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2月12日

 こんなにもコチラは変化が有ったのに、ハナの方は殆どが本来通り。

 3月26日まで進んだ。


 第2地球が来るまで、残り2日。


「おはよう、慣れたか?」

『何とか、はい、動くにはこの体が良いですね』

『良いなぁ、僕も筋肉が欲しいです』


『成長期に鍛え過ぎるのって良く無いって聞きましたよ?』

「だな、背が伸びなくては困るだろう」

『ですけどぉ』


『あの、いつまでこうしてれば?』

「第2地球が現れ、接触してくるまで、だな」

『言語ってどうなんでしょうね?』


「賢人」

「各国で新たに開発中っす、それと一応マニュアルもっすね」


 後は、黒い仔山羊を探し出したいんだが。

 クトゥルフに連なる者で無ければ認識出来る可能性は無いだろう、だがここで道を外れるのも怖い。


 なら、推し進めるしか無いか。


「よし、2人はどうしたい」

『私は、やっぱり訓練がしたいです』

『僕も、動いた方が安心出来るので』


「よし、大型も想定して訓練だ。俺は少し、もう少し準備をしてくる」




 召喚者について元魔王の片割れセバスチャンから話を聞き、桜木花子についての報告を延期する事に。


 医学の発展の為にと召喚者と転生者が組み、桜木花子の様な人間が魔女狩りで絶滅、コレは少し調べれば分かる事なのですが。

 問題は他の大罪から灯台についての情報が有り、絶滅していた筈の人種はルーマニアに存在しているらしい、と。


 こうなると、国連としては既に桜木花子は監視対象になっている筈。

 今回の無色国家の騒動を鑑み、表沙汰にしないだけなんでしょうね。


《はぁ》

「幸せが逃げてるけれど、どう逃げたんだい?」


《詳しく話しても良いですかね》

「えー、その聞き方はマズそうな反応だから僕は止めておくよ」


《そうですか、少し国外に行きますので後を頼みます》

「分かった、お土産を宜しく頼むよー」


 アレクにルーマニアの大使館へ送って頂いたのですが。

 津井儺君に似た雰囲気の、案内人とは名乗っていますが、従者でしょうか。


《宜しくお願い致します》

『はい』


 先ずは国家元首へご挨拶。

 壮年の男性、ブラドの名を持っていますし、どうなんでしょう。


「良くいらして下さいました、召喚者様が興味を示して下さってるそうで」

《はい、その下見です》


「警戒されるのは当然だとは思いますが、具体的には」

《特殊な性質の方がココにいらっしゃるそうで》


「特殊と言いますと、吸血鬼の事でしょうか?」

《いえ》


「では、どの様な?」


《灯台、誘蛾灯、惑わす者、影響させる者(エフェクター)と呼ばれる人種についてです》


「そうですか、何かお困り事でも」

《召喚者の中にいらっしゃる可能性が有るので、どう対応すべきかと、滞在の色欲さんからお伺いしました。ココに同種が存在するかも知れない、と》


「古くから伝わる言い伝えは存在しますよ、文献をご紹介しましょう」

《はい、宜しくお願い致します》

『ご案内致しますね』


 存在は認めず、仮に居たとしても嘘になる様な発言も無し。

 魔道具は付けてはいますが、仮にそれが吸血鬼に通用するかどうか。


《穏やかな方でらっしゃいますね》

『お疲れも有るかと、他国とはそこまで繋がりが無いので、今は情報収集で忙しいんです』


 国民と言うか、少なくとも部下には慕われている。

 そして私を邪険にするでも無い、見定められている最中なんでしょうか。


 そして文献の内容は実に平凡、良くある御伽噺。

 今は、この程度の情報しか渡しては貰えないと言う事でしょうね。


《ありがとうございました、少し市中を見回りたいのですが》

『畏まりました』


 精霊や神々からの情報も皆無。

 しかも誰がどう吸血鬼なのかも見分けが付かない、穏やかで静かな早朝の街には、人間らしき存在も居る。


《今日は、お休みか何かでしょうか》

『いつもこんなモノですよ』


