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1月23日

 相談もさせてくれないのか。


《ハナー、おタケは、起きとるな、家が出来たそうじゃぞ》


「おう、おはよう(メイメイ)


「おー、おはよ」

「先ずは風呂だ、飯を食ってからソッチに行きたいんだがな」

《うむ、伝えておくぞぃ》


「ほれ、(メイメイ)が先だ、涎が凄いぞ」


「うい」


「ショナ君、アレが我儘を言う感じは有るんだろうか」

「いえ、全く。ストレスは魔素の回復も妨げると言われてるんですが、全然、全く要望を言ってくれ無いんです」


「俺が(メイメイ)と呼んだ時に、動揺していた。家族の話はどうだ」

「いえ、ただ何かしら有ったのではと」


「カウンセラーは付かないのか?」

「そうですね、要求が有るか、国や外部からの要請が無いと」


 あのネイハムをどうするか。

 2回目ではとんでもない動きをしたが、本来ではあんな動きをして無い。

 なら、今回は流れに任せるか。


「そうか、(メイメイ)が請うまで待つんだな」

「はい、そのつもりです」


 卑屈になってないショナ君、うん、良い笑顔だ。




 タケちゃんから保護者と言うか、お父ちゃんみたいな視線を受けながら飯を食って、部屋へ。

 それから魔王城まで転移。


「魔王はどうするんだ?」

「お買い物ですかねぇ」


「そうか、なら頼みたい事が有るんだが、良いか?」

「はい?」


 ワシの為に野菜ジュースはどうか、と。

 お母さんか。


(メイメイ)の野菜不足が気になるんでな」

「すまん、気を付けますぅ」


「いやいや、そうじゃないんだ(メイメイ)、量が量なんだ。味は好きなモノを食べたら良い、けれど顎にも限界は有るだろう?それとも野菜ジュースは嫌いか?」

「匂いが、キツくなければ」


「そうか、苦手な野菜はなんだ?」

「セロリとか春菊とか、パクチーとか、ピーマンの苦みも少し苦手」


「そうか、果物はどうだ?」

「バナナは食えるけど好きじゃ無い、です」


「そうかそうか、嫌と言う程食わされたか?」

「なんでわかった」


「俺も鍛えてるんでな、嫌と言う程に食って嫌になる事は有る」

「そっか、そう、それです。こう見えて虚弱だったので」


「ならアボカドはどうだ?」

「意外に平気」


「そうか、なら……」


 野菜ジュースのプロデュースまでしてくれたし、物腰が柔らかいと言うか、優しい。

 タケちゃん、保育士さんの方が向いてるのでは。




 武光さんの提案で野菜ジュースが食事の前後に加えられる事になった。

 かなり頭が良い方なのか、魔法や魔素と言った概念に素早く適応して。


「ありがとうございます、僕じゃ思い付かない事でした」

「いやいや、質も大事だからこそ後回しにしていただけだろう。そも我儘を言わない(メイメイ)が悪いんだ、楽しい、気分が良いは魔素の吸収効率を高めるんだぞ?」

「あ、そうなのか。じゃあ、肌触りの良い毛布が欲しい、スベスベふわふわの」


「ならパジャマや何かも、そうだな、家を見たら買いに行くか」

「おう、タケちゃんの服とかもな、行こう」


 武光さんにはもう心を開いたのか、笑顔を向けるまでになって。

 僕には真正面から笑ってくれる事が。

 そうか、もしかしなくても武光さんが言う様に問題が有るからで、なら僕からカウンセラーの提案をすべきなのかも知れない。




 家ヤヴァイ、凄い。


「特に変更が無ければ、布製品はこれから設置します。明かりも、人間用の方が使い易いだろうと」

「ほう」


 いや、憧れの小屋(ロッジ)、完璧過ぎでは。


《どうでしたかな?》


「完璧。皆さん、ありがとうございます」


《ははは!やったぞ!完璧だとよ!》

《ミーシャ嬢とほぼ同じ身長って聞いたからな》

《おう、お陰でパーフェクトだ》


 溜める気は無かったんだが、どう表現したら良いか迷ったのよ、マジで。


「あ、タケちゃんも」

「いや、うん、そうだな。イスタンブールのハンの様なのをと思ってるんだが、もう少し先で良いだろう、暫く泉かも知れんしな」


「ハン?イスタンブール行った事ある?」

「いや、少し向こうの()()でな、ココでは普通に行けるんだろうか?」

「申請してみて、ですね。けど安全面は問題無いですよ」


「おー」

「本場のケバブを食ってみたいものだな」


「わかる」

「なら追々視察だな」


「おう!」


『ハナ!どうだ?』

「おっすオベロン、完璧に素敵」


『では、礼は酒とツマミで良いぞ!』

「うっす、鮭の燻製やジャーキーと……ショナ君」


「はい、どうぞ」


《酒だー!》

《ツマミだー!》

《《《うぉおおおおおおお!》》》


「ティターニアにはコンポートを」

《有り難う御座います、アチラでお茶にしましょう》


 紅茶とスコーンヤバい。


「美味しい」

《うふ、ありがとうございます。一息ついたら魔法の練習をしましょうか?》


「したいんだけど」

「すまんが、限界が来たらしい」

《あ、では泉へどうぞ》


「すまんな(メイメイ)

「おうおう、おやすみお兄ちゃん(グーグ)






