「妹」
「あぁ、生きてる、良かった」
「どうした、俺は夢で死んでいたのか?」
「うん」
「そうか、だが生きてるぞ」
「リアルで、姿を見るまで不安で」
「大丈夫、五体満足だ妹」
「あの、柏木さんに報告に移動したいんすけど、出来たら桜木様に。大丈夫っすかね?怖いっすか?」
「俺も付いて行くぞ」
「いや、もう大丈夫。うん、省庁に直接報告しに行こうか」
「いや、なら前に参謀候補になったのが居ただろう、あの経由でどうだ、夢の診断もして貰おう」
「あぁ、確かに」
「では、病院へ開きますね」
久し振りに病院へ。
そして賢人君から院長へ、そしてネイハム先生と五十六先生と対面する事に。
「どうも、五十六と申します」
《ネイハムです、先ずは中庭でも》
「いや、今はちょっと」
「すまんが少し急用でな、機密保持が可能な場所で話したいんだ」
《では、ご案内致します》
あの悪夢が吹き飛びそうになるイケメン。
けど、脳裏と網膜に焼き付いてんのよな、エミールの死体も、タケちゃんの死体も。
「よし、早速だがハナが悪夢を見たんだ、話せるか?」
「おう」
言えば現実になってしまいそう。
けど言わないと伝わらない。
なら、もうこの話はココ1回だけ。
1回だけだから、出来るだけ詳しく。
《それで、夢診断ですか?》
「いや、ハナは夢見の性質持ちらしい、なので予知夢の可能性がある」
「らしいです、それと。タケちゃん任せた」
「魔道具の配備と、それに伴う神々の介入、それを阻害する何かと厄災についてだ」
「長くなりそうですねぇ」
《先ずはお茶でも淹れましょうか》
「ならこの花茶を頼む」
「花茶買って来たのか」
「おう、他のお土産も有るぞ妹」
「ありがとうお兄ちゃん」
花茶が開くのを眺めながら、タケちゃんが魔道具や人的厄災を起こしそうな国の話をするのを聞いて。
やっと落ち着けた気がした。
《今まで大人しかったのは旧米国やオセアニアへ転生者も召喚者も現れなかったから、ですか》
「まぁ、可能性は否定出来無いよねぇ」
『失礼します、ガブリエルと申しますが、少し宜しいですか?』
「おぉ、天使さんかぁ、綺麗だねぇ」
《どうぞ》
『既に、転生者は存在しています』
「それはそれは、報告に有ったのかどうか。そうだな、柏木君に聞いてみよう」
《いえ、国連も関わってるなら秘匿回線か何かを》
魔王はクーロンと中庭だし、なら賢人君を呼んだ方が早いよな。
「賢人君ー、オヤツあるよー」
「うーっす、あれ、何か空気ピリピリして無いっすか?」
「すまんがオヤツを持って省庁へ戻ってくれ」
「それとコレを柏木君に渡してくれないかな、五十六からの手紙だってね」
《出来れば、院内を走らずに至急で、お願いします》
「うっす!」
「妹、オヤツで釣っては可哀想だろうに」
「いや、アレはしっかり向こうで食ってくるね」
「そうだねぇ、良い肝の据わり方をしてるよねぇ」
《それで、転生者の秘匿は重罪でしたよね》
「まぁ、けどオセアニアに居るなら無効なのかねぇ」
『いえ、ロサンゼルス自治区の何処かに、今も天使が付き添っています』
「思いっ切り介入では」
《いえ、転生者は自我の芽生えが早い場合もあり、そう言った場合によっては地霊等の補佐を受ける事が可能なんです》
「その場合とは、どんな場合だ」
『目が合い助けを求められたら、ですね』
「自治区特権過ぎじゃね?」
「何処でも有効だし、旧米国の自治区で生まれたのは初め。いや、前にも秘匿されてたのかな?」
『いえ、天使の区画では今回が初めてです』
「天使の区画?」
「あぁ、天使の区画は間借りしてる状態の、ロサンゼルス自治区とかの事だよ。なら他の地区で生まれた子は、自治区に利用されてる可能性は無いんだね?」
『はい』
「なら良かった」