 余計な情報は一切漏らしてはくれなさそうですね。


《泊まる場合は、どうすれば?》

『ご案内致します』


 警備と言うか厳重な設備、現像室の様に遮光は完璧。

 確実に吸血鬼は存在するとは分かるんですが。


《行く事を控えるべき場所はありますか?》

『多少は有るかと、治安もそう良いとも言い切れませんので、お1人での外出は控えて頂きたいのですが』


《召喚者様は興味の強い方でらっしゃいますので、その危ない場所へご案内頂けますか》

『はい、確認して参りますが、忙しい方なので』


《気長に待たせて頂きます、重要な事なので》

『はい、では、失礼致します』


 長期戦になられては困るのですが。




 クーロンとシャオヘイに哨戒任務と称し、黒い仔山羊を探して貰っては居るが、収穫は皆無。

 やはりクトゥルフに連なる者で無ければ、接触は難しいのだろうか。


『どちらも、確認出来ませんでした』

『あぁ、気配も無い』

「そうか、クーロンはもう帰った方が良い。シャオヘイは引き続き頼む」


『はい』

『神獣使いが荒いなお前は』

「この世界の為だ、仕方無い。俺が探せるなら探している、俺の分まで頼むよ」


『あぁ、分かっている』


 そして小野坂に変化が。

 ハナが居なくなったからか、小野坂の容量が増え始め、良く眠り良く食べ、良く動く。


 本来の活発さへと戻っていっていると言うべきか、ハナが不活性化している影響か。


 どちらにせよ、諸手を挙げて喜べ無いが。


「クエビコ様、ネイハムはどうしているだろうか」

『外国へ居るが、また何か憂いでもあるのか』


「まぁ、憂いしか無いんだが、何処へ行ったんだ?」

『口止めされているんだが、物理的に連絡をしてみたらどうだ』


「あぁ、分かった」




 武光君から連絡が。

 話が有る、とだけ。

 ですがココで話し合いをするのも、いえ、寧ろ呼んでしまって情報を開示して頂く方が。


 ただ、安全かどうかの確認も取れていない場所へ。

 いや、ココは女性の召喚者様として来て頂きましょう。


《あの、召喚者様がコチラへ来る場合は、何か手順は御座いますか?》

『あの、今、でしょうか?』


《はい》


 こうしてみると、本当に来るとは想定していなかった様子。

 コレは何か掴めるかも知れませんね。




 ハナの灯台について、知りたがっている事が知れるかも知れないと。

 ルーマニアへ女性体として来る事になったのだが、何処かショナ君に似ているこの自称案内人の前で、ネイハムがとんでもない事を言い出した。


「確かに、灯台の情報は聞きたいとは思っていたが」

《情報開示して頂いても大丈夫ですよ、灯台だ、と》


「いや、俺は」

《こうですので、私が先んじて情報を精査したかったのですが。警戒してらっしゃったので、いっそお呼びした次第なんです》

『再度、報告へ行かせて頂きたいのですが』


《空間移動では、どうでしょう》


 そうしてネイハムに言われるがまま、国家元首の元へ。


「そうは、見えませんが?」

《魔道具を使用していますので。影響し合い、厄災前に何か有っては困りますでしょう、お互いに》


「せめて、もう少し具体的に仰って頂けますかね」

《ですよね、聖域アヴァロンにおける森の精霊、ドリアードについてご存じでしょうかね。それを発情させ、他の人間は寝かすフェロモンを出す。コレでは不十分でしょうか》


「それは、さぞお困りでしょう」

《非常に限定的な条件下での発露なのですが、魔道具は念の為、ですよ》


「それで、我々に聞きたい事とは?」

《抑止や抑制の方法をと、そう請われてますので何か出来ないか、と》

「頼む、何とかしたい」


「制御は、出来無さそうなのでしょうかね」

「出来ていたら恐れないだろう」

《混乱を招いてはと、危惧されているんです、他にも付随する能力を持ってらっしゃるので。果ては魔王や大罪と認定されては、可哀想だとは思いませんか?この世界へ勝手に連れて来られた普通の女性が、再び魔女狩りに遭う事を防ぎたいんです》