 ハナちゃんは変わらず魔法の練習をし、おタケはココへ戻って来た。


「有り難いんだが、相談をさせてくれても良いだろう」

『まぁまぁ。つか本来のって、あれ、新しく有るじゃん』


「良かったな、アレか、クリア特典だろうか」

『あぁ、そうなのかも。けどコレ、おタケが居ると観れないのね』


「みたいだな」

『そんなに相談に乗って欲しいのかぁ、しょうがないなぁ』


「あぁ、頼む」


『先ずはさ、ハーレム以外が良いの?』


「出来たら、なんだが」

『難しいと思うよ?何もかもが違うのを受け入れないといけないんだし』


「それこそ。そうか、転生者か、個人を個人たらしめる何かを転生者は持ってるんだ、そうか」

『あー、確かに、ショナ君にもそう思って貰う感じでも良いのか』


「ならいっそ、少し若返って貰ってだな」

『それ、神々の干渉はどうするの?』


「確かにな、あんなに早い帰還になるとは思わなくて中途半端になってしまったしな」

『だよねぇ、そうなるとかなり過密だよ』


「だな、投票も開催させなくてはならんし、ふむ」

『マジで鍛錬する機会が無くなるかもねぇ』


「そこだ、そんな事をしてる暇が本来は無かったんだ、年長者として」

『はいはい。で、どうすんの』


「神々の干渉、それと転生者への接触だな」

『よし、行ってこーい』


「おーぅ」


 懐かれると可愛いなと思っちゃうんだよな、不思議。






 またやり直せたのは良いんだが、今度は時間が足りない気が。


『おう、起きたか』

「あぁ、オベロン」


『おう、随分と鍛えてるな』

「あぁ、格闘家で、今は教師を目指してる。寿命や身体は消耗品、子供の為にもそこそこ長生きすべきだと思ってな」


『あぁ、そうか、お前は思ったより頭が良さそうだ』

「少し(メイメイ)より年上なだけだ、まだまだだよ」


『いや、気に入った、いつでも特訓してやるからな』

「ありがとう、助かる」


 特訓は凄く有り難いんだが、寧ろ。


『よし、俺は酒を』

「すまんが、少し相談したい」


『お?何だ?』

「ショナ君、君も良いか」


「はい?」

「普通の人間は神々に中々会えない、そうだな?」


「はい」

『協定でな、そう介入しては人間の進化の邪魔になる、らしい』

「でだ、それは介入が早過ぎた時期に決められた事だと思うんだが。どうだろうかショナ君」


「可能性としてはそうかも知れませんが、では、いつなら良いのかとなると、分かりません」

「そうか、ならココは女性同士の結婚はどうなっている?」


「結婚も妊娠も可能ですが」

「男同士はどうなんだ?」


「結婚は可能ですが、妊娠はまだ、姉妹の卵子を提供して頂いて、と言う段階です」

「なら女同士の妊娠が可能になったのは最近か?」


「いえ、あぁ、僕の母が研究職でして。どうしても生物学的には難しい壁が有る、魔法が応用出来無いのか、と嘆いてましたね。けど、あの」

「いや、俺は異性愛者で相手は近親者でも無い、幼馴染だ」


「そうなんですね」

「でだ、こう限界点に達してるなら」

『やっと俺らの出番だってか?』


「あぁ、やっと、その時期になったのではと考えている」

『どうしてそう思う』


「厄災とは何か、何が厄災となるか。そう考える前にだ、神々同士の争いは厄災には入らないのではとな、どうだ?」

『あぁ、人間が関わらないなら感知不可能だ』

「そうなると、召喚者様が関わったら」


『まぁ、厄災認定されてる中には存在しているな』

「そうやって神々同士は勿論、神々の視点でしか分からない火種を認識してるんじゃ無いのか、ドリアード」

《じゃの、ただの傍観者は辛いでな、見守る対象を絞った者も多い》