《良く無いですよ、それこそ彼らの想定する様に召喚者まで得てしまったら》
「不味いねぇ、けど流石に秘匿は不可能でしょう、国連だって一枚岩じゃないし。神様に感知されるから無理でしょう」
《なら、囲い込みをされたら大罪化も有り得るのでは》
「憤怒さんみたいなって事?」
《はい、そして魔王化も。なんせ本場ですから》
「成程ね、机上から目前の危機に変わったワケだ。こう気付いた切っ掛けはなんだい?」
「魔道具の進歩の遅さ、それと向こうでの最新の記憶」
「それだけでココまで導けたのかぁ、凄いなぁ」
「ね、タケちゃん教師目指してんの」
《そうでしたか、成程》
「そうあまりタケちゃんを疑わないで欲しいんだけど、どうして疑う?」
《大昔に悪い転生者も召喚者も居て、大きな被害が有ったんですよ》
「そうだねぇ、省庁では進んで開示して無いだろうけど、魔女につい」
「ハナが、その性質持ちなんだ」
《それは》
「これは参った」
《まぁ、その流れで魔女狩りも知ったでな、警戒されるべきはお主らじゃよ》
「引き籠るか全部変えるから殺さないでくれない?」
《予測では無く確信だった理由が分かりました、そうだったんですね》
「すまなかったね、そう言う事情だったとは。警戒して当然だね、本場も僕らも」
「だが厄災がソレだけとも限らないんでな、魔道具の準備中にハナが夢を見たんだ。だが、夢見を国へ報告すべきかどうか、その先はと考えてな。参謀として力を借りようと思ってココへ来たんだ」
《下手にカウンセリングを受け、その情報が操作されれば魔王か大罪候補として制限を受けますからね。確かに、正解です》
「へ、そんなんで候補になって制限を受けるの?」
「お互いの身を守る為にね。それに、そう脅さないと品行方正に生きてくれないのも居たら困るじゃない?」
「確かに」
《ですが悪用されれば、ですね、はぁ》
「まぁまぁ、可愛いお茶で癒されなさいよネイハム君」
「それと、クトゥルフについて何か知らないか?」
《研究用に申請しましたが却下されました》
「僕もだ、それがどうかしたのかい?」
「ストレージや空間移動を得るには、アクトゥリアンかクトゥルフだと言われたんだ」
「ワシそんなに知らないけど、向こうだと邪神扱いなのよね」
《素養が有るならクトゥルフじゃし、素養が無ければアクトゥリアンじゃよね》
《またアバウトでザックリと》
《コレでも結構具体的だと思うんじゃけどなぁ》
「まぁ、そう言う事みたいだし。リスク分散するなら2人は別々の方が良いよねぇ」
「あぁ、ただ、俺にその素養が、後天的に素養を得る事は不可能なのか知りたかったんだ」
ノック音、賢人君かな。
「失礼しまー、あの?」
「あぁ、入ってくれ」
柏木卿からの返事は、了解した、とだけ。
「だけ?」
「うっす」
「何か作戦が有るのか無いのか、分からないんだよねぇ、良く知らないし」
「確かに柏木卿も貴方を良く知らないと言っていたな」
《コレは、公式には動くなと言う事なんでしょうかね》
「いやー、任せるって事じゃないかなぁ、召喚者様と僕らに」
《だとしたら、どうしましょうかね》
「そもそも関わらない権利も有るだろう、後任候補を出してくれれば断ってくれて構わない」
「そっか、危なくなるかもか。あ、お茶どうぞ」
「うっす、オヤツ良いっすか?柏木さんに上げちゃったんで」
「お、予想を覆す人の良さだった」
「どんな予想してたんすか」
「向こうでモサモサ食ってる」
「いや、コレも渡すのかと思ってそのまま渡しちゃいましたよ。今頃は柏木さんが食ってるんじゃないっすかね」
「あー、好きかな、サンザシロール」
「いやー、多分、月餅派っすねぇ」
「賢人君はこのお2人をどう思うよ」
