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2月23日

 到着して直ぐに礼拝をさせられそうになったが、タケちゃんにも言われていたし、礼拝は拒んだ。

 だが気分を害したと言った様子も無く、男の侍従が2人付いた。

 1人は使節団の、もう1人はココの灰汁が強い顔をしたの。


 そして部屋に案内され、使節団長らしきアンリちゃんから生活の注意点を教えられ。

 食事をして、紫苑だからと爆睡してしまった。


 上空で待機しているクーロンからの情報では、ココはメキシコシティに相当する地理だと判明した。

 向こうは1時半過ぎ、ココは昼食の時間。


 タケちゃんは同行すると言ってたけど、あんな風に別れてしまったし。

 ココだってどう結界だの監視だのされてるのか分からないし、そも侍従が居るし。


「よう、待たせたな」

「タケちゃん」


「声だけですまんが、どうだ」

「隣の部屋に侍従が居るんじゃが」


「あぁ、見ていた。監視は人員、結界は無さそうだな」

「だよね、何か緩い」


「仔山羊はどうしている」

「あ、居るかー?お、影に居たのか」


「ママに会わせてくれないか」

「良いって」


 それからタケちゃんの返事は返って来ないままで。

 どうするワケにもいかず、昼食を食べ続けた。


『失礼します、使節団の者ですが』

「あ、はいはい」




 こう、闇に捕らわれるとは。


「ココは、ママそのものか」

『勘が良いのね』


「ハナにのみ見聞き出来るならクトゥルフ、黒い仔山羊とママと言う性質、アンタはシュブニグラスだろう」

『だけでは無いわ』


「ゼウスを育てたとされる、アマルテイア」

『どうしてそう思ったのかしら』


「同じく山羊を傍に置き、神話におけるトップとの繋がり、地母神的存在、とある宗教からは異端とされている。コレでは足りないか」

『いいえ、けれどそうね、邪魔をしないで欲しいから帰って貰えるかしら』


「見守るだけだ」

『見守るだけって本当に辛いのよ、アナタに出来るかしらね』


「っそ」

『そうね、アナタのエネルギーを使ってこの子の目になって貰おうかしら、少しは適応出来てるのだし』


「待ってくれ、ハナを脅かさないでくれ」

『難しいわね、だって激しい感情の揺らぎも私の栄養になるんですもの』


 クソっ、コレだから神は。


 そう悔しいと言うか憎たらしいと感じた瞬間、明るい空間へと戻っていた。

 視界は異常に低く、目の前にはハナとエルヒム。


 本当に黒い仔山羊の中に入れられたのか、目にされたのか、幻覚なのか。


「人々の幸せとは」

《子孫繁栄、争いの無い世界、平和》


「なるほど」

《アナタは今、幸せですか?幸せとは、何ですか?》


 ハナが思い悩み、視線を僅かに落とした瞬間、エルヒムと目が合った。

 僅かでもクトゥルフの性質を持っているのか、俺の情報共有がなされているのか。


「好きな人とだけ、一緒に居れる事ですかね」

《では、今は?》


「少し不安なので、不幸では無いですが、幸せとは言い切れません」

《不安ですか》


「まだお互いを良く知らないので」

《そうですね、もっと知って頂く為にも、滞在をお願いしたいのですが》


「はい、喜んで」


《他には何か、有りますか》

「敵は、居りますか」


《いいえ、居りません》


 嘘。

 だろうな、コイツの周り全てと言っても過言では無い位に、敵は居るんだから。


『失礼します、そろそろお時間なのですが』

《うん、滞在して頂けると返事を頂きました》


『そうでしたか。ご滞在頂けるそうで何よりです、では改めてお部屋へご案内居たしますね』


「はい、宜しくお願い致します」

《コチラこそ、宜しく》


 ハナの言葉が少し違う意外、全く一緒なのだが。

 どうすべきか、と言っても何が出来るワケでも無いんだがな、今の俺は黒い仔山羊の目に過ぎない。

 しかも影の中、地面からただハナを見上げるだけ。




 タケちゃん、何処に行ったんだろうか。


「はぁ」

《誰か居る?》


「居ないよ仔山羊ちゃん、タケちゃんはどうした?」

《一緒だよ》


「そうか」

《分かってくれた?》


「まだだね、目的がハッキリしてない」

《うん、わかった》


 黒い仔山羊、この子の名前がそのままならママは、シュブニグラス。

 そうなるともう、どっちも敵かも知れないのよな、




 ハナの挙動は今回でかなり変わった。

 礼拝は既に拒否していて、再びの要請にも応じず、展示室へ行きアンリからの解説を受けている。


「コレだと、ワシは種馬ですな」

『いえ、決してその様な』


「種馬が分かるか、その意味も」

『あ、の、植生等も調べていたので、延長線上に、はい』


「ご経験は」

『私達、は、神聖処女として、不可触民なので』


「不可触民とは」

『神にのみ触れて頂ける事を許される、可能性が有る、です』


「もし触れたら」

『汚されたとみなされ、労働階級へ、堕ち、ます』


「危ない、最初から言ってくれないと」

『すみません、ソチラの歴史では良い意味で使われてはなかったので』


「なら、名前の事も知ってるのかな」

『はい』


「アンリマユ。偶々かも知れないけど、アンリちゃんに触れたらコチラに罰は有るの?」

『無いです、お願いします、どうか』


「使節団員でも労働階級に落すんだ、忖度無しって怖いねココ」

『教義を理解して頂けなかった罰も、含みますので』


「そっか、じゃあ色々と教えてね、アンリちゃん」


 紫苑だと、こうなるのか。




 脅しが利いたのか、そもそもこうした段階を踏むのか、灰汁強めのルトが絵本を読み聞かせてくれたが。

 直ぐに飽きたのか広場に連れ出され、戦闘訓練がしたいと請われた。


 あぁ、花子ならぶっ殺せるんだろうけど、どうだろうか。


『”強いですね”』

「弱いですね」


 ニコニコして言うとアンリちゃんビビってんのか普通に通訳してくれないの、残念。


『”大丈夫ですか、と”』

『”あぁ、問題無い。手加減して貰った様だね、すまなかった”』


『手加減して頂けたのか、と』

「どう思うアンリちゃんは」


『真剣では、あったかと』

「じゃあそれで」


『”勝負は真剣に行った、そうです”』

『”そうか、ありがとう”』


 納得してくれたのか、再び部屋に戻って絵本の朗読が再開された。




 日が落ちると就寝時間になるワケだが、例の侍女2人がやって来た。

 そしてハナは紫苑としてアッサリと受け入れてしまった。


 懐柔されたフリなのか、ハナは一体何を考えているのか。


 事が済むと今度は使節団員を連れ、コートを羽織り外へ。


「頷いたらハイ、イイエはこう顔を横に振る、分からない時は手を横に振る、分かった?」


 コイツらも日本語を分かっているんだな。

 そうかキーワードは日本語だったか、しくじった、ハナと紫苑の国籍を移動させておけばどうなってたか。


 そしてハナの質問に素直に答えたが、この場合は嘘かどうか分からないのが問題だな。

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