「なら、もう干渉しても良いとは思わないか?厄災を探る為にも、これからの為にも」

『俺はそうしたいが』

《国同士の問題にもなるんじゃよ、不可侵条約が有るでな、立ち入る事が難しいんじゃ》


「その些末な事も、俺らの課題なんじゃないかと思う」

「そこまで考えてらっしゃったんですね」


「俺の国は争いが多かった、栄華と衰退を繰り返し、陸続きで他国との諍いも未だに存在し、果ては子を戦に差し出す可能性もある。だがココはかなり平和だろう、なんせ戦が100年は存在して無い。そう成熟した世界でも問題が有るとするなら、活用すべき何かを活用しない、して欲しくないと思っている存在が邪魔をしている可能性が有るとは思わないか?ショナ君」


「少し時間を頂けますでしょうか。少し、気になる国が」

「俺としては、そうだな、天使とは存在しているんだろうか」


『宜しいでしょうか』

「ジブリール、だろうか」

『ほう、久し振りだな』

《じゃの、存在しておったか》


『はい、何とか』

「ショナ君、君が危惧しているのは天使が所属する国、だろうか」


「はい、すみません」

『良いんですよ、嘗ては虐殺行為の大義名分にされた事も有りますし。ソチラでも教徒や信徒が暴走した、と有名ですから』

「人と神、人と人とが揉めるならと、カナダの同化政策用の寄宿学校跡地で遺体が発見された事を思い出してな、すまん」


「それは」

「最近だ、1ヶ所で200人以上の遺体が出たんだ」

『あぁ、なんて事を、主に代わり』

『それは後だ、どうなんだソッチは』

《じゃの、ココで謝罪をするより、む、ハナがコチラに来るかもじゃ》


「そうか」


「タケちゃん、起きてたのね」

「すまんな(メイメイ)、急に寝てしまったな」


「しょうがない、暫くはそんなんよ」

「そうか、俺もまだ成長期か」


「そうそう」

「魔法の練習はどうだ?」


「できた」

「そうか、凄いぞ(メイメイ)


「それで、あの、この方は?」

《ジブリールですね、お久振りです》

『少し良いかな?』


《はい》

「実はな、少し世界について話し合っていたんだ」

「ほう」




 なんと、厄災は何かと考え、天使さんの所属する国について話し合っていたんだと。


「ハナは知ってるかどうか、カナダでな……」


 知らんかったけど、誘拐どころかもう、殆どの虐待を。


「桜木さん」

「すまん、今はちょっと、脆くて」

『すみません』

「すまんな、急にこんな話を聞かせて」


「いや、うん、最新情報がコレだもんね、タケちゃんが気にするのも良く分かる。ごめんねジブリールさん」

『いえ』

「それで、俺はちゃんと確認すべきだと思ってな。思わぬ人間が、思わぬ場所が大きな問題になる事もある。なら、俺らが気になる場所から調べていって、何も無ければ他を探す、そうして厄災に備えようかと思っている」


「うん、ココの為にもなるかもだしね」

「でだ、男同士の結婚は可能だそうだが、妊娠には科学の壁が有るらしい」


「ほう」

「神々は発展の妨げにならぬ様に、介入は最低限らしいんだ」


「ほう?」

「ココをより良くするなら、男同士の妊娠も可能になってしかるべきだと、俺は思う」


「タケちゃん、嫁って言ってたけど」

「異性愛者だ。だが知り合いに同性愛者は居たが、向こうでも子孫は残せないだろう」


「あぁ」

「今既に発展の限界点なら、いい加減、神々が介入しても良いとは思わないか?」


「ソース大事、資料提供頼む」

「はい」

「よし、なら俺は転生者に会わせて欲しい」


「はい、連絡してみますね」


 タブレットで男性同士の婚姻、妊娠が現在は不可能なのは確認出来たんだが。


「クソ、今度はワシが」

「話を詰め込んでしまったな、休んでくれ(メイメイ)


