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2月26日

 起きると既に侍女達は居なかった、けど。

 異様な怠さ、低値障害かも。

 使って無いのに、なんでや。


 あ、ヤって吸われてる?


「紫苑、お風、あ」

「おう、ありがとう」


 スーちゃんにギョっとされたけど、懐柔されてるフリって信じてくれるかな。


「あ、の」

「懐柔されちゃった」


 手に“フリ”と書いたけど、信じてくれるかな。


「あ、うん」

「入ってくるね」


 最初は体臭を気にしたけど、そう調節された人間なのか、生き残ったのがアレなのか。

 分からんな、そんな最先端な感じ皆無で。


 いや、塔が出来て崩壊したなら高度な技術が有ったかも、か。


「ねぇ、怖く無いの?」

「何が?」


「それとも、慣れてる?」

「あぁ、いや、凄く上手みたいで、もうすんなりでしたよ」


「……そう」

「軽蔑しとく?」


「好きな人としたいとかって思わないの?」

「それが叶わない相手だったらどうする?」


「あ、そうか、ごめん」

「例えばよ、気にしないで、痛いとかじゃ無いんだし」


「ぅう」

「直ぐ終わらせるからメシにしよう、な?」


「ぅん」


 軽蔑しないでくれて、それだけでありがたいかも。




 前より遥かに消耗が激しいらしく、エリクサーを作りながら、飲みながら。

 そして途中からはアポロがエリクサー作りを交代し。


 このまま、ハナが傷付くのを見逃し続けるしか無いのか。

 他に、もっと何か出来たんじゃないか。


「仔山羊ちゃん」

《疑ってる》


「うん、ココの神様も移住を手助けして欲しいって感じだし。同じ事なのに、どうして君のママは態々個別に言ったのか」

《ココの人間と、ママが選んだ人間は違うから》


「どう違うの?」

《律法に疑問を持つか、持たないかだって》


「攫った人はどうしてるの」

《一緒に、眠らせてるって》


「何千年のストックなの」

《1000年、ママが来たのもその位なんだって》


「両方は、選べないだろうか」

《凄く難しいって》


「出来なくは無いのね」

《うん。ただ、最後に選ぶのはアナタだって》


「それは、いつ?」

《もう直ぐ》


「分かった」


 ハナは気付いてる、自身の何かを犠牲にするのだろうと。

 なのに、ココまで来て何も出来ないなんて。


『そうそう、こう言う感じが好きなの』

「だが、そう養分にもならんだろう」


『そうでも無いわよ、ココって塩味が足りないから。うん、良い味ね』

「こんな思いを、悲しい思いも嫌な思いもさせたく無かったんだ、本当に」


『そう、そうやって頑張って来たのね、ココまで』

「なのに、何も出来ないなんて」


『虚しい、悲しい、恥ずかしい。大人の味ね、色んな味がして素敵よ』

「どうしたらハナにショックを与えないでくれる」


『もっと悲しんで苦しんで、恥じて屈辱を感じたら良いわ。怒って嘆いて、大人だからこそ出せる良い味なのよ』


 もっとどうにか出来ると思っていた。

 俺が身代わりになれると高を括っていた。

 けれどそれには思いが足りない、感情の振れ幅も、経験も何もかも。

 俺には身代わりすら、叶わない。

 余計な事をしたのかも知れない。




 おタケがすっかり落ち込んで、ちょっと可哀想になった。

 コレがただのシミュレーションなら、不毛で無駄で無意味だから。

 けど揺さぶられた感情は確かに存在するし、ココには確かにおタケが居るし。


『どうどう』

「すまない、俺は、本当に役立たずで」


『だけどさ、ハナちゃんを大事だからこそ悩んで、藻掻いてるワケじゃない?そんなに直ぐ正解が見つかるんだったら、今までの召喚者とか転生者って苦労して無いだろうし。だから、もう少し頑張ろう?』

「あぁ、すまない、本当に」


『よしよし』

「ありがとう」


 だって、完全に心が折れたらコレで終わりになっちゃうじゃん。

 もう3パターンは観たいんだよね。

 苦悩して苦しんで悦んで、凄く満たされるし。

 間違い探しみたいで楽しいし。

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