「俺、尻込みする有能な人って大っ嫌いなんすよね、土壇場でそんなんじゃ意味無いじゃないっすか。いつ活用する気なんだよって、イライラしちゃうんすよ。そんなんなら徹頭徹尾、無能な顔して家からも出ないで欲しいんですよね、活躍したい人の邪魔だから」
「キツいけど、分かる」
「彼、煽りの天才だよね?」
《ですね》
「だがイライラは本当らしい、な」
「まぁ、こうしてショナさん煽っちゃったんすよねぇ」
「なんつー事をしおる」
「だって、万能鉄仮面なのに揺らいでたんすもん。さーせん、改めて謝っておくんで、コッチも良いっすか?」
「仕方無い、ちゃんと謝っておくれね」
「で、結論が出そうに無いなら」
《私は別に尻込みはして無いんですが》
「僕だよねぇ、正直凄く気になってるけど、それこそ僕で良いのかなって感じだよね」
「いや、他に加えたい人物が居るなら加えて貰って構わない」
「なら先ずは具体的にどう動くか、だよねぇ」
《調査書が降りて来たら考え易いんですが》
「そうか、ならまだ少し掛かるんだが。自治区の汚染具合や、転生者をどうするかだな」
「へ、自治区に居るんすか?」
「みたいよ、天使さん付いてくれてるんだって」
『可愛らしい女の子ですよ』
「へー」
《少なくとも接触は不味いでしょうね》
「だねぇ、利用価値が高いから殺したりは無いだろうし、厄災が終わる迄は放置させて貰おうかな」
《それと国連や腐敗度合いは、正直、召喚者様を使わないと測れないかと》
「そうだね、彼らが食い付きそうな情報を出して、どう反応するかだからねぇ」
「なら、俺を使ってくれ」
「残らないからってそれは」
「だからだ、ハナは残るなら難癖でも汚点は少ない方が良い。クトゥルフの力を身に着け、以降の夢見は俺が報告した事にしてはどうだろうか」
《ですが、雷電や治癒が報告に上がっていれば》
「少なくとも国連には上がって無いっすよ、能力狙いで国同士の小競り合いが有っても不味いって、柏木さんが。瑞安さんにも言ってあるってショナさんが言ってたんで、間違い無いっす」
「なら、武光君にお願いしようかね、そのブラフ」
「えー」
《残るんでしたら厄災を乗り越えても安全に生きるには、最適かと》
「ならいっそ、性別を変えて入れ替わってしまうか」
「面白そうっすね、敵を騙すには先ず味方からっすか」
「あぁ、幸いにも関わったのは極僅かだ、そしてそこから漏れても繋がりを把握するのに役立つ」
「だからベールさせたん?」
「いや、アレは単にお前の人見知り用だ」
「あぁ、アレめちゃんこ落ち着いたわ、馬かって位に」
「マジ馬っすねぇ」
「よし、敢えて混乱して貰うのも一興だし、入れ代わり作戦でいこうかね」
《では、名前はどうしましょうか》
「俺のは、そうだな、王若汐、向こうで一般的な名前だ」
「えー、じゃあシオン、シオン何とか」
「そんな競争じゃ無いんすから。あ、服も買わないとっすよね」
《あぁ、そこから偽装すべきなのかも知れませんね》
「個人店で現金とかだね」
「だな、もう少しストレージは待ってて欲しい。妹も、俺の素養が分かるまで」
「おう」
前回はシュブニグラスには僅かに認められたのだし、今回こそは、俺が代わってやれないだろうか。
エミールともお昼ご飯を食べてから、次はニーダベリルへ。
宇宙にも魔石が有るらしいんだけど、神様がご立腹に。
《ワイは納得いかへん》
「ノーム神、無理に協力してくれなくてもだな」
《そうじゃよ、日ノ本にも魔石を出せる神が居るらしいでな、無理せんでも良いぞぃ》
《はん!見た目が違うやろがい》
「そこか」
《じゃが宇宙の魔石も、そうじゃな、少し取ってまいれ》
『がんばる』
「では、少し失礼して」
魔王が宇宙ギリギリに空間を開くと、クーロンが飛び立った。
そして悔しいのか何なのか、ノーム神が木陰へと消えて行った。