「すまん」




 つい、急ぎ過ぎてしまったな。


「直ぐに寝ましたね」

「あぁ、悪かったな(メイメイ)、疲れてただろうに」

《魔素を消費するわ泣くわでな、仕方無い》

『でだ、お前はどう思う、ショナ坊』


「介入に関しては今が転換期なのかも知れないとは感じました。そして新たな虐殺事件を知ってしまった以上、武光さんや桜木さんが気になると言うなら、調査をすべきかと」

「あぁ、ただ内密にとなると限界が有るだろう。そうなると、やはり」

『私達の力が必要、ですか』

『俺は協力したいんだけどさぁ』

《ですが、協定が存在しますので》

《だけ、なんじゃろか?》


『天使除けが存在する場所には、私達は立ち入れないんですが』

「例外は存在しないんだろうか」


『ルシフェルなら、ですがかなり個性的でらっしゃるのと』

「悪魔では無いんだろう?」


『はい、ですが影響を及ぼす可能性が有るので』

「そうか、それ用の魔法は無いモノだろうか」

《私達も会った事は無いので、どう影響するのか》


『魅了に近いのですが』

《じゃったら魔法印じゃろか》

《そうですね》

「でしたら国で人員を既に確保してますが」

「そうか、名簿の様なモノは有るか?」


「はい」


 サイラか、早々に来て貰っても問題は、無いか。


「このサイラと言う者は」

《我らの推薦じゃな》

「僕も小さい頃に入れて貰った事が有ります」

「私も知ってるエルフです、腕は確かです」


「そうか、呼んで来て貰えるか?」

《おうおう、任せておけ》


「助かる」

《あ、歯軋りを…【良い子、良い子……】》


「クソ、また俺も。どうにか覚醒し続けられる魔法は無いのか」

「武光さん、そう無理に起きても」


「俺の頭蓋骨に、施して、くれ」






 目を覚ますと、タケちゃんが刺青を入れられていた。

 しかも頭蓋骨に、グロい。


「あ、桜木さん」

「何を、どうして?」


「コレは魔法印と言って、レジストの魔法印を入れてるんです」

「レジスト」


「魅了等の影響を防ぐ魔法でして」

「何故、骨」


「皮膚ですと印が崩れたりすると効果を失ってしまうので」

「あぁ、天才だな。ショナもしてるの?」


「はい、僕は皮膚ですが、通常では見えないインクになってます」

「ほー」


「桜木さんにもいずれはと思っていたんですが、どうしますか?」

「ワシもする」

「では、インクを選んでおいて下さいね」


「どうも、桜木花子です」

「どうも、サイラです、宜しくお願いしますね」


 ミーシャより年上な感じ。

 つかミーシャも有るのかな。


「宜しくどうぞ。ミーシャも有るの?」

「はい、ココに」

「僕のはココです」


「刺さったら死ぬ場所か、成程、ライトの色も違うのは?」

「私のは独自調合なので」

「僕のは省庁で入れて貰ったので、入庁時期と性別で色が違うんです」


「独自調合には限界ありそうだし、ナイス折衷案や。ならワシは独自調合かな」

「ですね、解析されては困るので、場所は個々人の秘密ですが」

「桜木様の場合は魔素の容量が多いので、骨となると武光様と同じ場所になると思います」


「あー、そっか、なら貴重な体験だし、見ておこう」

「大丈夫ですか?」


「おう、さっきは寝起きでビックリしただけ。凄いよな、生まれたての赤子みたいだ」

「あの、あまり無理しないで下さいね」


 細かく見なければ大丈夫なんだけど、やっぱグロいな。


「やっぱ、キツいな、普通にトイレ行ってくるわ」

「はい」


 そしてまた泉に戻って、同じく刺青を入れて貰う事に。

 色は青とか白をお願いして、またお昼寝へ。




《起きてたもう、虚栄心から魔王に連絡があった様じゃぞ》


 俺のストレスも減ったからか、点滴のお陰か、寝覚めはスッキリだ。


「おう、おはよう」

「ん、おはよう……今何時?」

「ベガスはランチタイムですよ、戻りますか?」


「もうそんなか、食べれる?タケちゃん」

「おう」


 そうだ、虚栄心を味方にすべきか。


「待ってたわよー!」


「おまたー」

「あらイケメン」

「李 武光だ、宜しく頼む」