「分かりました、ですがソチラの情報開示が先です。我々は諸外国とは」

「良いだろう」

《コチラも国連を警戒してまして、開示できる情報は、この紙媒体で良ければどうぞ》


 コイツ、嘘も無しにココまでとは。

 侮っていた、流石100歳以上だな。


「この、大罪の悲嘆やロキ神からの影響が無い、と言うのは」

《ロキ神に関しては本人への影響が無かった、大罪の悲嘆に関しては影響を受けなかった、です》

「ついでに仲間にした」


「あの、その情報は」

「国連には伝わって、いるよな?」

《はい、内部での脅威判定はかなりのモノかと、魔王も人間にしてしまいましたし》


「うん、良い奴らだぞ」

「その、我々には真偽を確かめる術が」

《ドリアードかクエビコ神への一時許可を頂ければ可能かと》


「おう、呼んで良いなら呼ぶが」


「では、お願い致します」


「クエビコ神、頼む」

『一時許可を頂けるだろうか』

「一時許可をします、どうも、ブラドと申します」


『クエビコだが、コレは、一体どう言う事だろうか』

《私からご説明を》


 俺をハナとして、ココで灯台の情報を得ようとしていると説明し。

 クエビコ神が了承。


 そして本格的な情報開示へ。


「引き籠るしか、無いのか」

「全く同じであれば、です」

《こう、魔道具で何とかなりませんでしょうか、召喚者様の力で》


「そうだな、頼みに行くか」

「あの、情報を他の者には」

《個人的な事に関わりますし、コチラからもそうお願いしたいのですが》


「ただ、神々には言わねならない場合はどうする」

「それも、出来れば少数でお願いしたいのです。国民の命に関わる事ですので」


「勿論だ、危険に晒す事はしない」

「どうか、宜しくお願い致します」




 浮島へ戻り、先ずは話し合う事に。

 非常に難しい顔をして、どこか落胆の表情も。


「コレは、非常に危ういな」

《はい、内部判定は確実に魔王候補かと》


「無色国家は排除出来たのに、か」

《潜在的恐怖でしょう、実例を知ってらっしゃるからこそ、中立的なんです》


「はぁ」

《ココまでは、想定されて無かったんですね》


「正直、無色国家の影響さえ取り除けばと楽観視していた。が、またハナを侮っていたのかも知れん。俺は、何もまだハナを」

《理解してらっしゃる方かと、私よりは理解してらっしゃるでしょうし。ただ、この世界に関しての情報の少なさの差かと》


「どうしたら良い、俺は戻って来て欲しいと願うか迷っている」

《改善すれば宜しいだけでは?》


「だが、あの予知夢の事も有るんだ」

《何がどう厄災になるかは、まだ判断すべきでは無いかと》


「あぁ、そう、だな」

《魔道具については私にお任せして頂けませんか》


「あぁ、頼む」


 先ずは鍛冶神達の元へ。

 フェロモンを外に漏らさない魔道具の制作依頼、対価は、既に桜木花子から貰ったお土産品で何とかなるそうで、直ぐに構想を練る段階へ移行。


《コレで、浮島以外でも保護出来ますね》

「だな。だが、制御具の様に魔道具で抑える事は出来無いんだろうか」


 それは外見も遺伝子も何もかもを変えるか、死ぬか、ハーレムか氏族との婚姻か。


《最悪は、彼に狗神を憑けるしか無さそうですね》

「危険は無いのか?」


 狗神との相性が悪ければどちらかが死ぬまで喰い合う、文字通り肉体や精神や魂の消耗戦、命が尽きるまで苦痛を味わう事に。

 そして憑ける事は出来ても、祓う事は不可能。