「イジメ過ぎでは?」
《だって意固地なんじゃもん》
「まぁ、日を改めて和解案を模索してみよう」
そうして直ぐに戻って来たクーロンが抱えて来た原石は、直ぐにも寒色系の貴石へと変化していった。
「あぁ、好き」
「ハナから選んでくれ、俺にはそんなに拘りが無いんでな」
「じゃあ、失礼して」
そうして石を選ぶと、先ずは性別を変える魔導具作りへ。
パッと見でバレ無い様にと臍ピアスになった。
「こう、穴を開けるには」
「ニードル?」
《そうね、じゃあお裁縫セット》
《貫通の魔法と》
《睡眠に痺れね》
穴を開けるのはちょっと怖いのでタケちゃんにお願いし、そのまま通信機用と噓発見器のピアスも耳に開ける事に。
「痛覚遮断が有って助かった」
「器具を洗浄する魔法は」
《あら簡単よ》
《こう、パッとね》
《あら、見えないのね魔素が》
そして魔素が見える眼鏡、嘘がバレ無い魔導具も。
それから性別変更の魔道具を試す事に。
「お、視界が高いけど、タケちゃんより低いぃ」
『精神に影響しない最小値だ』
『外見は内面に影響するからな』
『うん、中々に良い男だぞ』
「ありがとうございます、でも髪はどうしようか」
「切ってカツラにしたらどうだろうか」
女神達が抗議していたけど、賢人君が長いのは一般的では無いと言ってくれて収まった。
《あぁ、なんて事なの》
《仕方無いのわ》
《次こそは、ね》
どの国でも髪に霊力が宿るとの言い伝えが存在しているのだが、長い髪を保持出来る程に文明が発展している事を誇示したり、大切に扱われているのだと誇示する為のモノだろうとは推測は出来る。
だが神々の場合は、半ば趣味なんだろうとも思う。
「うい、追々で」
「あー、ショナさんもこんな反応しそうだなー」
「あぁ、確かにな」
今回は恋心を早々に自覚させないでいこうとは思っているのだが、不安だ。
『眼鏡か、戦闘には不向きだろうに』
『そうだな、眼を治せばどうにかならんか』
『そうだな、少し不安定だぞ』
「あー、治そうかなとは思ってるんですけど」
「目だけか?」
「そこなのよ、生理止めたりして良い?もし長期戦なら明らかに不利だし」
「おう、この際だ欲張ってこい、叶えてくれるかどうかは神次第だろうしな」
『おうおう、ならまた補正してやる』
『そうだな、合わせた方が良い物も有るしな』
『遠慮するな』
「じゃあ、お言葉に。あ、お礼を」
「そうだな、俺も買って来てあるぞ」
ハナが選んだ蝋燭や楼台、そして花茶は意外にも好評で白酒も受け取って貰う事が出来た。
そして余剰分にとハナが繭を貰っていた。
「これ」
《それこそよ、魔力で糸が出来る子なの》
《あ、虫は居ないから大丈夫》
《持っているだけで良いのよ、ふふふ》
『ほらほら、更に捕まる前に行ってこい』
『ついでに武器も見繕っといてやるよ』
『じゃあな』
「はい、行ってきます」
ハナからストレージや精霊の事が出ないまま、映画館へ。
「ハナは」
『もう少し待ってくれってさ。でもかなり本来とズレてんじゃん、大丈夫かね?』
「あぁ、実は凄く困っている」
『だよな、お前の素養も微妙だし』
「どうにか出来ないだろうか」
『それこそ性質だからなぁ、先天的にも後天的にも、殆ど素養が無さそう』
「それは、どう言うモノなんだ?」
『原作通りなら、先ずは化け物になる不安だよね、それから精神的な強い不安、夢想や妄想。おタケは無さそうじゃん』
「あぁ、直ぐに体を動かしてしまうからな」
『それよそれ、ハナちゃんはそうやって発散する事も出来なかった。病院の小さい小児用のベッドの上で、知らない人ばっかの場所で、空想して妄想するので精一杯で。化け物の様に心が醜い父親に似てしまう恐怖と絶望に、窓に、窓に!』