「どうもご丁寧に、私は虚栄心よ。さ、お腹が空いてるのよね、服は部屋に運ばせるから、先ずは一緒に食べましょ」


 前と同じくハナは様々な料理に挑戦し、結局は好きな物を好きなだけ食べると言う結論に落ち着き、俺はショナ君と柔軟や筋トレのメニューを相談し、食事を終え部屋に。


「ふふふ、ところで貴女は?」

「ミーシャ。桜木様の従者」


「まあまあ、可愛い子、宜しくね。それじゃ私は戻るわ、魔王!他のも出来上がったら連絡するわ、じゃあね!」


「待った、少し話しがしたい」

「あん、何かしら?」


「2人だけ、いや、ミーシャも同席を頼む」

「はい」

「なら。ハナ、腹ごなしにお散歩に行ってきなさいな」


「そうだな、そうだ。スーパーに面白いモノがないか、見て来てくれないか?」

「スーパー、行く」


「すまんな、頼む」

「ういー」


「で?何しら?」


「神々に男同士の婚姻を支援して貰う事についてどう思う」

「あら、アナタ」


「いや、異性愛者なんだが、この世界について考えた結果なんだ」

「武光様は科学の限界点こそ、神々の介入の復活時点である、とお考えだそうです」

「なるほどね……で?」


「見た目から尋ねるワケでは無いんだが、どうだろうか」

「そう。私としては凄く良いと思うわ、けど、どう広めるつもりなの?」


「魔法か、魔道具か」

「魔法だと適性が無いと難しいので、魔道具かと」

「神々になら、簡単でしょうね」


「なら先ずは俺とハナが体現し様と思う、それで、男女兼用の服をお願い出来ないか?」

「ふふふ、最初からそのつもりだったのかしらねぇ」


「すまんな、お互いにそう知らない者同士、先ずは様子見と思ってな」

「もう、イケメンのクセに遠慮しちゃって可愛いじゃない。良いわ、受けてあげる、けど」

「魔道具ですね」


「それと寸法ね、パパっと測っちゃいましょう」

「頼んだ」




 スーパー楽しい。

 買い放題、選び放題。

 何ぞ知らない食材でも何処かにレシピが有るし、魔王かショナが調理してくれるんだし。

 あれ、ワシ、ポンコツでは。


「すまんな、ワシポンコツで」

「いえ、寧ろ僕こそ、野菜ジュースの結論にもう少し早く到達すべきでした」

「私もですよはなちゃん、親としても私の方が先輩なのに、全然で」


 皆でしょんぼり。

 いかんな。


「凄く、有能なのが来た、って事にしようか」

「そうして下さい、僕からもお願いします」

「ですね」


 万能ショナもしょげるタケちゃん。

 買い物も程々にして、例の資料について詳しく見る事に。


(メイメイ)、買い物はもう良いのか?」

「お、タケちゃん、どうやってココが」

《我じゃ!》


「助かったぞドリアード」

「あぁ、なるほど」


「それで、(メイメイ)は何をしてるんだ」

「優秀なグーグに追い付こうと思いまして、資料を」


「君もかショナ君」

「すみません、はい」

「君が優秀でつい、なんですよ」


「それも良いが、よし、買い物に行くぞ。(メイメイ)の好きなスベスベだ」

「だけどさぁ、まだ何にも役に立って無いのにさ」


「残るなら、前金、下準備。健康最優先、良いな?」

「ふぇい」


 丸め込まれた。




 武光さんは本当に桜木さんの扱いが上手で、遠慮させずに買い物を完遂させてしまった。

 そして浮島で直ぐにも使える様に準備をしていると、神々や精霊が魔法を使い協力してくれた。


「凄いですね武光さん」

「ちゃんと納得さえすれば実行するよな、(メイメイ)は」

「へーい」


「だが、どう納得出来無いのかに気付けないとな、説得すら難しいだろう」

「タケちゃんみたいに物分かり良くしたいんだけどさ、すみません」

「いえ」


「話し合いは大切だ、な、(メイメイ)


「不安なのよ、ワシなんかが本当に役に立つのかって。色々と調べたいんだけど眠気が来るし、練習したいのにお腹は減るし。タケちゃんみたいに良い案がポンポン浮かばないし」


(メイメイ)(メイメイ)の国は結構平和だろう?けど俺の国は、分かるだろう、子供の代まで考えて国籍をどうするか考える者も居る、社会経験も少し俺は長い。けどだからと言って俺がココで役に立つかどうかは別だ、なぁ、俺に魔法の適性は殆ど無いだろう?」