 ただし、他者へ憑けられた場合に限り、祓う事は可能だと。


《コレは望むかどうかの問題かと、津井儺君の場合は望んでらっしゃるので、自ら憑けた場合と同じになってしまう可能性が高いと思うんですが》

「だな、この書き方だとそうだろう。土蜘蛛の場合はどうなんだ?」


《先天的な方々の資料しか無いので、賭けになるかと。土蜘蛛で狗神を憑けた資料は皆無ですし》

「クエビコ神、無い、のか?」

『無い』


《土蜘蛛から抜ければ可能でしょうけれど、そもそも糸の影響は土蜘蛛族内部の前例だけですので、正直不安要素なんです》

「狗神を選べば死ぬかも知れない、土蜘蛛を選べば失敗した場合には記憶に欠落が生じるかもしれない、か」


《そうなってしまっては恋愛も何も無いかと》

「そこはハナの頑張り次第でだ」


《自信の無い方なら、運命だと諦めるかも知れませんが》

「あぁ、否定出来無いな。すまなかったな、何度も呼び出して」

『構わんよ』


 落胆の表情はより濃くなった理由は、この世界への失望か、ご自身への失望でしょうか。




 どんな時でも格闘訓練に集中出来るのが俺の良い所だったんだが、今回は全く集中が出来なかった。

 友人が死んだ時以来だ。

 ハナはまだ生きていると言うのに、俺は。


『武光さん、大丈夫ですか?』

『今日はお休みした方が良いんじゃ無いですか?』


「すまんな、別メニューにさせて貰う。引き続き訓練していてくれ」

『はい』

『あの、僕も、別メニューでリフレッシュさせて下さい』


 俺とエミールで日本の省庁管轄の訓練所へ。

 プールに入る前に、先ずは準備運動。


「泳ぐのは久し振りか?」

『はい。と言うか、ハナさんに何か有ったんですか?』


「性質の事でな、調べに行ったんだが、やはりどうにもならんらしい」


『それ、僕にも言えない性質なんですよね』

「あぁ、まだ、な」


『そんなに落ち込んでるって事は、ハナさんに』

「いや、良いか悪いか、正直判断が難しいが。喜ぶ感じでは無さそうだ」


 俺が代わってやりたいが、コレも、無理。

 魔法も魔道具も有るのに、だ。


『魔法とか魔道具でも、無理って事ですよね』

「結論はまだだ、魔法は何でも出来る、そう思って対策を考えている最中だ」


『万能じゃないけど、何でも出来る』

「あぁ、思いが大事だと思う。よし、行くぞ」


『はい』


 エミールにまで、魔法も魔道具も大した事が無いんだと思って欲しく無い。

 限界が有るとしても、幾万通りの模索の果てに初めて実感すべき事で。


 そうだな、俺もまだ諦めるべきじゃない。




 先日は非常に恥ずかしい事をドリームランドで口走ってしまったけれど、気を取り直し今夜もドリームランドへ。

 桜木さんの好みを探りにお店を見て周る。


 不動産屋には印象に残っているらしき面白い家の間取りや、豪邸の間取り図が並び。

 画材屋では桜木さんの好きな色が良く売れていて、実は桜色も好きなのかもしれないと知った。


《津井儺君、今日もですか》

「はい。先生は?」


《私も、似た様なモノですよ》

「あの、一緒に見て回りますか?」


《いえ、嫉妬されても困りますので遠慮しておきます。では》


 真顔で冗談を言う方らしい。


 先生を見送り、次は布屋へ、肌触りの良いモノばかり。

 その隣には反物屋、クレマチスや月下美人の花の柄、青や白、桜木さんの好きが詰まっている。

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