《じゃの》

《はい、身体強化程度かと》


「ほらな、俺は知能や何かを求められて、お前こそが前衛かも知れないんだ。なら前衛のする事は準備を万端に整える事じゃないか?」

「ワシが前衛?運痴ぞ?」


「それこそ身体強化が可能なら近接だって余裕だろうし、魔道具だって魔法だって存在するんだ、可能性は無限大だろ」

「ぉ、おぉ」


「まぁ、こう構えて災害かも知れないんだ。それにな、俺なりにこの世界に貢献したいんだ」

「余計な事をするのは不安でない?」


「ならココの人間が余計だと判断して、排除したら良いんだ、投票なりなんなりで受け入れなければ良い」

「投票って、世界規模で?」


「男同士の結婚は各国で投票が有ったんだろ?」

「はい、僕が生まれる前なんですけど、母が投票したかったと言ってたのを聞いた事があります」

「ほぅ」


「それに、俺らは可能性や希望を示す存在でもあると思う。そしてそれは人間だけじゃなく、神々や精霊にもだ」

《傍観者なだけじゃしな》

《そうですね、古い因習に捕らわれる時代は、もう終わらせた方が良いかも知れませんね》


「まだ人間や文明は進化するかも知れないが、神々と共に歩んでも俺は良いと思う」

「柏木さん、凄く神様に会いたがってたのに、まだお会いした事が無いんですよ」

「な、先に魔王か、そうか。誰か会わせてあげたいな」


「そうするには、どうしたら良いんだ?」

《主な神に許可を得られれば、じゃな》

「ウチは誰かな」

《その地域の神でも構いませんよ》


「ほぅ」

「すまんな、詰め込み過ぎたか」


「独裁者になるのが怖いのよ。もっと言うと後世で悪人の様に言われるのが、当時は良い治世をしてても、悪く言われてるのって多いじゃない」

「あぁ、武則天、西太后、呂雉(りょち)、だがココではどう評価されているのか。よし、本場で勉強してみるか」


「すまん、無知で」

「いやいや、向こうの知識が役立たない事も有るだろう、行くぞ」




 タケちゃんが、優しく静かに怒ってる。

 お祖母ちゃんから聞いた、お祖父ちゃんみたいだ、怖い。


「言った筈だが?」

『はい、ですが』


 女性従者の事で静かにキレてる、何ならちょっと殺気が出てるのではと思う程。


「タケちゃん」

「あ、すまんな(メイメイ)、性悪説の解説を読んで少し待っててくれ」


 怖い、ギャップが怖いわ。


「子種を得たいなら先ずは示すべきだろう、仕事が出来る、任せても全く問題無い、と」


 ご尤も。


《大変、申し訳御座いませんでした》


 真っ先に土下座した人、偉いぞ。


「よし、先ずは従者を呼んで来てくれ」

《はい》


 何をする気かしら。


「ショナ、タケちゃんクソ怖いね」

「ですね、殺気が出てた気がしました」


「それな」


 そして暫し性悪説の解説を読む事に。


 [人の性は悪なり、その善なるものは()なり]


 偽とは字の通り、人の()す行い。

 人は様々な意味で弱いので、努力して公共善を知れば、性根は別としても礼儀を正す事は出来る。

 教育論の重要性を言ってるだけで、根っから悪だからとか言う意味では無いらしい。


 そして向こうで意味が曲がった事への考査も有った。

 弱い=悪=罪となってしまった、不完全な状態は悪であると言った印象、使う側の都合で捻じ曲げられた、等々。

 言葉ですらこうなのに、歴史上の人物なんてね、事実無根を書くなんて余裕でしょうね。


(メイメイ)、どうだ?」

「印象と違った、流石、本場の方だ」


「もっと本場が居る、従者達に話を聞いてみるとしよう」


 そう言うとワシに黒いベールを掛けた。

 逆恨みされない様にだって、何か、安心する。


「コレ安心するわぁ」

「よし、先ずは性善説について話して貰おうか。そうだな、司馬の名を持つアナタにお願いしよう」


 最初に謝った人、司馬さんって言うのね。


《では……》


 人の生まれたばかりの本質には善もなく不善もなく、なんなら善が内在している、と。

 ココでも長く言い伝えられていたけど、ある事件で完全に否定される事になった。

 サイコパスと呼ばれる罪悪感を持たない人間の存在が証明された事で、四端や性善説は崩され。

 更に乳児を使った違法な人体実験が行われた事で、子の反応は親を真似ているに過ぎない、四端は存在しないとの結論が出てしまっていたから。


「だがサイコパスも礼儀を学べば大多数と同じ様に生きる事が可能だと向こうでは既に示されている。一部は良いんだがな、性悪説と後半は同じなのだし」

「実験て」


「それは科学の悪い面だと思うぞ、証明や結果を重要視した果て。今はもう普通に生活しているのだろう?」

《その様に伝え聞いております》


「そこでだ、君らはどう俺を見抜く」


 急ハンドルで従者もビックリしてる。


(ショナはどう判断したの)

(大変言い難いんですが、ターニャさんが判定したんです)


(あぁ、何かワシの記憶を見たっぽいしな、大丈夫かな)

(精神科医も居ますので、大丈夫かと)


「でもさ、それだけで信用しちゃうの?」

「神獣が2人とも、コレだけ懐いて信用してるので、はい」


「神獣には麒麟みたいな機能も有るのか」

「その様だな、では君に聞こうか、瑞安」


《はい、僕は……》


 先ずは対話、思想、思考の共有。

 それをどれだけ聞けるかも、従者としては身に付けるべき素養だと。

 ただ、合わないモノは合わない、と自ら従者を辞退する決断が出来るべきだ、と。


「合わないなら無理は良くない」

「僕は大丈夫ですからね?」


「それが嘘か分からん」

「だな、君らが俺を嫌って無いと、利用する気も無いと、俺がどう信じるべきだと言うんだ?」

「無いですからね?」


「いや、うん、ショナは大丈夫そうだとは思う」

《うん》

『悪い子は分かる』


「そうか、なら俺の従者の選別も頼めるか?」

『それはむり、卵の邪魔できない』

《ご主人様のだけなの》

「そうかぁ、良い子良い子」


「そうなると、本当に後ろ暗い事が無い者が良いな。下心も何も一切無い、心根が良いと真に言える者にだけ、名乗り出て貰おうか。そして出来るなら、女媧神の前でも改めて誓えるモノだけにしてくれ、だが、虚勢で死なれても責任は取れないからな」

「居るの?」

「はい、みたいですね」


「じゃあ妲己さんとかどうなんだろう」

「俺が挨拶に行った時にでも聞いてみよう」


「え?コレから会いに行くの?」

「追々な。この召喚者様は病弱なんだ、だからこそ俺が何故、女性を登用しないのか。考えられる者は居るだろうか」


 従者の教官なのか、制服が同じ年上の女性が手を挙げた。


 脱窒、そう、ワシもそれが心配なのよ、マジで。


「正解」

「まだ男には産む事は不可能な世界、そして大切で重要な事。だが全く産む気が無いなら、是非にも従者になって欲しい。但し、避妊具を入れるか薬をしっかり服用し、不妊だと示してくれる場合に限る」


「そこまで」

「従者同士でも何か有るか分からない、そして不幸に巻き込まれる子供は増やしたくは無いんでな。妊娠出来ぬ者は特に歓迎するぞ」


 こうして、後宮モノの様に年若い女性がいがみ合うでも無しに、質問に来た瑞安が同行する事になった。


《良いんですか?僕には下心が》

「男同士の妊娠についてどう思うか、それの何処が下心と言うんだ。それにお前は異性愛者だろう」


《幼馴染の願いを、私的な願望を含んだ質問でしたし》


「では、断るか?」




 俺としては、それこそ四端、四徳を持っている様に見えるんだがな。


《いえ、繋ぎは必要でしょうから、精査するまででも良いので、どうか僕を使って下さい》

「おう、頼んだぞ瑞安」

「けどさ、このままだとタケちゃんが紂王みたいにワシに惑わされてるとか何とか」


「それは知っているんだな」

「ぅ、アニメとか、マンガとか、で」


「それをちゃんと生かして偉いな(メイメイ)は」

「甘い、話を逸らすな」

《それは大丈夫かと、司馬さんは書記官ですし、今回の記録をしっかり私的にも残すかと》


「そうか、ココでも司馬は歴史家か」

《はい》

「へー、ワシの知識偏ってるから分からん」

「向こうでは、司馬……」


 後は本当に誠実か、嘘を言ってもバレるタイプか。

 瑞安に関しては魔導具で改めて判定してからだな。


 そしてハナの暗躍を無視しながら、司馬には無色国家の調査を頼む事にし。

 既に挙げられてる者にはマークする様にと伝えた。


「よし、コッチは終わったぞ(メイメイ)

「おう」


 そうしてホテルに帰り、瑞安や魔王を連れてプールへ。

 邪魔も推し進める事も、今回は最小限に留め様と思うのだが、問題は俺が我慢出来るかどうか。


 あぁ、そうだ、早くクエビコ神に会わねばな。


「あの、武光君は、はなちゃんに、どの様な役目が有ると考えてらっしゃるんですかね?」

「魔王、アンタとちゃんと話し合った事が無かったな」


「そうですね」


 そしてミーシャも話が気になったのか、目の前のプールから上がり、隣へ来た。




 武光様が真剣な話をしそうだったので、隣に座ると無言で拭いてくれた。

 ドライの魔法が有るのに、多分、世話好きなんだと思う。


「俺は、己の肉体だけで全てどうにかなると思っていた。まして職業だしな、でもココでは肉体の強さはそこまで関係無い。なんせ魔法が有る、魔法は力で、思いの具現化で。だが俺にはそんなに想像力も創造力も無い、だからそこまで魔法の適性が無い。だがハナには想像力も創造力も有る、アイツには無限の可能性が有る、ココに居るべき、必要な存在なんだと思う。だからこそ、伸ばしてやりたい、幸せになって欲しいと思ってる」


「誰かを重ねてはいませんか?」

「いや、そうだな、子供を重ねてるのかも知れんな」


「そうでしたか、子育てって凄く難しいですよね」

「俺の方はまだだが。不老不死でも難しいか」


「甘やかし過ぎだと、子供達からも言われる様になってしまって」

「そうか、ふふふ」


「私としては普通で、けれど人間の世界で生かすなら人間の範囲内で、と」

「人間を体験して無いと、難しいか」


「やはり体験してみないと、ですかね?」

「言うは易く行うは難し、しかも長期間だ。妊婦体験をしたんだがな、数時間で解放されて楽だと言ったらキレられた。そうだよな、数ヶ月もそのままなのに、たった数時間で苦痛も何も分かる筈が無いのに、必死に謝ったよ。恥ずかしい思い出だ」


「君も人間らしいミスをするんですね」

「あぁ、大人と一緒で急に父親になれるもんじゃない、一時的に子供に寄り添う程度で考えてるだなんて烏滸がましい事を言うな。覚悟が無いなら金を払って消えろ、教師なんて目指すな下衆が、とな」


「随分、気の強い方で」

「いや、俺がそうさせたんだ、そう言わせてしまった。料理だって2人で食べる物なのに、手伝うだなんて言い方をするな、とな。最近まで意味が分からなかったんだよ、俺は」


「今は、どう思ってらっしゃるんですか?」

「なんなら任せろと言うべき、言える状態で居るべきだった。それに、生まれたとしても母体がどうにかなってしまったら、いずれは料理をするのは俺なのだから、家庭の味で育てたいなら俺も出来て当然だった。1人で料理するか、2人で料理するか、要は心構えの問題だったのに。手伝うなんて言葉は、結局は責任逃れの言い訳に過ぎない、良い大人の夫婦が、ましてや妊婦に使って良い言葉じゃ無かった。子を1人前に育てる事こそが親の役割なのに、子に教えるべき料理すら逃げ腰なら、怒っても無理は無かったんだよ」


「せめて、その記憶だけでも保持出来てると良いですね」

「あぁ、体に刻みたいよ」


「もし帰還に成功したら、願っておきますよ、良い記憶が保持されてる様にと」

「私も、そう願っておきます」

「ありがとう、魔王、ミーシャ」


《あー、皆さんもう上がってたんですね》

「おう、少し話をしてたんだ」

「心構えや家族について、ですね」

「子育てとか、家の決まり事」


《えーっと、ずっと家事を手伝わないでいると、おかずが減る、とか》

「そうか、それも良いな、ふふふ」


 ココに来て、気持ちが一気に変わったみたい。

 寝てる時も考えられる器用な人なのか、食事の時でも考え事をしてるのか、底知れない人だなと思った。




 夕飯は(メイメイ)と前と同じ様にケバブだエビだとじゃれ合い、再びプールへ。

 そして欲しい魔道具をリストアップし、知っているべき知識をタブレットの履歴を残す。


《コレ、そう頑張り過ぎるでないよ》

「向こうはどうだ」


《そう気を使わんでももう寝ておるわ》

「もうそんな時間か」


《なんとも健気じゃのう》

「若い者の邪魔は出来んからな」


《だけか?》

「守る者が有る方が俺は力を発揮する、そう言う事にしておいてくれ」


《しょうがないのぅ》


 まだまだやりたい事は有るが、無理しても結局は眠気に負けるんだ。

 なら休める時に、休んでおこう。

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